大学院

【究める vol.107】在学生の声 大橋 立紀さん(法学研究科 博士前期課程)

2022年10月11日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。今回は「在学生の声」として法学研究科の大橋 立紀さんへのインタビューをお届けします。大学院でのご自身の研究をはじめ、進学した理由や大学院での研究活動・課外活動など、大学院の様子が伝わる様々なエピソードが載っています。

大橋 立紀(おおはし りき)さん


研究科:法学研究科
専 攻:政治学専攻
課 程:博士前期課程1年

大学院でのご自身の研究について教えてください

中央大学大学院では、指導教授の玉置敦彦先生の下、国際政治学、国際政治史、冷戦史、アメリカ外交史を学問分野として研究しています。具体的には、冷戦期アメリカの同盟国であったイタリアとユーゴスラヴィアの間に発生したトリエステの帰属をめぐる領土問題において、当時のドワイト・アイゼンハワー大統領率いるアメリカ政府の交渉への介入を事例とし、アイゼンハワー政権の介入の動機が、アイゼンハワー政権の「同盟」戦略に基づくものである、ということを証明します。トリエステをめぐる問題に対して、冷戦初期の同盟と国際秩序、さらにはアメリカの戦略の観点から新たな切り口を提示することで、アイゼンハワー政権の研究、ひいてはアメリカ外交史に新たな事例の蓄積を生み出し、学問的共同体に利益を生み出すことを目指しています。
研究方法としては、邦語のみならず英語で執筆された関連する二次文献を徹底的に読み込み、さらにその後アメリカ外交文書資料集(FRUS:Foreign Relations of United States)、大統領図書館に所蔵されている文書、National Archivesなどの一次史料も徹底的に読みこむ、という外交史の手法を採用します。コロナ禍に覆われている今日ではありますが、1年次の春学期には、現地アメリカへの史料調査も予定しています。

大学院へ進学した理由と、中央大学大学院を進学先に選んだ理由を教えてください

中央大学法学部在籍時に玉置先生のゼミに入りました。玉置先生の下で、国際政治学、外交史、同盟論に関する研究を進めていく中で、さらに自身の研究を深めていきたいと思い、中央大学大学院への進学を決めました。また、法学研究科政治学専攻には、宮本太郎先生や青木裕子先生、古賀光生先生といったヨーロッパをご専門とされる先生方が多くいらっしゃいます。中央大学法学部在籍時よりこれらの先生の授業を履修しており、学び得るものが非常に多かったです。引き続きこれらの先生の授業を履修したい、という思いもありました。
そして、私自身が中央大学の付属高校出身であり、中央大学が推進する総合学園推進に興味があります。7年間中央大学で学んだ身として、引き続き中央大学で研究を進めることで、中央大学に何かしらの貢献や恩返しがしたいという思いもありました。最も中央大学を愛している院生といっても、過言ではないかもしれません。

実際に入学してみて、大学院はいかがでしたか

「大学院という場所は、来た人だれもが簡単に楽しめる場所ではない」と感じることが多くなりました(平易にいえば、ディズニーランドのように誰もが楽しめる場所ではないということです)。周りの同級生が、自分よりも稼いでおり、かつプライベートも充実している中、自分だけが授業用のレジュメを作成し、文献を講読する。そのような環境でも決して挫けず、大学院というリソースをフル活用し、いかに自分なりの楽しさを見出せるかどうかが、とても鍵になり、重要なことであると率直に思いました。
博士前期課程は2年間しかありませんので、中央大学大学院のリソースを十分に活用しなければ、何もしないままに終わってしまいます。限りある時間を有効に使い、「今何を自分ですべきか」をよく考えるようになりました。大学院生活を「いかに充実させるか」を常に考えています。

大学院の授業はどのように行われていますか。学部との違いや特徴を教えてください

私の場合は、ほとんどの授業がチュートリアル形式(1対1形式)で行われるため、授業の濃密度が学部の授業とは全く異なります。1対1が基本ですので、指定された文献のレジュメは毎週自分が作成しなければなりません。また、当たり前ですが「課題文献を読んでいません」や所謂「読んだフリ」は通用しません。まして、授業中は、頼ることができる同級生もいませんので、自分が獲得している知識を総動員し、論理的に筋道を立てながら先生方と粘り強く討論しなければなりません。授業に向けた準備も学部の授業とは、比較にならないほど時間をかけています。
さらに、大学院の授業では専門的な論文や書籍を読む一方で、入門書や基本書を徹底的に読み込んでいます。学部の授業では、授業を受けただけで「分かったような気」になってしまうことが多々あります。1対1の大学院の授業では、先生との討論を通じて、自分が理解不十分であった箇所、「分かったような気」になっていたことを浮き彫りにできました。「分からない」ことを自覚し、丁寧な理解に結び付けていくことができることも大学院の授業の特徴ではないでしょうか。

実際に履修した授業について、印象に残っていることを教えてください

先述したようにほとんどが1対1の授業ですので、どれか一つが最も印象に残っているというように限定することは非常に難しいのですが、強いて一つあげるのであれば、研究倫理・研究方法論(政治学)」です。本科目は、法学研究科政治学専攻に進学した学生が履修すべき必修科目です。授業では、研究倫理・政治学の基礎的な研究方法や文献収集、研究計画書の作成等、研究を遂行する上での基礎知識を徹底的に講じていただきました。また、政治学専攻の先生方に対して、自身の研究を発表する機会がありました。もちろんですが、すべての先生方が国際政治学の専門ではありません。行政学や現代政治理論、メディア政治がご専門の先生方に対して、自身の研究をわかりやすく伝えることが必要になります。本授業を通じて、他分野の先生方からの知見を吸収し、自身の研究をさらにアップデートできたことは非常によい経験であったと感じております。また、再度研究倫理や政治学研究の手法などを確認することができました。研究を進める上での必須の知識をインプットできたことはとてもよかったと思います。

中央大学大学院に進学してよかったことについて

中央大学大学院の最も良い点は、名だたる先生方との授業を独占できる点だと思います。様々な先生方から知見を得ることができ、お金には代えられない貴重な時間です。また、先生方との距離が非常に近い点も魅力であると思います。先生方一人一人が親身になってくださり、話を聞いてくださることも私にとってかけがえのない時間であったと感じています。
また、私の場合は中央大学法学部から中央大学大学院法学研究科に進学しましたので、慣れ親しんだ環境・スタッフの下で、即座に研究に専念できました。

授業以外の時間はどのように過ごしていますか

週2回、兼任講師として、中央大学附属中学校にて中学3年生を相手に、歴史の授業を担当しています。授業で用いるプリントは自分で作成しており、授業のための準備もありますので、非常に大変ですが、一方で多くの事を学んでおり、充実した時間となっています。授業を通じて、自分が知っていることをいかにわかりやすく他者に伝えるか、わかりやすい文章とは何か、という課題に常に取り組んでいます。授業の進め方や「よりよい授業づくり」に向けては、中大附属の先生方や生徒からも日々学んでいます。大学院以外でも研鑽できる機会があることは、この上ない喜びです。
また、月1回程度、「中央大学国際政治学・外交史研究会」という名の下、学部の玉置先生のゼミ(専門演習)でともに切磋琢磨した中川倫梨子氏(慶應義塾大学大学院法学研究科)と君島結斗氏(一橋大学大学院国際・公共政策大学院)、そして玉置先生、私の4名で研究会を開催しています。研究会では、自身の研究を発表するだけでなく、両名の研究の進捗状況に対してコメント等を行います。中川氏・君島氏の両名は、私の研究の不明点や分析の甘い点を鋭く指摘してくださいます。両名は、普段から生活上の悩み等も聞いてくださる、私にとってのかけがえのない研究仲間です。

大学院進学を目指すみなさんへ

まず、大学院進学を少しでも考えている方は、大学の先生方に相談してみることをお勧めします。研究内容、大学院入試までのスケジュール、研究計画書の作成等の疑問点があれば、遠慮せずに聞いてみましょう。大学院進学は、人生の大きなターニングポイントであり、とりわけ同級生で就職した方とは生活が180度異なります。「ただ学部での勉強が面白かったから」という進学理由は、一番安直な進学理由であり、まさしく「入院」後に必ず後悔します。2年間を無駄にしないためにも、慎重に慎重を重ねて、進学を判断すべきであると思います。

また、大学院進学までに、学部で一度論文を執筆しておくことを強くお勧めいたします。博士前期課程は2年しかありませんので、どの程度の「問い」を立て、どのような論証を組み立てるのか、という研究の「土地勘」のようなものをつけておいた方がよいと思います。博士前期課程のゴールは、修士論文の完成です。修士論文の完成に向けて、何が必要なのかを逆算できるとよりよい研究に結びつきます。その他にも様々な分野の教養を身に着けておく、語学能力をできる限り向上しておくと、大学院での学びの大いなる助けになるでしょう。

法学研究科は、2023年4月に法学部と共に都心の茗荷谷キャンパスへと移転します。利便性抜群の新キャンパスでは、官公庁の方々や他大学の院生との交流等も活発になるはずです。私も新キャンパスへの移転並びに「法科の中央」の都心回帰を心待ちにしています。志の高い皆様と桜咲く新キャンパスでともに研究することを楽しみにしております。そして、このメッセージが大学院進学を目指されている皆様にとって、多少なりとも、進学の参考となっていましたら望外の喜びです。

 

 

 

                              ※本記事は、2022年10月時点の内容です。