ELSIセンター

所長からのメッセージ

須藤 修

中央大学ELSIセンター所長
須藤 修(国際情報学部・教授)

情報化とグローバル化により、社会は加速度的に変革されています。特に、情報はネットワークを通じて世界中を瞬時に駆け巡るとともに共有化が進んできています。莫大な情報は、計り知れない価値を生み出すとともに、新たな懸念や問題を生み出しています。例えば、走行データを巨大データセンターに蓄積し、それをクラウド・コンピュータのAIに学習させることでさらなる性能向上を図っている自動走行車が、だれも予見できないような行動をとって事故を起こした場合には、誰が責任を負うべきなのでしょうか? いまは、AI技術の急速な進化にヒトの知恵さえも追いつかず、企図した理想社会とは逆のディストピアが現実のものになるという危惧さえも指摘されています。

こうした懸念や問題に対して、宗教・倫理・法律といった現在の社会規範は、必ずしも適切に対応できていません。個人情報、顔認証、歩容認証、またはサイバースペースで行われる情報共有ソフトなどにおける不適切な行為が、いまだ適切なルールによって制御されていない例は数多くあります。そのような状況下において、英智を集め、情報科学技術、さらには生命科学技術に代表される先進的な科学技術の発展可能性を見据えつつ、新たな規範のあり方を構想し、新しいルールを提案することは極めて重要な喫緊の課題です。

中央大学ELSIセンターでは、解決すべき課題群について熟考し、科学技術イノベーションと共進化する、すべての人々がインクルーシブな社会発展を創造するために、新たな倫理や規範、来るべき社会の在り様について追求していきます。さらには、産官学連携の研究基盤により、社会の様々な課題群を解決することにも貢献しようと考えています。