中大で研究する(研究支援)

ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ『君も考古学の最新研究に挑戦!縄文土器を研究する・年代を測る』を実施しました

文学部教授・小林謙一が昨年度に引き続き、科研費「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ」に採択され、プログラム『君も考古学の最新研究に挑戦!縄文土器を研究する・年代を測る』の第1回が7月24日(土)、第2回が9月18日(土)に実施されました。

両日共コロナ感染防止対策を行い、多摩キャンパスにて開催しました。

みなさん熱心に取り組んでおり、今回のプログラムを通して考古学の素晴らしさや楽しさを感じることができたのではないでしょうか。

小林教授からのコメントは次の通りです。

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今年も、ひらめきときめきサイエンスを無事終了することができました。7/24第一回の土器から年代測定用試料をサンプリングする回は対面で10名、残念ながら9/18第2回の年代を調べる回では、コロナウイルス拡散による緊急事態宣言の延長もあって、対面とweb参加のハイブリッドでおこなうことになり、欠席された方もおられて8名の小学生・中学生と保護者数名の参加となりました。中には、昨年も参加して今年も参加してくれた受講生も1名いらっしゃいました。

 

第1回のワークショップでは、全員が対面で参加できたので、それぞれにお焦げやススがついている縄文土器片を配布し、説明をしたうえで、補助の学生が個別に指導しながら、実際の土器から測定する炭化物をそぎ落とし、四角く切ったアルミホイールに包んでナンバリングの上収納し、付着状況などを記録しました(写真1)。お鍋についたお焦げのような炭化物から年代が測れることを、不思議に思った受講生もいたようでした。

 

第2回ワークショップでは、前回採取した土器付着物を、夏休みのうちに私が年代測定用に前処理し、東京大学総合博物館年代測定実験室へ持ち込んで炭素14年代測定をおこなったことを報告し、その測定方法についてパワーポイントで紹介しました。そのうえで、測定された炭素14年代値を皆に配布し、炭素14年代値はそのままでは実際の年代ではないことと、補正して実年代を推定する「較正」という方法があることを説明しました。ついで、実際に一人ずつパソコンでオクスフォード大学のホームページ上に公開されている計算ソフトに測定値を打ち込むことで較正年代の算出をしてもらいました。数値を入れるたびにグラフが変わり、統計的に算出された年代推定値が画面に映し出されるので、それぞれ自分が測った土器の年代が換算された数値をよみとってワークシートに記入してもらいましたが、きちんと理解して年代を読み取っていました(写真2)。

 

さらにそれらの年代が縄文時代のどの時期に当たるかを、配布した参考資料(これまでに私が研究した成果による年代表など)に当てはめてもらい、それぞれワークシートに記入しました。2800~2600年前頃の年代の試料がありましたが、それについて九州では弥生時代になっているが、関東・東北では縄文時代のままであることを説明したところ、受講生も、また聞いていた保護者の方達も興味を示していました。

 

その後、土器自体の変化や埋まっている層位から時代変化を読み散る考古学的な方法についても話をし、その研究手段の一環として、土器の文様を写し取る「拓本」作業を体験してもらいました。実際に土器の模様を画仙紙に拓墨で写し取るのは、なかなかむずかしいのですが、みな2、3回行ううちに模様が写し取れるようになり、きれいに拓本をとっていました(写真3)。それらの拓本を乾かして紙に裏打ちし、持ち帰ってもらいました。

 

以上のプログラムが終了したうえで、修了証(未来博士号)を授与し、質問などを受けて終了としました。アンケートを受講生、保護者に書いてもらいましたが、好意的な意見をいただきました。受講生からは「拓本」作業が難しいが面白かった、保護者からは最新の科学と考古学の協業による研究成果が興味深く聞けて良かったとの声があったのですが、その最新科学の説明の部分は受講生からやや難しかったとの声もあり、いかにわかりやすく説明するかが課題として残っています。なお、車での来校を認める、間隔を大きく開けて着席する、2回目においてはWeb参加を認めるなど、コロナウイルス感染防止に努めましたが、その点も保護者からは評価する声をいただきました。

 

研究成果を活用する手段の一つとして、子供たちへの普及活動および考古学・科学への興味をもってもらうことは大きな意義があると考えます。来年度も機会があれば考古学における自然科学的な分析をさらに広げたプログラムをおこないたいと考えています。

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写真1(サンプル採取)

写真2(データ入力)

写真3(拓本)

小林教授