研究
2024(令和6)年度 中央大学学術研究奨励賞受賞者
(順不同・敬称略)
氏名 (ふりがな) 所属身分 |
研究業績等の内容(要旨) | 他機関からの受賞 ○受賞名 ○授賞機関 ○受賞日 |
奨励賞推薦理由(要旨) |
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伊藤 篤 (いとう あつし) 経済学部 教授 |
2024年9月16〜18日に開催された国際会議15th IEEE International Conference on Cognitive Infocommunications(IEEE CogInfoCom 2024)において発表した論文(Game Software Developing Platform Applying Conversational AI)が、特別賞(SPECIAL AWARD FOR AI SUPPORTED EDUCATION)を受賞しました。 この論文では、ChatGPTを用いたプログラミング学習の新しいアプローチを提案したことが評価されました。 |
〇SPECIAL AWARD FOR AI SUPPORTED EDUCATION 〇IEEE 〇2024年9月18日 |
生成系AIを利用した、プログラミング学習の新しいアプローチを提案したことが評価され、受賞につながりました。具体的には、ChatGPTを用いた、要求仕様書の作成を中心とした学習方法です。これは、学習者が、ChatGPTと対話しながら、プログラム全体の設計や構造について理解を深め、ソフトウェアを作成・公開する体験を通して、モチベーションを保ちながら学習することを目指すものです。そのために、プログラミング学習の現状と課題を明らかにし、新たな学習方法を提案し、その有効性を評価するとともに、プログラミング教育において対話型AIなどの先端技術をどのように活用すべきかについて考察を行った結果を示しました。 本研究は、2023年度に、学生の大塚あみさん、非常勤講師の佐々木陽先生と共同で行ったもので、候補者は、指導教員として、ソフトウェア工学的な観点での学習の方向づけと、論文のソフトウエア工学に関連する部分の執筆を担当しました。 候補者は、本学会での受賞だけでなく、国立情報学研究所が主催する「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム「教育機関DXシンポ」」において、2024年9月と10月の2回にわたり招待され講演を行っています。このように、本研究成果は、今後のプログラミング教育に有用な知見を与えたことから国内外で高く評価されており、ここに推薦します。 |
和田 光平 (わだ こうへい) 経済学部 教授 |
2022年に原書房から刊行された、小島宏・和田光平編『セクシュアリティの人口学』が人口学において学術上の貢献顕著なるものと認められる。 社会学、経済学、医学生理学など幅広い研究分野にわたる学際的科学としての人口学から「セクシュアリティ」という研究対象にアプローチしている。 |
〇第19回 日本人口学会賞 普及奨励賞 〇日本人口学会 〇2024年6月8日 |
上記刊行物は、性行動、交際行動、性的指向、性自認などを含む包括的概念としての「セクシュアリティ」について、多面的に人口学的実証分析を試みた意欲作であり、その社会的意義は非常に大きいと評価され、日本人口学会から表彰された。 候補者は共編者として、さまざまな研究分野に及ぶすべての章を丹念に査読して数度の内容修正に関わり、全体を体系的な学術研究書として構成されることに多大に貢献した。 |
小田 悠生 (おだ ゆうき) 商学部 准教授 |
候補者の論文"Family Unity and "Noncitizen Citizenship"は、アメリカ学会が発行する英語ジャーナルJournal of American Studiesに2023年に掲載された。本論文は、現代世界の人の移動における基本的な権利として確立されつつある家族再結合の権利・家族呼び寄せの権利の形成に関する歴史研究である。 本論文の一つの特徴は、国民・市民の権利に留まらず、市民権を持たない外国籍者の権利としての家族権に着目した点にある。今日、家族再結合の権利・家族呼び寄せの権利を、自国民に対して認めない民主主義国家は皆無である。他方、外国籍者に対しては、この権利は限定的であり、様々な制限が課されている。本論文は、移民国家であるアメリカ合衆国における外国籍者の家族権の焦点を合わせ、移民の社会統合と移民規制の相剋を論じた研究であり、歴史研究であるとともに高い現代性を持つ点が評価される。 また、本研究は、広くはシティズンシップ研究に寄与するものである。従来のシティズンシップ研究は、国民国家の主権者たるシティズン(市民・国民)という地位の境界性、あるいはその地位を持つ人々の権利や義務を中心に論じてきた。しかし、近年のシティズンシップ研究では、その射程を広げ、外国籍者の権利を含めてシティズンシップを検討する必要性が唱えられている。本論文は、アメリカ合衆国における「非市民の市民権」をめぐる歴史的議論を考察することで、さまざまな法的地位をもつ人々が共生するグローバル社会におけるシティズンシップのあり方を検討した研究である。 |
〇斎藤眞賞 〇アメリカ学会 〇2024年6月1日 |
授賞団体であるアメリカ学会はアメリカ合衆国に関する学術的研究のために1966年に発足し、会員数は1000を超える学際的な団体である。斎藤眞賞は、同学会が発行する学術雑誌『アメリカ研究』(日本語ジャーナル)とJournal of American Studies(英文ジャーナル)の過去二年間・四号に掲載された若手研究者の論文のうち、最も優れた論文に対して授与される隔年賞であり、同氏の研究がアメリカ合衆国史のみならず、アメリカ合衆国の地域研究という広い分野において高く評価されていることを示している。 |
磯村 和人 (いそむら かずひと) 理工学部 教授 |
磯村教授の単著 Chester I. Barnard: Innovator of Organization Theory (Springer, 2023)は,近代経営論の父であるチェスター・バーナードの組織理論や経営理論の成立・発展過程に焦点を当て、その思考過程を整理し、独自の見解をまとめたものである。組織の自律性や、非論理的な精神過程を強調する直感的な意思決定の理論などに加え、独自の経営者論や経営教育論にまで独自の考察を拡張している。 | 〇経営学史学会賞 著書部門 〇経営学史学会 〇2024年5月18日 |
本受賞は磯村教授の単著 Chester I. Barnard: Innovator of Organization Theory (Springer, 2023) の顕著な業績に対して授与されたものである。バーナード理論は1930年代に発表され、その後のあらゆる組織経営の礎になったものである。磯村教授はバーナード理論の成立過程と発展に関して独自の解釈を加えながら忠実かつ体系的に本書にまとめた。この業績に対して経営学史学会は最も権威ある学会賞を授与している。磯村教授の受賞は中央大学学術研究奨励賞にふさわしくここに推薦する。 |
岩﨑 有紘 (いわさき ありひろ) 理工学部 准教授 |
候補者は南西諸島に生息する海洋生物から61種の新規天然物を単離、構造決定した。そのうち39種について有用な生物活性を発見し、3種の化合物の作用機序を解明した。特にイエゾシドと名付けた化合物は、抗がん剤への応用が期待される。 | 〇令和6年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞 〇文部科学省 〇2024年4月17日 |
文部科学省では、毎年、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を、「科学技術分野の文部科学大臣表彰」として表彰している。このうち若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象とするものである。岩﨑氏は島国である日本の沿岸に生息する海洋ラン藻の未開拓性に着目し、人類が存在を知らなかった61種の新規天然物を発見し、その構造と価値を明らかにした。これらの業績は、中央大学学術研究奨励賞を授与するに値するものと考え、ここに推薦する。 |
印南 洋 (いんなみ よう) 理工学部 教授 |
本書(Understanding L2 Proficiency Theoretical and meta-analytic investigations)では、英語教育での4技能を対象とし、理論および実証研究を報告している。理論に基づいて分析結果を解釈することで、両者の融合を試みている。先行研究を体系的に収集し、結果を統計的に統合し、有意義な知見を報告している。 | 〇2024年度 日本言語テスト学会 著作賞 〇日本言語テスト学会 〇2024年10月5日 |
本賞は、「会員の著作物の出版を奨励し、外国語教育における測定と評価(テスト理論・テストの開発・妥当性の検証など広く言語テスティングに関わるもの)に関連する研究や実践を広く一般に普及することを目的とする」制度である。印南氏は8章で中心的役割を、6章および10章~12章では副次的な役割を果たした。本書を無料公開し、一部の章ではデータを公開することで、研究の透明性に努めている。 |
久留 友紀子 (くる ゆきこ) 理工学部 教授 |
投与の難しい免疫抑制剤について、限られた採血データからの予測 | 〇JPHCS誌論文賞 〇一般社団法人日本医療薬学会 〇2024年6月6日 |
久留氏は、英語教育を専門とする一方で、医療薬学分野の研究にも携わっている。JPHCS誌論文賞は、Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences (JPHCS) に掲載された論文の中で、 質に優れ、医療薬学分野の向上への貢献が著しいと選考されたものに与えられる。久留氏は、受賞論文 “Population pharmacokinetics and limited sampling strategy for therapeutic drug monitoring of mycophenolate mofetil in Japanese patients with lupus nephritis” において、筆頭著者と共に研究を取りまとめ、データの解釈と議論のセクションの執筆を担当した。 |
酒折 文武 (さかおり ふみたけ) 理工学部 准教授 |
日本計算機統計学会和文誌「計算機統計学」34巻2号に掲載された原著論文「ゼロ変形交差一般化幾何分布と卓球の打球回数への応用」が優秀と認められ、同学会の論文賞を受賞した。具体的には、卓球における打球回数の特徴である、確率変数の偶奇による成功確率の違いとゼロ過剰・ゼロ過少を柔軟に表現しうる2つの確率分布モデルを提案し、その統計的推論法、理論的性質、漸近挙動などを導いた。そして、その実用性を実データから明らかにした。 | 〇日本計算機統計学会 論文賞 〇日本計算機統計学会 〇2024年5月24日 |
日本計算機統計学会論文賞は、同学会が発行する和文誌、もしくは同学会を含む統計関連学会連合が発行する欧文誌(Japanese Journal of Statistics and Data Science)に発表された論文の中から特に優秀と認められるものに授与されるものである。受賞対象論文は共著であるが、候補者は第一著者であり、理論の全てを含む研究の主たる部分を担当した。共著者は卓球関係者であり、データ提供および卓球への応用に関する考察部分等に関わっている。 |