社会科学研究所第27回中央大学学術シンポジウム「地球社会の複合的諸問題への応答」

研究テーマ (研究代表者 宮野 勝)

地球社会の複合的諸問題への応答
Responses to the Multiple Problems in the Planetary Society

研究の概要・目的

  地球規模となった現代社会で生起しつつある複合的問題の意味を理解し比較する学はいかにして可能か。

   国際関係や国際比較という研究枠組みが重要であることは論を待たない。しかしながら、国家や地域という枠組みで境界線を設けることで成立した社会科学は、グローバリゼーションの全景を把握することの困難に直面している。

   市場競争力や高い生産性を追求するための管理社会化、社会の流動化、人間の断片化、ストレスや汚染による様々な形態の「病」、「国民・市民」といった枠からはみ出す人々の増大など、いまや私たちは、自然や資源の有限性、極度にシステム化・ネットワーク化した社会の統治性の限界に直面している。

   異なるタイプの他者との相互理解、社会的痛苦の縮減を可能とする開発・文化・政治・経済を可能とする社会をどのように構想するのか。いま新たに、「惑星地球」規模に広がった社会をとらえる理論、概念、命題群が必要とされている。

   私たちは、「地球社会(Planetary Society)」として社会をとらえ直し、そこで生じている複合的な諸問題をどのように研究し、諸問題にどのように応答していくべきかを、社会科学の視点からとらえ直すことを試みる。

研究活動

日程 内容
2016~2018年度 各研究プロジェクトによる研究活動の実施
各研究プロジェクトの主な研究実績
2018.12.8(土)
10:00~18:00
第27回中央大学学術シンポジウムの開催
開催案内
開催報告
2019年度 中央大学学術シンポジウム叢書の刊行
準備中

各研究プロジェクト

臨床・臨場の智 (代表 新原 道信 研究員)

本研究プロジェクトは、社会的痛苦の縮減を目的として、地球社会のジレンマに応答する “臨場・臨床の智”の把握に向けてフィールドワークを行ってきた。ここでの「ジレンマ」とは、自律性と管理、介入の拡大と自然からの制約、科学技術によってもたらされた不可逆な現実と可逆的な選択、世界システムの地球規模の拡張にともなう文化の異質性や多様性に対する包摂と排除など、複数の位相のジレンマを含意している。

こうしたジレンマの結節点となっているフィールドとして、ランペドゥーザ、宮古・石垣、立川・砂川などの“国境地域/境界領域”を選定し、比較調査を実施した。

本調査研究によって、“臨場・臨床の智”を把握する理論と方法を構想し、「地球に住むことに対する“責任/応答力”を内包した新しい文化」(メルッチ)の提唱を試みる。

意識調査研究 (代表 宮野 勝 研究員)

本研究プロジェクトは、地球社会における国境を越えた貧富や所属集団などによる分断と、マスコミやネットを流れる意図的/非意図的に歪曲された欺罔やフェイクニュースの中で、いかにして、社会内/社会間での相互理解と相互信頼の醸成が可能になるかを柱とし、人々の意識を中心に研究を進めてきた。

マスコミや政治また他者や他集団に対する無批判的な信頼は危ういものであるとしても、経験的な検証を経ないままでのこれらに対する一方的な不信も、社会や社会間の関係を破壊する。

意識調査とりわけ文化間比較に関する方法論的な問題点も念頭に置きつつ、マスコミに対する信頼・政治に対する信頼・一般的社会的な信頼などの在り方を探り、それらを規定するメカニズムを探り、マスコミや政治がどのような存在であれば世論の信頼を獲得しうるのか、どのようになれば地球社会において人々相互の間で相互理解と相互信頼が高まるのかについての探求を試みる。

理論研究 (代表 鳴子 博子 研究員)

本研究チームは、チームの共通テーマを「紛争・市民・国家」とし、中国班・フランス班に分けて研究を進めてきた。

中国班が清華大学と共同して開催した国際シンポジウム「グローバル下の日本と中国」(2017.2、清華大学)では、「日中の歴史と社会的変化」ならびに「日中の環境問題」をめぐって日中双方から報告がなされ、問題に検討が加えられた。フランス班による外部研究者を交えたシンポジウム「ジェンダー・暴力・デモクラシー」(2018.2、駿河台記念館)では、大きさも質も異なるさまざまな「暴力」を、報告者がそれぞれの角度から分析し、地球社会の「暴力」をゼロに近づける困難な道のりの第一歩として、「暴力」の真の原因がどこにあるのかに迫った。

これらの研究活動を踏まえて、学術シンポジウムでは「文化・政治の新しい秩序の構築に向けて」をテーマに、言語権をはじめとする文化に関わる諸現象と国際法とのかかわりを問い、18世紀の政治構想・政治秩序分析から現代の地球社会の秩序の在り方を問いたい。

中央大学学術シンポジウム

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