○ コンピュータビジョンによる画像計測によって、薄くて柔らかく扱いやすい多機能光センサを用いて非破壊撮影した検査物の内部材質と内部構造をより確実に推定する技術を開発。
○ コンピュータビジョンを広帯域・多波長に活用。未踏領域である“眼に見えない光”による新たな解析が品質評価分野にブレークスルーをもたらす。
○ センサを成すカーボンナノチューブ(CNT)は、可視光・眼に見えない光のいずれも高感度に検出する眼として、未踏領域でのコンピュータビジョンを力強く後押し。
○ 目視では捉えきれない「複数の材質で成る複雑な構造物」を、触れずに、壊さずに同定し、復元像を生成することが可能に。
写真左:李 恒 中央大学理工学部 助教(電気電子情報通信工学科)
写真右:河野 行雄 中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科の李 恒助教、河野 行雄教授、木下 祐哉大学院生(理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻・博士前期課程2年)、国立情報学研究所(NII)・コンテンツ科学研究系の佐藤 いまり教授、Zhenyu Zhou研究員(研究当時)らを中心とする研究チームは、中央大学グループが独自に開発した「多機能な光-電磁波撮像デバイス・システム」とNIIグループのコンピュータビジョン注1)の手法で画像データから三次元立体的に構造を復元する技術を有機的に組み合わせることで、非破壊で検査物の内部材質と内部構造をより確実に推定する新たな検査技術を創出しました(図)。
ヒトとモノが密に相互介入するIoT社会の幕開け以降、工業製品や日用品に対して、不良・変質・異物混入を検知する非破壊検査技術が注目を集めています。なかでも非接触で大面積な解析性能を有する「光-電磁波撮像」は、検査技術の中心的役割を担っています。代表的な検査項目として、材質同定(対象が何でできているか)と構造復元(対象がどのような形状となっているか)の把握が挙げられます。これらの両立は高い精度・信頼性での品質保証につながりますが、非破壊検査技術の研究開発においては、依然として発展途上な状況と言えます。
そこで本研究では、日本発の先端ナノ材料:カーボンナノチューブ(CNT)をセンサに用いた中央大学グループ独自の材質同定型デバイス・システムに対して、対象物の影(シルエット)の重ね合わせから外観を推定するNIIグループの構造復元手法を導入することで、品質評価の分野にブレークスルーをもたらす新たな非破壊検査技術を創出しました。これら要素技術は、工業・日用品の製造流通において忠実な再現度の品質管理の実現につながると考えられます。
注1)コンピュータビジョン(CV: Computer vision)
画像データに対する情報工学や数値処理を通じて新たな付加価値を創出する学問分野のこと。
図 本研究のコンセプト
本研究成果は、2023年12月25日(日本時間)付で国際科学誌『Advanced Optical Materials』でオンライン公開されました。
詳細は、大学ホームページの「プレスリリース」をご覧ください。
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