研究

ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ『縄文土器を科学しよう!縄文は何年前なのか?土器をどう使ったのか?』を実施

2021年度に引き続き、文学部教授・小林謙一が日本学術振興会科学研究費「ひらめきときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ」に採択され、プログラム『縄文土器を科学しよう!縄文は何年前なのか?土器をどう使ったのか?』を多摩キャンパスで実施しました(第1回7月21日(日)、第2回9月15日(日))。

みなさん熱心に取り組んでおり、今回のプログラムを通して考古学の素晴らしさや楽しさを感じることができたのではないでしょうか。

小林教授からのコメントは次の通りです。

今年も、ひらめきときめきサイエンスを無事終了することができました。7/21第一回の土器から年代測定用試料をサンプリングする回は対面で11名、9/15第2回の年代を調べる回では、夏期休暇期間終了後と言うこともあって、他の予定により欠席された方もおられて小学生から高校生9名と保護者数名の参加となりました。中には、以前にも参加したが、高校での授業で元素に改めて興味を持ったということで今年も参加してくれた受講生もいらっしゃいました。

 

第1回のワークショップでは、最初に全体説明のあと(写真1)、2班に分かれて年代測定と土器についている圧痕調べに分かれてワークを行いました。それぞれにお焦げやススがついている縄文土器片を配布し、説明をしたうえで、補助の学生が個別に指導しながら、実際の土器から測定する炭化物をそぎ落とし、四角く切ったアルミホイールに包んでナンバリングの上収納し、付着状況などを記録しました。圧痕調査の班では、何かの圧痕がついている縄文土器を探し(写真2)、圧痕に薬品を塗って洗浄し、樹脂を注射器で注入してレプリカをとりました。

 

第2回ワークショップでは、前回採取した土器付着物を、夏休みのうちに私が年代測定用に前処理し、東京大学総合博物館年代測定実験室へ持ち込んで炭素14年代測定をおこなったことを報告し、その測定方法についてパワーポイントで紹介しました。そのうえで、測定された炭素14年代値はそのままでは実際の年代ではないことと、補正して実年代を推定する「較正」という方法があることを説明しまして、実際に一人ずつパソコンでオクスフォード大学のホームページ上に公開されている計算ソフトに測定値を打ち込むことで較正年代の算出をしてもらいました。数値を入れるたびにグラフが変わり、統計的に算出された年代推定値が画面に映し出されるので、それぞれ自分が測った土器の年代が換算された数値をよみとってワークシートに記入してもらい、それが縄文時代のいつ頃の年代なのかを検討してもらいました(写真3)。圧痕調査では、前回作成した圧痕や研究室でこれまでに調査した圧痕レプリカを顕微鏡で拡大してみてもらい(写真4)、それが何かを考えてもらいました。

 

土器自体の変化から時代変化を読み散る考古学的な方法についても話をし、その研究手段の一環として、土器の文様を写し取る「拓本」作業を体験してもらいました。実際に土器の模様を画仙紙に拓墨で写し取るのは、なかなかむずかしいのですが、みな2、3回行ううちに模様が写し取れるようになり、きれいに拓本をとっていました(写真5)。それらの拓本を乾かして紙に裏打ちし、持ち帰ってもらいました。

 

以上のプログラムが終了したうえで、修了証(未来博士号)を授与し、質問などを受けて終了としました。アンケートを受講生、保護者に書いてもらいましたが、好意的な意見をいただきました。受講生からは「拓本」作業が難しいが面白かった、保護者からは最新の科学と考古学の協業による研究成果が興味深く聞けて良かったとの声がありました。なかには、今回の成果を使って自由研究に仕上げるという受講生もいました。

 

研究成果を活用する手段の一つとして、子供たちへの普及活動および考古学・科学への興味をもってもらうことは大きな意義があると考えます。来年度も機会があれば考古学における自然科学的な分析をさらにわかりやすく触れてもらうプログラムをおこないたいと考えています。

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