政策文化総合研究所

中央大学学術シンポジウム「情報文明における共生思想構築に向けての基礎的研究」

研究の目的

 日々急激に進歩するIT、さらにAI技術(両者を合わせて以下「高度情報技術」と記述)と、それにより形成される情報社会は、近代科学文明の最先端の形態である故に、多様な領域にまたがる問題が未整理のまま拡大し、その対応は喫緊の課題となっている。
 特に、古くて新しい問題である人種、民族、宗教、イデオロギー、貧富の格差、性別、世代分断等の諸問題は、グローバル規模で拡散し、世界各地に共有され、新たな対立や紛争の原因を産みつづけている。
 というのも、情報社会においては、情報の発信・受信が、容易且つ大量であり、その真偽判定の問題に象徴されるように、情報そのものの社会的な存在意義が大きく変化しているからである。特に、情報社会では、情報そのものが暴走し、制御不能とも見なせる状況も生まれつつある。
 しかし、同時にこの状況を改善し、それぞれの要素が相互に連携し、人々の相利共生関係を構築する道を開くことも、また高度情報技術を用いて初めて可能となるのである。つまり、現代社会が直面する上述の諸問題の解決の道は、情報技術と人類社会との共生関係の構築に帰結すると言えるのではないか。
 この共生関係の構築のためには、情報社会の諸現象を鳥瞰、あるいは客観化する視点が必要となる。そこで、社会概念における時間軸を過去から近未来にまで連続的に延長し、また、社会を構成する諸要素を体系的、相互連関的に把握する比較文明論の視点を用い、現今の情報社会を情報文明の時代の始まりと仮定義する。それにより、現代社会が直面する諸問題を、歴史的視点を縦軸とし、各要素を横軸として有機的に連続させて理解出来る一方で、情報技術のあるべき姿に関しても、人類文明史上に位置づけ、総合的に理解し、また論ずることが出来る。この作業を比喩的に表すならば、「情報文明の地図化」である。地図化を通じ、情報技術の方向性やその有効な運用法に関して、総合的に議論することが可能となる。
 本プロジェクトの目的は、この様な関係性を支える思想を、情報社会における共生思想と呼び、前述のような目的意識と方法論により、多方面からのアプローチを通じて、この共生思想に関して明確化していくことにある。
 なお、本プロジェクトは、現在進行形である情報社会が抱える課題解決の道筋を見出そうとする取り組みであるが、情報社会という最先端の文明形態が背負う個々の問題に対応しようというものではない。ただし、中央大学の伝統に則して、実地応用の視点からこれらの問題に取り組み、ささやかではあるが、より良い情報社会、更には情報文明のあり方を考えるための基礎研究に資する成果を生み出す事を目指す。

キーワード

概念:情報文明、情報社会、総合知(知図と表現)、共生思想史、情報倫理、情報技術と人間の共生のあり方(法領域、倫理領域、価値領域、宗教、他)

個別:シンギュラリティー問題、ロボットの共生、宗教と情報、異質なるモノとの共生思想、
その伝え方(メディア)、共生の教育、巨大情報企業と共生

研究実績

<1年目の活動>

2023年7月27日

第1回公開シンポジウムを開催しました。
テーマ:「情報文明における共生思想構築の基礎的研究」
開催報告(196KB)

2023年11月10日~12日

長崎市で開催された第41回比較文明学会大会を共催しました。
大会テーマ:「混迷する世界と文明の未来~長崎で考える共生~」
開催報告(635KB)

2024年3月13日

第2回公開シンポジウムを開催しました。
テーマ:「情報文明のAI」及び「許されざる人工知能、許されるAI」
開催報告(212KB)

2024年3月27日

第3回公開シンポジウムを開催しました。
テーマ:「人類共生の可能性~社会の多様な差異の超克をめざして~」
開催報告(240KB)

研究代表者

政策文化総合研究所保坂 俊司 研究員(中央大学国際情報学部教授)

中央大学学術シンポジウムについて

中央大学学術シンポジウムは、本学附置の研究所における共同研究の成果をシンポジウムにおいて市民や研究者に公表するという目的で、学長主催のもと1980年にスタートしました。第30回のテーマは「情報文明における共生思想構築に向けての基礎的研究」で、2023年4月から3年間の研究プロジェクトとして政策文化総合研究所が担当します。

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