研究

理工学部助教 李 恒・教授 河野 行雄:大阪大学と中央大学、薄くて柔らかいシート型光センサが拓く“やさしい光分析技術”

〇 測定対象物を傷つけない“薄くて柔らかい”シート型光センサを開発し、光だけでなく熱や分子などに関連する電磁波(光)を“簡便に”検知・イメージングできる無線計測システムを実現。
〇 カーボンナノチューブ光検出器と有機トランジスタを、極薄膜基材(5μm以下)にアレイ集積実装※1し、シート型光センサを構築。
〇 シート型光センサは、室温・大気下で高感度と広帯域性、高い曲げ耐久性などを達成。
〇 シート型光センサを統合した無線計測システムは、簡易な“非採取”液質評価や“非接触”イメージングなどの非破壊検査手法の可能性を広げ、ウェアラブルデバイスやポータブル撮像機器などへの応用にも期待。

写真左:李 恒    中央大学理工学部 助教(電気電子情報通信工学科)
写真右:河野 行雄 中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)

 大阪大学 産業科学研究所の川端玲さん(日本学術振興会特別研究員/工学研究科博士後期課程)、荒木徹平准教授、関谷毅教授、中央大学 理工学部の李恒助教、河野行雄教授らの研究グループは、測定対象物を傷つけない“薄くて柔らかい”シート型光センサの開発に成功し、光だけでなく熱や分子などに関連する電磁波(光)を“簡便に”検知・イメージングできる無線計測システムを実現しました。
 従来の光センサは、硬い半導体素子や厚く頑丈な実装基板を用いて構成されてきました。一方で、薄型で柔軟なシート型光センサは、対象物表面に密着しながら表面や内部を撮像できるため、ヘルスケアや非破壊検査への応用に向けた研究開発が増えつつあります。しかし、従来のシート型光センサの検出帯域は狭く、対象物の熱や化学分析に適した長波長(赤外~テラヘルツ)の電磁波(光)検出が困難でした。また、柔軟なシート型光センサの構築において、極めて高い柔軟性を発現できる有機トランジスタが候補となりますが、光照射下での不安定な動作や、無線アレイシステムの構築などが課題でした。
 今回、カーボンナノチューブ光検出器と有機トランジスタを、極薄膜有機基材(5μm以下)にアレイ集積実装することで、室温・大気下においても安定性・柔軟性・高感度を示すシート型光センサを開発しました(図)。
 カーボンナノチューブ光検出器は、薄膜基板上に印刷形成されることで高い柔軟性を示し、可視からテラヘルツまでの広帯域光を電気信号に効率的に変換します。有機トランジスタアレイは、柔軟性を損ねない遮蔽構造により光照射下においても安定動作し、光検出器から変換された電気信号を走査&読出しするアクティブマトリックス駆動を行います。さらに、シート型光センサの検出信号の制御・増幅を行うために、有機トランジスタ回路を内蔵することも可能です。シート型光センサを無線計測システムと統合することで、可視~赤外光源、熱源、内部溶液の濃度などを簡易に検知・イメージングすることを実現しました。本研究成果は、フレキシブルセンサによる広帯域光分析を可能とすることで、生体や生体代謝物の非侵襲モニタリング、インフラ構造物の非破壊検査、配管内部の非採取検査など、様々な検査技術へ貢献することが期待されます。

 

 本研究成果は、2024年1月11日(日本時間)に独国科学誌『Advanced Materials』(オンライン, Accepted Articles)で公開されました

 詳細は、大学ホームページの「プレスリリース」をご覧ください。

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