社会科学研究所活動報告(2013年度研究チーム)

2013年度研究チーム

「グローバル化と社会科学」

「グローバル化と社会科学」チームは、2013年度は各メンバーとも執筆準備を行い、2014年3月にその成果として研究叢書第28号『グローバル化と現代世界』(星野智編著、中央大学出版部)を刊行した。

「選挙と政治」

「選挙と政治」チームは、4月と2月に研究会を開き、それぞれ、2本・4本の報告があった。参加者はいずれも選挙と政治を研究領域としつつも、全体として政治学・社会学・社会情報学・社会心理学など多様な分野をカヴァーしており、議論は活発で、率直な意見交換がなされた。また、社会調査・そのデータ分析・世論調査データの二次データ分析などの実証的な研究が多いが、それだけではなく、数理的な研究・理論的な解明も試みている。以上の研究の成果を、報告書としてまとめていこうとしている。

【研究活動】

第1回  研究会:2013 年 4月 9日(火)

報告者:塩沢健一

テーマ:住民投票における争点提示と「民意」の正当性:鳥取市の事例をもとに

要約 :2012年5月の鳥取市の市庁舎整備に関する住民投票を郵送調査で分析した。計画の「手続き」に対する異議申し立てには正統性があるが、庁舎整備案をめぐる「実質的な選択」の点では投票結果の正統性に疑問がある。

報告者:安野智子

テーマ:愛国心の規定要因

要約 :日本人のナショナル・アイデンティティを分析した。領土問題への強硬態度は、男性・生活水準の低さ・政治知識の多さ・参加集団の少なさ・孤独感の低さ・政治的有効性の高さ・一般的有効性感覚の低さなどと関連していた。

第2回  研究会:2014年 2月 20日(木)

報告者:塩沢健一

テーマ:東京都におけるベッドタウンの地方政治と若年層の投票参加

要約 :小金井市での2011年市長選挙と、同市の同年の「出直し」市長選の調査データ、また2013年住民投票の選挙管理委員会発表の年代別投票率を分析した。条件によっては、若年層も投票参加するという結論だった。

報告者:三船毅

テーマ:交換ネットワークからみた政党間競争

要約 :コールマンらの交換ネットワーク研究を基礎に、政党間競争の数理モデルを構築した。モデルから、第1に、政党による争点の単純化および1つの政策や法案に執着する論理構造、第2に、政党が分裂する論理構造を導出した。

報告者:安野智子

テーマ:誤解に基づく世論

要約 :世論による評価の基礎となる認知情報が誤っている場合を論じた。事例は、公務員に関する認知・「大きな政府」に関する認知などである。どのような人で、なぜ認知が歪むのかの研究が、今後の検討課題である。

報告者:宮野勝

テーマ:90年代中期の政治意識の変容

要約 :90年代中期の有権者の政治意識を捉えるために、複数のサーベイデータの比較可能性と方法について論じた。また選挙時調査の特性について検討し、特にパネル調査の、Listwise Deletionでの分析と、Multiple Imputaionを用いた分析とを比較した。

「『信頼感』の国際比較研究」

2013年度における研究活動は、次の3点に集約される。

(1)前年度からの研究をとりまとめ、その成果の発表に取り組んだ。

①佐々木が主宰して8か国で実施した「社会的信頼」国際調査のデータ解析を集約して、社会科学研究所研究叢書の1冊として刊行物をまとめあげた。これは2013年3月末までに中央大学出版部から刊行される。

②2013年10月30日―31日にモスクワ経済大学主催で行われた国際コンファレンス "Business, Society, Human"に佐々木と石川が招かれ、上記国際調査データを基にした基調講演を行った。

(2)異なる国における社会的信頼の社会的・経済的・文化的コンテクストに関して理解を深めるため、外国人研究者を招いて講演を開催し、それをめぐる討議を行った。これについては「2.研究活動」欄を参照。

(3)スロヴァキアの地方都市を対象事例として、コミュニテイ生活の諸相との関わりで社会的信頼の構造と機能を追究した。

【研究活動】

第1回 公開研究会 2013年6月17日(月) 11.00~12.30

講師 :アン・マリー・トッド(米国カリフォルニア州立サン・ノゼ大学教授)

テーマ:環境をめぐる愛国的レトリックと世界市民社会

要約 :環境論の中のナショナルな論点とグローバルな論点との重層性を検討し、それぞれの根底にある信頼観のあり方に言及した。

第2回 公開講演会 2013年7月10日(水) 15.00~17.00

講師 :エッカート・ツィンマーマン(ドイツ・ドレスデン大学名誉教授)

テーマ:EUの経済危機にいかに対応するかー大恐慌からの教訓―

要約 :戦前の大恐慌と対比させながら現在のEU経済危機の特徴を描き出し経済危機と社会的信頼との関連に言及した。

第3回 公開講演会 2013年12月11日(水) 16.30~18.30

講師 :アルツール・ヤン・コスチアンスキ(ポーランド科学アカデミー付属哲学社会学研究所准教授)

テーマ:市民社会の形成についてーポーランドを事例としてー

要約 :ポーランド特有の市民社会形成史を踏まえて現代ポーランドの市民社会の現実と問題点を実証的に描き出し、市民社会の土台をなすべき社会的信頼のありかたに言及した。

【調査研究】

第1回:調査期間:2013年5月11日~6月9日

調査地域:スロヴァキアとチェコ

出張者:石川晃弘

要約 :スロヴァキアの3都市(バンスカー・シチアヴニッツァ、ブレズノ、プレショウ)における住民アンケート調査の手配と基本資料の収集、チェコ科学アカデミー社会学研究所における文献収集と意見交換。

第2回:調査期間:2013年9月8日~9月19日

調査地域:スロヴァキアの上記3都市

出張者:佐々木正道、石川晃弘、小熊信

要約 :上記3都市における政治・行政、産業・労働、文化・市民団体のそれぞれにおけるキイパーソン対象の面接聴取調査。スロヴァキア側研究協力者との意見交換。 なお、このスロヴァキア地方都市調査の結果は2014年度に刊行の予定。

「モバイル社会と若者」

本研究においては、これまで若者たちのモバイル・メディア利用の実態について、多角的な視点から、実証的な調査研究を行ってきた。具体的には、質問紙調査によって全体的な傾向を把握しつつ、特徴的な利用者に対しては詳細なインタビュー調査を実施し、量的・質的調査の両面から、実態を掘り下げてきた。
 2013年度においては、さらにこの方針を継続し、これまで以上に特徴的な利用者に対するインタビュー調査を行った。その一つが、最北端の町である北海道稚内市の大学生に対するインタビュー調査、もう一つが、複数のSNSのハードユーザーである大学生に対するインタビュー調査である。

【研究活動】

今年度、研究会(合宿研究会含む)などは特に行わなかった。

【研究調査】

1)地方都市大学生におけるモバイル・メディアの利用実態調査

調査期間:2014年7月28日(日)~7月30日(火)

調査領域:北海道稚内

出張者 :辻 泉、土橋 臣吾(法政大学)

要約  :地方都市の若者におけるモバイル・メディア利用の実態を把握するため、稚内市の大学生を対象にインタビュー調査を行い、その利用が彼らのライフコースと大きな関連を持っていることが明らかになった。

2)複数のSNSのハードユーザーに関する事例調査

調査期間:2014年1月20日(月)~1月27日(月)

調査地域:東京都八王子市

出張者 :(出張はなし、調査は 辻 泉が実施)

要約  :複数のSNSを利用するハードユーザーとした、3名の大学生を対象とするインタビュー調査を行い、場面に応じて連絡手段を使い分けるその特徴的な実態が明らかになった。

「平和学の再構築」

プロジェクト2年目にあたる本年は、ゲストスピーカーをお呼びして、国際政治学理論、個別の地域や核管理の問題、平和の概念の問題など、広く平和学に関連した話題提供をお願いし、その後、活発な議論を行った。  日本での平和学は、戦争、核兵器のない平和を考えるところから始まり、その後、世界の貧困の撲滅など、より広い射程で考えるようになった。しかし、広い平和であっても、社会や個人一人一人に密接にかかわる平和学であったかどうかは疑問が残る。とりわけ、国家間の秩序を維持するために主権国家体系が重視された結果、国内での弾圧などは看過され多くの犠牲者を出してきたという事実がある。あらためて平和とは何かという根源的な重いテーマを我々は考えなければならないことを確認した1年であった。また、平和について、国際政治学の理論からさまざまにアプローチできることも報告者のそれぞれの分析から理解することができたように思われる。

【研究活動】

第1回  研究会: 2013年6 月7 日(金)

報告者: 大矢根聡 (同志社大学教授)

テーマ:国際規範の「法化、遵守連鎖」の逆説―WTOにおける法化の不均衡とドーハラウンドの失敗

要約 :国際政治理論としてこの10年ぐらいの流行でもあるコンストラクティヴィズムの意義について①国際規範の分析手段として②国際政治学で失われていた道徳的側面の回復③外交官など実務化が感じる現場感覚の重視 ④分析の柔軟性が指摘された後、制度化がもっとも進んでいるといわれるWTOの法化とその問題点、今後の課題について、コンストラクティヴィウムの視点から分析が行われた。

第2回 研究会:2012年7月12日(金)

報告者:中溝和弥(京都大学大学院アジアアフリカ地域研究科准教授)

テーマ:インド民主主義の現在―下克上とその後の展開

要約 : 『激動するインドの内政と外交』という大きなテーマの下、政文研と共催のもと、ワークショップという形式で行った。インドの内政に関連して、インドの国内政治が大きく転換した1989年の下院選挙とその後の動向について、ビハール州を事例として、なぜ国内政治の転換が生じたのかを現地の選挙分析、インタビュー調査をもとに紹介した。

第3回 研究会:2012年12月7日

報告者:秋山信将(一橋大学法学研究科教授)

テーマ:核兵器国はなぜ増えないのか
-核不拡散の実効性担保について-

要約 :核兵器管理の制度であるNPTの基本構造、アメリカを中心に不拡散政策の変遷、そして、北朝鮮や最近のイラン開発の問題についても紹介がなされた。核不拡散をめぐっては、レジーム論での分析が多用されているが、実際には、アメリカの核による保証(拡大抑止というassurance)を合理的に判断し、その後にNPTが提供する規範を受け入れていったものが多く、リアリズムに基づいた議論の有効性が見えてくるとの指摘が行われた。

第4回 研究会:2014年1月18日

報告者:吉川元 (広島平和研究所所長)

テーマ:平和とは何か

要約 :第二次世界大戦後主権国家間の安定が目標とされる一方、国家権力(政府)による人民の殺戮が行われた。実際、戦争の犠牲者数を上回る規模の殺戮を国際社会は見逃してきたのか、救いの手を差し伸べてこなかったのかといった疑問を提示した。国家間の平和を守るあまり、人間の平和、安全保障が十分なされていなかったことへの疑念とともにあらためて「平和とは何か」の問いかけがなされた。

【調査研究】

調査期間:2014年2月28日(金)~3月1日(土)

調査地域:国連大学での資料収集

出張者:望月康恵

要約 :平和学にとって、平和とは?正義とは?というのは大きな問いかけである。望月氏は一貫して移行期正義の問題を行っており、東京青山の国連大学での国連関連資料の収集を特に目的とした。今後本研究会での報告もお願いする予定である。

調査期間:2014年3月24日(月)~3月27日(木)

調査地域:知覧特攻平和館および鹿屋基地資料館見学

出張者:川久保文紀

要約 :第二次世界大戦において、普通の市民がどのようなかかわりかたをし、自ら死を選択せざるをえなかったかは、根源的な戦争と平和の問題である。現地の資料館で人々の苦悩や戦争の悲惨さを改めて確認するとともに、今後平和学の授業などにも活かす知見を習得する。

「3.11以降の『惑星社会』」

本研究チームは、「ヨーロッパ研究ネットワーク」の活動を基盤に、"惑星社会の諸問題を引き受け/応答する(responding for/to the multiple problems in the planetary society)"ことを目的として発足した。「3.11後」ではなく「3.11以降」という言葉の背景には、《日本社会とそこに生きる私たちの「状況・条件」は、「震災、津波、原発事故」で変わってしまったのではなく、"多重/多層/多面の問題群(the multiple problems)"は、「3.11以前」にも「客観的現実のなかにすでにとっくに存在」し、「3.11」はその問題が顕在化する契機となったに過ぎない》という見方が在る。「社会的行為のためのグローバルなフィールドとその物理的な限界」という二重性を持つ"惑星社会"で生起する"多重/多層/多面の問題"の意味を把握するために、ヨーロッパ、地中海、大西洋、日本、アメリカなどの各地でのフィールドワークからの知見を持ち寄り"惑星社会"という現在を生きる人間の"生存の在り方(Ways of being)"と社会の構成のされ方を見直すことを企図した。

【研究活動】

研究会:2013年7月4日(木)、8月7日(水)、9月5日(木)、2014年3月18日(火)

報告者:新原道信、古城利明、中島康予、中村寛、鈴木鉄忠、阪口毅、友澤悠季

テーマ:惑星社会の諸問題を引き受け/応答する――今後の研究プロジェクトに向けて-

要約 :幹事の基調報告と他のメンバーによる報告・議論を行い、「"境界領域"のフィールドワークから"惑星社会の諸問題"へ」というテーマの深化につとめた。

【調査研究】

調査期間:2013年9月10日(火)~9月12日(木)、
2014年2月25日(火)~2月27日(木)、3月30日(日)~3月31日(月)

調査地域:宮城県岩沼市、和歌山県白浜町・田辺市、京都府京丹後市

出張者:新原道信、阪口毅

要約 :「3.11以降」の日本の地域社会で生起しつつある"惑星社会の諸問題"の実態調査を行った。

「ヨーロッパ研究ネットワーク」

研究活動としては、「3.11以降の『惑星社会』」チームとして活動を実施した。

「フォーラム『科学論』」

2013年度については、諸般の事情により研究活動は実施しなかった。