研究
平成26年度 中央大学学術研究奨励賞受賞者一覧
(順不同・敬称略)
氏名 (ふりがな) 所属身分 |
研究業績等の内容(要旨) | 他機関からの受賞 ○受賞名 ○授賞機関 ○受賞日 |
奨励賞推薦理由(要旨) |
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平澤 哲 (ひらさわ てつ) 商学部・准教授 |
ハイテク・ベンチャーのフィールド調査を通じて、組織アイデンティティの可塑的な変容が企業の環境適応を促すという「適応的な可塑性」という見方を発展させた | 日本経営学会賞(論文部門)
日本経営学会 2014年9月5日 |
本論文「ベンチャー企業の成長と組織アイデンティティの適応的な可塑性:持続性と流動性の意味のマネジメント」は、ベンチャー企業のアイデンティティの変容可能性と組織成長のダイナミズムを解明するため、2003年~2009年の間、ハイテク・ベンチャー企業でエスノグラフィーをおこなった調査結果からもたらされた一連の知見をまとめた労作である。 従来の組織研究においては、組織アイデンティティの持続は、組織構成員の組織的行為に安定性をもたらし組織的一貫性を生む反面で、組織的変革を妨げ組織の環境適応力を低下させると理解されてきた。しかし、平澤氏は、観察対象である企業がそのユニークなカテゴリーは維持しつつ、組織アイデンティティを可塑的に変容させることに成功したことを、日常実践の参与観察や関係者へのインタビューを通じて明らかにしている。 かくして、組織にとって、組織アイデンティティは、「持続」か「流動」か、ではなく、その組織的成長段階においては、むしろ「持続性」と「流動性」とをシンクロナイズさせることによって、組織メンバーに組織の正当性を認知させるとともに、資源獲得にも結びつけられる環境適応的プロセスとなる、というのが平澤氏の主張である。また、そのような意味で、本論文は、従来の組織アイデンティティ研究の発展に貢献するとともに、ハイテク・ベンチャー企業の成長期分析という分析対象からみれば起業家研究の分野にも貢献していると評価できよう。本論文の事例研究の一般化をめざして、更なるリサーチを期待したい。 最後に、本論文は、2014年9月に国士舘大学において開催された日本経営学会第88回大会において、日本経営学会賞(論文部門)を受賞したものであるが、論文部門での受賞は、とりわけ厳しい審査基準などが理由となり、近年見送られてきた経緯がある。そのような中で、本論文が受賞したことは快挙とも言えるものであり、中央大学の研究水準の高さを学会関係者に知らしめたことも、論文自体の優秀さとともに推薦すべき理由となっていることを記しておきたい。 |