○ 美術・衣服分野の古典的な加工手法である”版画”から着想を得て、光・電磁波センサを印刷製造
○ 柔らかなセンサシートへの大面積印刷に特化した製造手法と材料インクで、耐久性向上を実現
○ 多様な液体材料の印刷を組み合わせることができ、多機能素子の極めて簡便な集積実装へ期待
写真左:李 恒 中央大学理工学部 助教(電気電子情報通信工学科)
写真右:河野 行雄 中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科の李恒助教、河野行雄教授、松﨑勇斗大学院生(理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻、博士前期課程1年)らを中心とする研究グループは、独自に開発した多機能な「光・電磁波撮像センサシート」の生産に印刷技術を活用することで、極めて高効率な製造工程の創出に成功しました(図・左)。多機能な非破壊検査に向けた要素技術として本研究グループが開発を進めるセンサは、元来、多様な素材・構造から成る立体物(例:車載部品、医療器具、インフラ設備、動植物)を壊すことなく、内部の素材の組み合わせや形状・層構造を可視化する“材質同定(用語1)・構造復元(用語2)といった非破壊検査(用語3)技術に特化したものです。従来の素子作製工程では、センサやドーピング液、電極配線などの各原材料を、シートの必要な部分にだけ移し取って繋ぎ合わせる剥離転写法(用語4)を用いていましたが、各材料間での断線が頻発し、動作不良を起こすという、材料の機械的な強度不足が課題となっていました。
そこで本研究では、液体インク状態の各材料を印刷技術により、高い密着度で刷り込ませる作製工程を考案することで、素子の断線・動作不良を抑制し、作製効率と耐久性の飛躍的な改善を達成しました。この成果は、「光・電磁波撮像センサシート」の社会実装に求められる大規模集積や用途に応じた生産等を可能にするもので、今後の幅広い応用展開が期待されます。
用語1)材 質 同 定: 複合材料から成る検査物に対して、構成する材料の組み合わせを個々に特定する技術のこと。
用語2)構 造 復 元: 中空や多層、曲面等、検査物内外がどの様な形状で構成されているかを特定する技術のこと。
用語3)非破壊検査: 物を壊すことなく”対象物が内部に隠している欠陥や変質、さらに劣化を検知・可視化する検査技術のこと。
用語4)剥離転写法: 既に特定の基板上に堆積された薄膜試料に粘着テープ等を押し当てることで、テープ側へ剥がし取る技術。粘着性の剥離転写以外にも、分子間に作用する弱い引力(ファンデルワールス力)を用いた剥離転写技術も多数報告されている。
本研究成果は、2023年9月23日(日本時間)付で独国科学誌『Advanced Materials Interfaces』でオンライン公開されました。
詳細は、大学ホームページの「プレスリリース」をご覧ください。
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