中央大学について

ICTを活用した新たな教育システムの構築

【取組概要】

多様な人材を受け入れ、法曹養成を行うことを目的とする法科大学院の社会的使命からすれば、ICTを活用した授業の本格導入に向けた取組は、地方在住者や社会人など誰もが学べる環境づくりに資する取組として、積極的に推進されるべきです。このような観点から、本法科大学院は平成27年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業として「法科大学院教育におけるICTの活用に関する調査研究」を実施してきましたが、本取組では、そこで得られた成果を踏まえて、さらに発展的な調査研究を実施し、法科大学院における可能かつ有効な授業の形態を明らかにします。
また、遠隔地での学修効果を向上させる取組としてe-ラーニングの環境を整備し、その有効性についても併せて検証します。本法科大学院には2013~2015年度教育力向上推進事業「法曹養成のための多方向型教育の推進」 の取組の中で導入したe-ラーニングシステムとして基礎知識養成システムと起案力養成システムの2つがありますが、これらはいずれも対面授業を前提とした内容になっているため、非対面式の遠隔授業の場合であっても、その教育効果を高められるように、内容を拡充します。
本取組により、法科大学院におけるICTを活用した授業の有効性が確認され、正式にICTを活用した授業が実施できるようになれば、在学生にとっての学修環境が向上するだけでなく、リカレント教育や地方での法曹教育を充実させることができます。

【取組実績】

本取組は2年に渡って行われました(平成28年度、平成29年度)。その取組実績は以下のとおりです。

1.ICTを活用した授業の正式導入
平成28年度に実施した調査結果を踏まえて、平成29年度に新たに「地域と法Ⅱ(九州地方の法律問題)」、「地域と法Ⅲ(中国地方の法律問題)」、「地域と法(米軍基地法)」、「政策形成と法」の4つの授業科目でICTを活用した授業を展開しました。これらの科目は、島根大学、鹿児島大学、琉球大学の協力を得て、いわゆるサテライト方式(大学間をオンラインでつないで遠隔授業を実施する方法)で実施しましたが、一部授業回については、オンデマンド方式で実施しました。なお、平成30年度は、以上の授業に加え、新たに静岡大学の協力を得てICTを活用して「地域と法Ⅳ(中部地方の法律問題)」を開講する予定です。

2.e-ラーニングの環境整備
基礎知識養成システムおよび起案力養成システムの利用価値を高めるため、システムの内容を修正するとともに、教員がこれらのシステムを利用して学生の指導を行いました。

3.ICTを活用した法科大学院教育をテーマにしたFD活動
法科大学院におけるICTを活用した授業をテーマにして、平成28年5月、12月、平成29年5月にFD研究集会を開催しました。また、平成30年3月にも、全学のFD推進委員会と共催して、FD/SD講演会を開催しました。これらの取組によって、一定程度、教職員の間でICTに関する共通認識をもてるようになったと考えています。

4.本取組の発信
本取組は社会的にも意義があるので、法科大学院教育におけるICTを活用した授業をテーマにして中央ロー・ジャーナルに連載を行いました(具体的には、「法科大学院教育におけるICTを活用した授業の導入に向けた取組(1)~(7・完)」中央ロー・ジャーナル13巻1号、13巻3号、13巻4号、14巻1号、14巻2号、14巻3号、15巻1号)。

5.文部科学省加算プログラムにおける「優れた取組」の評価(3年連続)
いわゆる文部科学省加算プログラムにおいて、平成27年度、平成28年度に続き、平成29年度も本法科大学院におけるICTを活用した教育の取組が「優れた取組」として評価されました。

6.法曹リカレント教育におけるコース修了生の輩出
本法科大学院の法曹リカレントコースにおいて、初めて地方在住のままICTを活用した授業のみでコースを修了する者を輩出することができました(平成28年度)。

7.法曹リカレント教育における短期セミナーの実施
本法科大学院では法曹リカレント教育として毎年1月から2月にかけて税務セミナーを開催していますが、その一部を、ICTを活用して鹿児島大学および島根大学に配信して実施しました。

8.ICTを活用した広報活動
平成28年夏にICTを活用して島根大学および鹿児島大学にて過去問解説会を実施しました。この過去問解説会に参加した者のうち若干名が実際に本法科大学院を受験し、入学しています。

以上のとおり、本取組では多くの実績をつくることができました。これを踏まえて、平成30年度以降も、本法科大学院はICTに関する取組を積極的に進めていく予定です。