※本プレスリリースは、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人国立環境研究所、学校法人東邦大学、学校法人中央大学との共同発表です。

【発表のポイント】
◆ウナギが一時的に水中から出て陸上の餌生物を捕らえることを発見した。
◆ウナギはすむ環境に応じて、水中だけでなく陸上でも狩りをするという選択肢をもつことで、フレキシブルに多様な環境の餌生物を利用できることを明らかにした。
◆海から来遊して「海流任せ」に河川に進入するウナギにとって、水陸両方で狩りをする能力は、規模や餌環境の異なる様々な河川、また河川内においても上流から下流に至る、あらゆる環境での生息を可能にしてきたと考えられる。

陸上でカニを捕食するウナギ(オオウナギ)。本研究に着想を得て、野外で撮影。写真提供:内山りゅう氏
【概要】
東京大学大気海洋研究所の脇谷量子郎特任准教授と、国立環境研究所福島地域協働研究拠点の境優主任研究員らによる研究グループは、ウナギが水中だけでなく陸上でも積極的に獲物を捕食できることを、行動実験と野外調査の双方から初めて明らかにした。10個体のオオウナギを用いた室内実験において、全個体が水場から陸場へ自発的に上陸し、陸場のコオロギを捕食する行動が多数観察された。さらに、自然河川でもオオウナギの胃内容物から陸上生物が確認された。奄美大島の自然河川では、下流域に比べ上流域の個体で陸上生物の摂餌率が高いことが判明し、野外でもこの行動が機能していることが示唆された。これにより、ウナギが環境条件に応じて水陸の境界を越えて柔軟に餌資源を利用する戦略を持つことが明らかとなった。本成果は、魚類の摂餌行動の多様性や、水陸両生的な適応進化の理解に大きく貢献する。
本研究成果は、2025年10月10日付で『Ecology』のオンライン版に掲載されました。
詳細は、「プレスリリース」をご覧ください。
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