学生のみなさんへ
コロナ禍が明け、横(同学年)の繋がり、縦(先輩後輩、先生方)の繋がり、その他(バイト先、相談室など)、リアルな人間関係にも頼れるようになり、ようやく大学生らしいキャンパスライフを送れるようになっていることかと思います。
最近は、メジャーリーグの大谷翔平さんの活躍が毎日のようにニュースを賑わせていますね。いいことも悪いことも起きながら、堂々と世界で活躍していて、人生何周目?というくらい達観しているようにさえ見えます。それに比べて、自分は小さいなぁと思ってしまうことも多々ありますが、まぁ自分は自分、と年を取るにつれ、開き直る強さが身についてきました(笑)最近は馬鹿みたいにニコニコしているので、周囲からポジティブだねーと言われがちですが、昔は、小さなことでも周りからどうみられるかなと気にしたり、うまくいかないことがあると、これからのことが全てうまくいかないのではと悲観的になったり、ということもありました。でも、人って、結構年を取ってからでも変わるものですね。
一つのきっかけは、認知行動療法(CBT)と言われる精神療法を学んだことかもしれません。突飛な新しい治療というわけではなく、昔からある、いわゆる、物事の捉え方、というのが認知療法です。専門的には、加えて、行動と考え方、心の感じ方の繋がり等にも注目していきますが、長くなるので割愛します。
物事の捉え方とは、例えば、コップに半分の水が入っている時、どう捉えるか。「半分しかない!どうしよう!」とネガティブに焦って不安になるのか、「まだ半分もある。余裕〜」とどポジティブに捉えるのか。CBTではどちらの考え方もお勧めしません。無駄に焦っても仕方ないし、かといってポジティブに捉えすぎて水が足りなくなり、脱水になっても困ります。次の水汲み場はどこにあって、どれくらいの時間で着きそうで、水を飲むペースをどうしたらいいのか、走った方がいいのか、等、状況を冷静に分析して必要な手段を考えます。取るべき手段がわかると安心しますよね。結果的に心が少し平和になる、というのがCBTです。
うつっぽいとか、心が折れている時は、どうしても冷静に考えられず、これしかない、うまくいかないに違いない、等、思考の視野狭窄とも呼ばれる認知の偏りが起こりがちです。落ち込みがひどくなってから、CBTのように冷静に考えるのは、なかなか難しかったりします。
だからこそ、心が元気な時に、物事の捉え方について、少し考えてみてもらえると嬉しいです。CBT的な考え方の癖をつけておくと、いざという時に役立つと思うのです。できれば中学とか高校の授業でやればいいのに、と思ったりします。
第一志望で入学した新入生もいれば、不本意ながら中央大学に入った新入生もいるでしょう。昨年度が思うように過ごせたという在校生も、今年度こそはと思っている在校生もいることでしょう。それぞれが、過去は適度に振り返り、後悔し落ち込むだけではなく、今の状況を冷静に分析して、うまくいったことも、うまくいかなかったことも今後に活かして、自分なりのホームランを打っていってほしいなと思います。もちろん、考えに行き詰まった時は、相談室のスタッフに、考え方の整理のお手伝いをさせていただければと思っています。
中央大学 学生相談室
精神科医師 藤本あみか