社会科学研究所
第27回中央大学学術シンポジウム「地球社会の複合的諸問題への応答(Responses to the Multiple Problems in the Planetary Society)」開催報告
2019年01月08日
基調報告の様子
【全体テーマ】地球社会の複合的諸問題への応答 / Responses to the Multiple Problems in the Planetary Society
【日程】2018年12月8日(土) 10:00~18:00
【場所】中央大学駿河台記念館670号室(千代田区神田駿河台3-11-5)
【主催】第27回中央大学学術シンポジウム/中央大学社会科学研究所
福原紀彦 中央大学学長による挨拶
【開催報告(概要)】
2018年12月8日(土)、中央大学駿河台記念館において、第27回中央大学学術シンポジウム「地球社会の複合的諸問題への応答」(主催・中央大学社会科学研究所)が開催された。このシンポジウムは、「地球規模となった現代社会で生起しつつある複合的問題の意味を理解し比較する学はいかにして可能か。異なるタイプの他者との相互理解、社会的痛苦の縮減を可能とする開発・文化・政治・経済・社会をどのように構想するのか」という同時代認識に基づくものであった。
そのうえで、本シンポジウムは、地球社会(Planetary Society)として現代社会を把握し、そこに生じる複合的な諸問題(the multiple problems)を、どのように研究し、いかなる応答をしていくのかを、社会科学の視点からとらえ直すことをめざした。
新原道信 中央大学教授による基調報告の様子
社会科学研究所は、中央大学内外の社会科学系の教員・研究者が、それぞれの学問の理論・方法を尊重しつつ、細分化された研究を架橋し現実の諸問題に応答するため、研究活動をすすめている。とりわけ、社会を構成するグローバル/リージョナル/ナショナルレベルの総体把握・全景把握、それと同時に、ローカルの実態把握に即した領域横断的な共同研究を、複数の研究チームの対話・協業により、めざしてきた。
本シンポジウムは、この大きな流れのなかで、三つの研究チームに分かれ、異なるアプローチから研究を深めたうえで、それぞれの枠組みから一歩踏み出すことを追求した。当日は、基調報告 「“惑星/地球/社会”の複合的諸問題への応答に向けて」につづいて、以下のかたちで報告・討論がなされた。
第1セッション「地球社会のジレンマに応答する“臨場・臨床の智”に向けて」では、フィールドワークに基づき、イストリア、ランペドゥーザ、石垣などの国境島嶼地域の研究と、大久保・砂川などの都市コミュニティ研究の成果が報告された。
鈴木鉄忠 前橋国際大学専任講師
報告「「非常事態」を名付け直す―国境地域における危機と”臨場・臨床の智”―」(Session1)
阪口毅 立教大学助教
報告「移動性と領域性のジレンマを超えて―コミュニティ研究における時間・場所・身体―」(Session1)
矢澤修次郎 一橋大学・成城大学名誉教授によるコメント(Session1)
第2セッション「分断と虚偽に対抗しうる相互理解と相互信頼の醸成に向けて」では、数量的データの実証分析により、分断や虚偽のなかで、いかにして、社会内/社会間での相互理解と相互信頼の醸成が可能になるかについて、人々の意識を中心にすすめた研究の成果が報告された。
安野智子 中央大学教授
報告「情報の読み飛ばしと世論調査の提示が情報探索と争点知識に及ぼす影響」(Session2)
宮野勝 中央大学教授
報告「政治家信頼・不信理由の探索」(Session2)
前田幸男 東京大学教授によるコメント(Session2)
第3セッション「文化・政治の新しい秩序の構築に向けて」では、理論研究により、言語権をはじめとする文化に関わる諸現象と国際法とのかかわり、18世紀の政治構想・政治秩序分析から現代の地球社会の秩序の在り方を考察した研究成果が報告された。
西海真樹 中央大学教授
報告「文化多様性からみた日本の少数言語」(Session3)
鳴子博子 中央大学教授
報告「ルソーの『ポーランド統治論』から見たヨーロッパ政治秩序―ポーランドとフランスの拒否権を対比して―」(Session3)
建石真公子 法政大学教授によるコメント(Session3)
各セッションでは、それぞれの報告に対して、コメンテーターをはじめとして、会場からも、的確な質問・意見が提出され、真剣なやりとりがなされた。これにつづく総括討論においては、あらためて、「いま私たちがどこにいるのか、社会はどの地点にあるのか、地球社会の問題へのアプローチはいかにして可能か、惑星地球をひとつの海として、社会をそのなかに浮かぶ島々として感得することはいかにして可能か」といった根源的問題提起がなされた。地球社会が持つ困難と統治性の限界と同時に、「この新たな状況下における国家や権力をどう捉えるのか、領域国家の終焉をどう考えるのか」、あるいは、「知識・情報化、グローバルな知識社会とそこでの〈個〉の問題をどう理解するのか」、そして、「そもそも、こうした問題が問題化され、3つのセッションで異なるアプローチが採用されることが持つ(知識社会学的な)意味は何か」についての問いかけもなされた。
総括討論の様子
(左奥から、新原教授、野宮教授、天田教授、宮野教授、鳴子教授)
野宮大志郎 中央大学教授
天田城介 中央大学教授
新原道信 中央大学教授
宮野勝 中央大学教授
鳴子博子 中央大学教授
全体を通じて、本シンポジウムは、異なる大学・学部・学科に属し、異なる学問の手法を錬磨してきた社会科学者が、社会と知の転換点に立っていることを認めつつ、それぞれの分野で蓄積してきた知を結び合わせ、再構成していくための「対話的なエラボレイション」であったことがあらためて確認された。
西海 真樹 中央大学社会科学研究所長による開会挨拶
秋山 嘉 中央大学人文科学研究所長による閉会挨拶
報告の様子
質疑の様子
討論の様子