中国言語文化専攻
卒業生・大谷亨氏(無常くん)の講演会「TikTok民俗学――ショート動画で探る『老百姓(ラオバイシン)』の日常生活」を開催しました
2025年10月14日
2025年10月3日、中国言語文化専攻の卒業生で民俗学者の大谷亨氏(Xのアカウント名:無常くん)の講演会を開催しました。大谷氏は東北大学大学院を経て、現在中国・厦門大学外国語学部で教壇に立っています。2012年3月の卒業式以来、初めて中央大学を再訪したという大谷氏は、会場のForest Gateway Chuoホールの華やかさに驚いていました。
大谷氏は博士論文を元にした『中国の死神』(青弓社、2023年)で一躍注目され、フィールドワークに基づく貴重な見聞と、ユーモアあふれる筆致で多くのファンを獲得しました。講演会には本学の学生・教職員のほか、Xを見て駆けつけたフォロワーや、書店・出版関係者の姿も多く見られました。
大谷氏は民間信仰の対象である「無常」(死神の名称)の研究をライフワークとする中で、中国版TikTok(抖音)にアップされた動画を手がかりに調査対象を絞り込んでいく手法を確立し、学界でも提唱しています。今回の講演会は、大谷氏が注目する「楽隊の生演奏付きのにぎやかなお葬式」や、「神隠しに遭った農村老人が発見された瞬間」などの興味深い動画を紹介し、それらの意味や見どころを学問的に解説するという、知的スリルに満ちたものでした。
大谷氏は研究生活の中で、「この世界には、まだ誰にも気づかれていない物事が満ち満ちている」と確信したと言い、とりわけ中国がそうであると力説しました。中国や中国人に対してステレオタイプな見方がされることの多い今日、自分の目と耳を働かせて対象に迫ることや、ふりかえって我が身を見直す謙虚な姿勢が大切であることを、痛感させられた講演会でした。