FD(ファカルティ・ディベロップメント)活動

第28回FD・SD講演会を開催しました

2023年11月25日

11月24日(金)に、第28回中央大学FD・SD講演会を実施しました。

テーマは「教学IRはいかに機能するのか ~エビデンスベースの教育改善に向けて~」です。

 文部科学省により2020年に公表された「教学マネジメント指針」において、IR(インスティテューショナル・リサーチ)、とりわけ教学IRは教学マネジメントを確立し、学修者本位の教育というミッションを達成するために必要不可欠なものであると強く謳われています。本学では、全学横断組織のほか、学部・研究科といった機関レベルにおいても、学生アンケート(新入生・在学生・卒業時)や授業アンケートの実施・集計を行っているほか、学生の個人属性や成績・GPAといった、教務データの集計・分析、入学試験データの集計・分析も日常的に行われていますが、今後はさらにデータを有効に活用し、うまく可視化して活用することで、大学運営の活性化を図ることが期待されています。

 そこで、FD・SDの視点から、教学IRを有効に機能させ、大学の改善に繋げるための考え方や他大学の好事例なども学びながら、IRで大学をよりよい方向に導いていくためのヒントを考えていくためのきっかけとなる企画として、本講演会を開催しました。

 講師には東京都立大学・大学教育センター准教授であり、本学の卒業生でもある岡田有司氏をお招きし、質疑応答も含めて約100分の講演をいただきました。講演会はオンラインで実施し、約120名の参加がありました。

講師を務めていただいた東京都立大学・岡田有司准教授

 話題提供として、IRの意味、近年の全国の大学におけるIR組織の整備状況、IRからIE(インスティテューショナル・エフェクティブネス)の概念の共有がなされた後、教学IRを機能させるための、教学データのマネジメントと活用の流れや、それぞれの活動に影響を与える要因について、データを基にした説明がなされました。データの活用目的を明確にすることも重要ですが、その分析・報告をどう工夫していくか、また活用の体制をきちんと構築していくことが、教育評価・改善から情報発信まで繋がることが示唆されました。

 メインパートとして設けられた“「改善」につなげる教学IR”においては、教学IRを活用して教育改善に繋げるための具体的な流れについて、講師の研究内容を基に、かみ砕いた説明がなされました。ここでは、他大学の事例も踏まえ、調査設計の手順や重要な視点、データに意味を与え、改善に結びつけるための道筋を立てることの重要性や、そのためのIR担当者とのコミュニケーションの重要性が示唆されました。

斎藤正武FD推進委員会委員長(商学部教授)

 後半の「IRお悩み相談」パートでは、事前に寄せられた18個の質問すべてに対して、講師の知見を基にしたアドバイスがなされました。教育現場で実際に発生しているような課題に対して、IRを使った改善アプローチができるかどうかといった悩みに始まり、IR業務の学内浸透に向けた動き方、データの示し方、学内でのデータ連携に関する知見など、幅広い”お悩み”に対して、全国の大学の調査研究を行われた知見から、丁寧な紐解きをいただきました。

参加者からは事後アンケートにおいて、

・多くのIR担当者の抱える問題点について、明快な指針を提示いただいた。

・IRというテーマはお話でも触れられたように、問いを明確にする必要があり、またその具体的な問いに対して、今これだけのデータがあるけど、他に何が必要なのか、どうやれば期待する分析ができるのか、といったことが必要だと思いました。視点の学びにはなりますが、聴く側のレベル差や、例えば仮データを使ってワークショップをするなどといったものも良いのかもしれないと思いました。

・普段の業務の中でも意識しなければいけない視点に気づくことができた。また、IRに関する他大学の取組事例の提示があったことで、IRに関する具体的なイメージがわき、理解が進んだ

といった声が寄せられました。

 

 中央大学FD推進委員会では、大学のFD活動をより推進するため、今後も高等教育に関する講演会や研修会などを実施していきます。