ドイツ語文学文化専攻

クリスティーネ・フランク先生をゼミに迎えて

2026年11月04日

2026年10月27日(火)、文学部ドイツ語文学文化専攻の3, 4年生が履修する文学分野の演習(担当:羽根礼華)に、ウィーンよりクリスティーネ・フランク(Christine Frank)先生をお迎えし、「「いなくなった」というからにはいなくなったのだ――過去の克服という観念への応答としてのイルゼ・アイヒンガーの『信じられない旅』(»Fort« heißt fort. Ilse Aichingers Unglaubwürdige Reisen als Antwort auf die Idee der Vergangenheitsbewältigung)」という題でご講演いただいた。
 クリスティーネ・フランク先生(インスブルック大学/ウィーン大学)は、ドイツ文学・比較文学研究者であり、アイヒンガー、多和田葉子、パウル・ツェランなどの研究で世界的に知られる。文学的翻訳、トランスナショナルな文学、多言語性、日欧間の文化移転、メディア横断性、文学と歴史記述、想起の文化など、幅広いテーマに
ついて数多くの研究を発表される傍ら、文学関連展覧会のキュレーションや現代作家の作品集編集においても活躍されている方である。来日に合わせ、「旅する文学」をテーマとする専門演習での講演が実現した。
 『信じられない旅』は、ナチ時代を生き延びたオーストリアの作家イルゼ・アイヒンガー(1921-2016)が晩年に発表したコラム集の一つである。フランク先生は、その中から特に「»fort«(いなくなった、去った)への旅」を取り上げ、ドイツとオーストリアにおけるナチスの過去との取り組みをめぐる議論や、新聞掲載前後に発表さ
れたアイヒンガーの他のテクストとの関連、また伝記的背景やアイヒンガー全体文学に通底する思想との関連等、様々な文脈の中に位置づけながら、鮮やかに、そして精緻に読み解いてくださった。予め準備されていた原稿に基づきながらも、それに縛られることなく、学生たちの反応を見ながら、また時に、通訳を務めた担当教員と言葉
を交えながら当意即妙に展開された講演は実にいきいきとしたものとなり、当初の予定時間を上回ったにもかかわらず、学生たちの注意を引きつけていた。極めてレベルの高い読解の過程を実演ともいうべき形で学生たちが体験できた意義は大きい。今後、学生たち自身の学修・研究に資するものとなることを期待したい。