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文学部
文学部長挨拶

中央大学文学部長 宇佐美 毅

宇佐美 毅
中央大学文学部長

【文学部が目指すもの】

 中央大学文学部には、国文学・英語文学文化・ドイツ語文学文化・フランス語文学文化・中国言語文化・日本史学・東洋史学・西洋史学・哲学・社会学・社会情報学・教育学・心理学という13の専攻があり、人文科学から社会科学にわたる総合的な研究体制が整えられています。その文学部が目指すものを、私が専門とする日本文学を例にあげて、お話ししましょう。
 現在の私たちにとって、明治時代の日本文学といえば、夏目漱石や森鷗外の作品が最初に思い浮かびます。たしかに、漱石や鷗外はすぐれた作品を数多く残しています。しかし、明治時代に生きていた人たちにとって、その時代の流行作家、人気作品といえば、けっして漱石・鷗外やその作品のことではありませんでした。たとえば、尾崎紅葉や幸田露伴の方が作家としては知名度が高かったし、徳富蘆花『不如帰(ほととぎす)』というベストセラー作品もありました。しかし、尾崎紅葉『金色夜叉(こんじきやしゃ)』や徳富蘆花『不如帰』を読む人は、現在ではごくわずかです。
 ここからわかることは、「一時の流行」と「時代を越えて生き残る」ものは違うということです。「一時の流行」にも、もちろん価値があります。その時代だけでも多くの人の心をつかむことはとても重要なことです。しかし、その一方で、「時代を越えて生き残る」ものの価値を無視することはできません。私たちが文学部で追究したいことは、ある時期の文化や社会現象を考察するのと同時に、時代を越えた人間と社会のあり方をも同時に考えていくことです。そのことを実行していくために、文学部は13の専攻とそれを支える研究体制を整えています。

【文学部の歴史】

 文学部は、1951(昭和26)年、中央大学の5つ目の学部として、文学科(国文学・英文学・独文学・仏文学専攻)と史学科(国史学・東洋史学・西洋史学専攻)の2学科で発足しました。今年で66年目を迎えます。既に半世紀を大きく越える年月をかけて、文学部は人間と社会の考察を続けてきたことになります。
 文学部は発足して間もなく、立て続けに改革をおこないました。1952年には哲学科(哲学専攻)を増設し、1953年には哲学科の中に社会学専攻を設置しました。それ以後は、その当時の他大学の文学部と同じように「哲・史・文」というオーソドックスな体制の下で教育・研究活動をおこなってきました。
 その後、1990年には哲学科を再編し、哲学科(哲学専攻)、社会学科(社会学・社会情報学コース)、教育学科(教育学・心理学コース)の3学科とし、既存の文学科・史学科と合わせて、5学科体制となりました。これによって、文学部は人文科学と社会科学の二つの学問分野をカバーする総合的な学部となりました。そして、2002年には、文学科に中国言語文化専攻を新たに設置しました。
 さらに文学部は、2006年に大きな改革をおこないました。それまで続いてきた5学科13専攻・コースの体制を変更し、人文社会学科(国文学専攻・英語文学文化専攻・ドイツ語文学文化専攻・フランス語文学文化専攻・中国言語文化専攻・日本史学専攻・東洋史学専攻・西洋史学専攻・哲学専攻・社会学専攻・社会情報学専攻・教育学専攻・心理学専攻)という1学科13専攻の体制としたのです。人文社会学科の中に人文科学と社会科学を融合することによって、幅広い学問分野を横断的・有機的に学べるような教育体制を構築しました。

【文学部の現在と未来】

 文学部の現在と将来について、再び私が専門とする日本文学の例をあげてお話ししましょう。
 世界中で読まれている日本の作家・村上春樹は、私たちが生きているこの世界の「不確かさ」を、繰り返し描いています。たとえば、大晦日の深夜0時にこの世界から突然「青」という色がすべて消えてしまうとか(『青が消える』)、1984年を生きていたはずなのに、空に月が二つ出ている「1Q84年」の世界に突然迷い込んでしまうとか(『1Q84』)、そういう作品です。そんな荒唐無稽に思える話を通じて、この世界的作家は、現代人の内面の不安や現代社会の存在の危うさを描いてきました。
 私たち文学部は、過去の文化や歴史だけではなく、村上春樹が描くような現代の人間と社会の諸問題までを幅広く対象にできるように、教育と研究の体制を整えています。たとえば、初年次から4年次に至るまで、基礎演習や専門演習(ゼミナール)などの少人数教育が受けられます。それらの科目の中で、過去の歴史から現代の最先端の学問の成果にまで直接触れながら、幅広い教養と深い専門能力を身につけられるように、カリキュラムが作成されています。
 21世紀の今日の学問は、急激な社会の変化に応じて発展していくことが求められています。文学部は、人間と社会に一貫した課題を追究すると同時に、社会の急激な変化にも対応する最先端の研究をおこない、そこで得られた成果を学生の教育活動の中に積極的に活かしています。
 私たち文学部はこのような研究と教育を通じて、時代を越えた人間・社会の課題と現代の最新の課題とを、あわせて追求していきたいと考えています。

 

文学部長  宇佐美 毅