大学院

【究める vol.128】大学院の授業をのぞいてみよう!⑥ 消費者行動論Ⅰ(商学研究科)

2023年11月22日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介しています。今回は「大学院の授業をのぞいてみよう!」の6回目として、商学研究科の「消費者行動論Ⅰ」(朴 宰佑(パク ゼウ)教授)の授業の様子をお届けします。

授業概要

消費者行動論Ⅰについて

本授業は、消費者行動研究に必要な理論的フレームワークや基本概念、研究方法についての基礎知識を身につけることを目的としており、輪読とディスカッションを通じて、学びを深めていきます。

授業では、はじめにその回の発表を担当する学生が授業で学ぶ内容をまとめて発表します。司会を担当する学生は、授業全体の流れをまとめる役割を担い、他の学生へ質問をしながらディスカッションを展開し、授業を進めていきます。

本日(11/7)の授業について

本日の授業について、発表を担当したリュウ ユエトウさんに授業報告としてまとめていただきました。

本日は、テキスト『消費者行動論』の第5章の内容を中心に報告し、ディスカッションをしました。本章では、消費者の知識が行動と意思決定に与える影響を探究しました。知識と記憶の役割を紹介し、特に長期記憶がブランド選択の鍵であることを強調しました。消費者の行動は情報処理モデルに基づいて解釈され、知識の量と内容が価格感受性や品質判断に影響を与えます。また、ブランド知識がブランドエクイティの源であり、そうした知識はブランド認知とブランド連想によって形成されることを学びました。最後に、ブランドエクイティ向上のためには消費者のブランド知識を理解し、ブランドの連想を活用したブランド管理が不可欠です。これにより、強く望ましいブランドを構築し、ブランドエクイティを維持・強化できます。朴先生は、ブランド連想やブランドマネージメントに関して、Apple社やプラダグループの例を挙げていらっしゃいました。

履修者の声

本日の授業はいかがでしたか

今回の授業では、消費者の記憶とブランド管理についての発表とディスカッションを行いました。
ディスカッションの中で興味深かった点は、ある製品に対して、知識を多く持っている人に比べて、知識が少ない人は連想ネットワークの内容が分散的で、連携が少ないという点です。討論を行なっていく中で、履修者が実生活で経験した購買経験を紹介し、理論的な概念と関連していくことで、より簡単明瞭に理解することができました。

(稲葉 功さん)

今回の授業では「消費者の知識構造」について学びました。参加者が自分の購入経験に基づいてディスカッションをする中で最も印象的だったのは、ユーザーがブランドのイメージに影響を与えることです。例えば、アイドルやエリートがアップルの製品を使うことによって、アップルはおしゃれで信頼性と専門性を備えたブランドであるイメージを消費者に伝えることができます。この授業の内容は私たちの日常生活に関連しているため、参加者は授業で扱う内容を実感することができます。積極的にディスカッションに参加することで、楽しい雰囲気の中で勉強することができています。

(オン カカさん)

今回の授業で最も面白かったのは、皆がテーマに基づいて、自分自身が消費者として行った消費行動を共有し、ディスカッションしたことです。先生はそれを元に、具体的な概念をよりわかりやすく理解するために例を挙げてくださいました。今回の発表は消費者の記憶と連想ネットワークに関する内容でした。抽象的な概念が多く含まれているため、教科書だけで理解することが難しいですが、先生は特に理解が難しく、違いが識別しにくい概念について、具体例を挙げて説明してくださいました。たとえば、ブランド管理に言及する際には、従来のブランドイメージを維持しながら若い女性層を取り込むためにセカンドブランドとしてmiumiuを立ち上げた例が挙げられました。

(リュウ ユエトウさん)

モノを買う際に、記憶の概念を理解できるようになり、それを日常生活に取り入れることに向けて努力できることが素晴らしいと思います。このような記憶と選択の関係を理解することで、私たちはより賢明な消費者として行動できるだけでなく、企業やマーケターとしても顧客のニーズや期待に応える戦略を練ることができます。私たちの日常生活において、記憶の力を活かすことで、持続可能な消費者として、より意識的な選択をすることができるようになるでしょう。

(ロー ジンインさん)

この授業(消費者行動論Ⅰ)を通じてどのような学びや発見が得られますか

消費者行動論の授業内容は自分の研究と直結しているため、授業の内容や参加している他の学生たちの意見や疑問点からヒントを得ることができます。消費者行動の授業では、毎週発表者と司会者が決められており、司会者はその章に関連する質問を準備する必要があります。関連の質問を考える過程は、内容に対してより深く理解することができるようになるだけでなく、思考能力も向上させることができると思います。

(稲葉 功さん)

この授業では、主に文献の読解とディスカッションを通じて、心理学的側面と外部条件の刺激から消費者の行動を解析して学びます。授業の参加者は個人の購買経験と文献で学んだ内容を組み合わせて検討し、消費者心理への理解を深めることができます。また、ディカッションをすることで、異なる消費者が購買行動をする時に、同じ刺激を受けても、異なる購買行動をしており、消費者の行動の多様性を実感することができました。さらに、先生はディスカッションにも参加し、文献の内容をより深く解析し、より多くのテキスト以外の内容を説明してくださっており、私たちの消費者行動学に関する知識を豊かにすることができました。

(オン カカさん)

「消費者行動論」の本を読んで初めて、日常生活での無意識の個人の選択には深い理論があることを知りました。たとえば、最初は好きではない物を何度か見るうちに好きになる原因は簡単接触効果です。また、なぜ衝動的に買い物をするのかといったことも、さまざまな理論に基づいています。消費者行動論の授業において、皆が積極的にディスカッションに参加しています。私たちは皆消費者であり、一定の消費経験があるため、ディスカッションを通じて学んだ知識は実際のシーンにも適用できるものが多いです。 

(リュウ ユエトウさん)

私は消費者があらゆる商品を購入する決定の背後にある影響と駆動要因を知っています。それは、特にブランド認知の側面についてです。私たち消費者は、ブランドをあるアイデアやイメージに関連付け、そのブランドを考慮するように促されます。例えば、iPhoneをスタイリッシュで高品質として宣伝する特定のブランドとして、Appleブランドが挙げられます。単に顧客を引き寄せるだけでなく、広告とマーケティングキャンペーンは同時にそれらを評価しています。

(ロー ジンインさん)

この授業を通じて得られる学びや発見とご自身の研究や将来とのつながりを教えてください

私は消費者の衝動購買について研究しています。人の認知過程や構造を理解し、それらがマーケティングにおいてどう関わっているのかが非常に重要です。研究内容の基盤となる消費者行動に影響を与える内的要因についての内容を他の履修者たちと議論することによって、より深く理解することができます。また、鋭い意見や質問は、修士論文をどのように論理的によりわかりやすく書くべきかの道しるべになります。

(稲葉 功さん)

私はSDGsが世界中に展開していることによって、消費者の視点からグリーン製品を普及させるための研究をしています。消費者に関する研究の中では、消費行動における意識と行動のギャップがよく提示されています。多くの消費者は環境保護の意識と知識を持っていますが、実際に環境を守るための行動はしていません。特に、グリーン製品は価格が高く、消費者が嫌がったり、経済的な理由でグリーン消費ができなったりすることがあります。この授業を通じて、消費者が消費行動をする際の心理的特徴を知り、店舗の明かりや音楽などの外部条件は消費者の行動に影響を与えることも知ることができました。消費者行動学を学ぶことで、グリーン製品の普及を促進させる新たなポイントを見出すことを期待します。

(オン カカさん)

私の研究領域はインフルエンサー・マーケティングです。具体的な研究テーマは、パラソーシャル関係とアイデンティティ認識が購買決定にどのように影響するかです。パラソーシャル関係とアイデンティティ認識はいずれも心理学に関連しており、消費者行動論に中で学ぶ消費者がブランドに対する態度や最終的な決定はすべて心理学と関係しています。この授業は「消費者行動論」と呼ばれていますが、むしろブランド、具体的なマーケティング手法、消費者心理など、多岐にわたる要素からなる消費者行動論を解析する授業です。解析により、なぜ消費者が多様な最終的な購買決定をするのかについてより深い理解が得られ、私の研究に役立っています。

(リュウ ユエトウさん)

社会人として経験を積む中で、将来的には誰もが潜在的な「顧客」と関わることになると考えます。その前提において、私たちは顧客行動の根底にある理論を探求し、理解することができます。この理解を通じて、将来企業で働く際には基本的な知識を習得し、それを活かして売上を伸ばしたり、組織に革新をもたらしたりする戦略的なアドバイスを提供できるようになります。また、顧客の信頼を築き上げ、持続的な関係を築くことができれば、企業と顧客の双方にとってWin-Winの状況を生み出すことが可能です。

(ロー ジンインさん)

学部と比べた際の大学院での授業の特徴を教えてください

学部の授業では大人数、大教室で、先生が中心になって授業を進めるのが一般的です。しかし、大学院の授業では、少人数で、学生が主体となって、輪読する本の各章を発表することが多いです。そして、その内容に対して、個々の意見や疑問について議論を行います。そのため、自分では気づかなかった点や興味深い点の深掘りができるのが特徴の一つです。同じ授業を受けていても、一人一人研究分野が異なるため、議論する際には多方面の視点からのディスカッションができます。
また、大学院では同じ授業の履修者が少ないため、一緒に授業を受ける学生はほぼ顔見知りであり、議論する際には人見知りであっても、負担がなく発言できます。

(稲葉 功さん)

学部の授業では大教室で行い、参加者数は100人以上いることが多くあります。主に先生の講義を聞き、小テストやレポートの形で学んだ内容をまとめて補います。
一方、大学院の授業は少人数で、学生と先生とのコミュニケーションが重視されます。大学院は学生の自主性を非常に大切にしており、学生は授業の参加者としてだけではなく、発表者として自分の考えや意見を先生と他の学生に発表します。自分で研究の発表をしたり、他の学生の発表を聞いたりすることで、新たな視点を得て自分の研究を促進します。また、先生はより多くの専門知識を説明し、学生の研究分野での基礎を強化してくださいます。
このように、大学院の授業は先生や学生と学術的な交流をすることで、研究テーマの知識を深め、私たちの研究能力や発表能力を高めることができるようになると感じています。

(オン カカさん)

学部と比較して大学院の特徴は、自分で学んだ内容についてより多く考える必要があることです。学部の時は先生が知識を教え、学生が理解し整理することが主でした。しかし、大学院に進むと、それぞれの知識について基本的な理解をすることが必要です。同じ論文でも、研究の分野が異なるため、同じ知識に対して異なる見解があります。大学院の授業はこれらの異なる意見をまとめる場所です。クラスで一緒にディスカッションし、先生が皆の意見をまとめてさらに補足していくことが特徴だといえます。

(リュウ ユエトウさん)

大学と大学院の違いは、授業内容の理解を深めるために必要な復習と予習の量と質に現れます。学部では、基礎的な授業が多く、ネットで調べられることが多いです。大学院では、一つの授業に対して週に約8時間を充てて予習と復習を行う必要があり、研究テーマに関連する授業を選択します。授業課題として指定された書籍を熟読し、各章の論点を整理し、それに基づいて深く掘り下げた発表と議論が求められます。このような積極的で綿密な学習アプローチが、大学院での学びを特徴づけています。これにより、学生はより専門的な知識を深め、自身の研究テーマに関する専門性を高めながら、議論のスキルや批判的思考能力を向上できるのではないかと思います。

(ロー ジンインさん)

朴 宰佑教授からのコメント

マーケティングとは「売れる仕組みづくり」であり、こうした取り組みには消費者が製品やサービスに何を求めているか、また、どのようなプロセスを経て購買意思決定を行うかについての理解が必要不可欠です。こうした点からすると、消費者行動論はマーケティング研究の土台となる基盤的な学問領域のひとつと言えます。また、私たちは誰もが消費者であり、多様な製品やサービスを絶えず購入、利用して生活上の問題を解決しています。こうした点からすると、消費者行動論は、私たちにとって最も身近な学問であり、賢い消費行動や社会的望ましい消費行動を行うためにもおおいに役立つ研究分野と言えるでしょう。
 

※本記事は2023年11月に取材した内容をもとに作成したものです。