広報・広聴活動

3-4カ月の不思議な視覚世界 ー大人が気付かない変化に赤ちゃんは気が付くー

2015年12月02日

中央大学・日本女子大学・東京大学の共同研究「乳児の“前恒常性”の視覚」に関する研究成果の発表

・“Pre-constancy vision in infants” Current Biology誌に掲載予定(online版ではアメリカ東部時間12月3日正午に掲載)の研究成果に関する、本年12月3日(木)中央大学後楽園キャンパス 3号館3907号室で行われるプレス発表会について、ご案内をさせていただきます。

 

○日時: 2015年12月3日(木) 10時00分~11時00分

○場所: 中央大学後楽園キャンパス 3号館9階3907号室

○担当者: 楊嘉楽 中央大学人文科学研究所 客員研究員

金沢創 日本女子大学人間社会学部 教授

山口真美 中央大学文学部 教授

本吉勇 東京大学大学院総合文化研究科 准教授

 

○概 要:

成人は、物体を安定して知覚できるように(知覚恒常性)、照明や観察角度などによって生じる細かな変化を無視する能力が備わっています。成人は物体表面の光沢感の違いには容易に気付くことができる(図1B)一方、表面を照らす照明環境のパタン(映り込みパタン)(図1A)が変わっても気付くことができません。しかしながら、物体を安定して知覚する能力を獲得していない乳児は、成人よりも外界の変化に忠実に反応し、映り込みパタンの変化を知覚できることが、私達の研究で初めて明らかにされました。

実験は生後3-8カ月の赤ちゃんを対象に行いました。実験では、物体表面の光沢の変化を知覚する能力と、成人が知覚しにくい照明環境の変化を知覚する能力を、選好注視法※1を用いて比較しました。

実験では2枚の画像が交互に点滅する映像と、同じ画像が点滅する映像を左右に提示し、乳児がどちらを注視したかを調べました。乳児は変化するものを選好注視するので、変化を検出できれば、変化する側を長く注視すると考えられます。図2は、変化する画像への選好率を月齢ごとに検討し、2つの条件間で比較したものです。実験の結果、物体表面の光沢の変化は7-8カ月で知覚可能なことがわかりました。一方で、照明環境の変化は3-4カ月では知覚可能ですが、5-6カ月以降では知覚できなくなることもわかりました。

今回の研究は、3-4カ月のより幼い乳児がもつ特殊な視覚世界を解明した、世界で初めての研究です。物体を安定的に知覚するという知覚恒常性を獲得する前段階の乳児は、成人が無視するような細かな変化に気が付けることから、成人より変化に富んだ不思議な世界で生活していると考えられます。