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2018年03月19日

公開研究会開催報告(研究チーム「暴力・国家・ジェンダー」、社会科学研究所)

2018年2月24日(土)、多摩キャンパス2号館4階研究所会議室2にて、下記の公開研究会を開催しました。

 

【日 時】 2018年2月24日(土)13:00~17:30

【場 所】 中央大学 多摩キャンパス2号館4階研究所会議室2

【共   催】 社会科学研究所 研究チーム「暴力・国家・ジェンダー」

      経済研究所「思想史研究会」

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高橋 和則 氏

1.13:00-15:00  (司会 : 中島 康予 研究員)

【報告者】高橋 和則 中央大学法学部兼任講師・社会科学研究所客員研究員

【テーマ】エドマンド・バークを読むモーゲンソー

【要 旨】

 報告者は20世紀の国際政治学者モーゲンソー(Hans Morgenthau,1904-1980)が、東西冷戦初期の1948年に出版した主著『国際政治』Politics among nationsにおいて、エドマンド・バーク(Edmund Burke,1729-97)にどのように言及し、バークをいかに評価したかを追う。

 モーゲンソーはバークを政治的天才であり、ジョン・ロックとともにイギリスを代表する二人の人物であると見る。モーゲンソーは同書中、8か所バークに言及、『フランス革命の省察』からの引用はなく、『同盟国の政策についての所感』Remarks on the policy of Allies (1793)と『フランスの国情』Thoughts on French affairs (1791)から引用している。 1793年の著書で、モーゲンソーは対仏大同盟をフランスの普遍的君主制の世界支配に対する対抗連合と見なし、バークをナポレオン敗北後、大国となったイギリスの行動原理の理論的指導者と考えている。1791年の著書で、バークの中にフランスの普遍的君主制に対抗するバランス・オブ・パワーの議論を読み取っている。

2.15:10-17:30 (司会:鳴子 博子 研究員)

【報告者】土方 直史 中央大学名誉教授・経済研究所客員研究員

【テーマ】フランシス・ライトのフェミニズムの背景としてのスコットランド啓蒙思想

     ―ジョン・ミラーの女性史論を中心に―

土方 直史 氏(中央奥)

【要 旨】

 18世紀のウルストンクラフトから19世紀のJ.S.ミル(『女性の隷従』1869)までの間の19世紀前半期のフェミニズムの動向が注目されていない日本のフェミニズム研究の現状を問題視する報告者は、フランシス・ライト(Frances Wright,1795-1852)のフェミニズムに着目する。

 スコットランド・ウイッグの知的環境の下に育ったライトは、小説『アテネの数日』などいくつかの著作を出版し、アメリカで奴隷解放を目指す社会改革実験、事業を実践する。彼女の思想は三つの思想圏、三つの契機から影響を与えられて形成された。第一の契機は、ジョン・ミラーを中心とするスコットランド・ウイッグの影響、刺激であり、第二の契機はベンサムの功利主義であり、第三の契機はロバート・オウエンのユートピア社会主義との関係である。

 報告者は、近年のスコットランド啓蒙の女性史研究を紹介するとともに、ヒューム、スミス、ミラーが発展段階説の中で女性をどのように捉えたかに目を向ける。彼らは女性を商業社会のシンボルと見なし、社会進歩の尺度と位置づける。報告者は、ミラーが女性と黒人の隷属・解放を並行して論じる点を評価し、ベンサムの女性参政権の主張を彼の弱者救済、社会改革の議論と不可分のものと位置づけ、検討する必要性を強調した。

 

3.質疑応答・その他

 それぞれ約1時間の報告の後、質疑応答に移った。

 第一報告後の質疑応答では、モーゲンソーのイギリス思想理解の特徴(なぜヒュームではなくバークなのか)、『国際政治』を取り上げた理由、報告者のこれまでの研究の流れとその中で本報告の占める位置、その他多岐にわたる質問が活発に出された。

 第二報告後の質疑応答では、まず、ミラーとベンサムとのつながりの有無、エピクロスとの継承関係をめぐる疑問などがスコットランド啓蒙の研究者から出され、その後、第一報告の論点、問題とも連関させて、人民主権をどのように定着させるのか、男性の女性化をどう見るかなど、多くの参加者を巻き込んだ、より広い視野からの議論が続いた。

*研究会後、トレーノ・ノッテ(多摩センター)にて懇親会を行った。

(研究チーム記)