保健体育研究所

野外運動研究班

研究班概要

野外運動のうち、とくにスノースポーツ(スキー・スノーボード)に着目し、①事故に遭わないようするための「安全管理」のあり方や、②長期的な視点に立った「アスリート育成」のあり方について研究を進めています。
国内では、スキー場外(バックカントリー)を含めずに場内だけでも年間に十数件の死亡事故が報告されています。90年代初頭のスキーバブルを頂点としてスキーヤー人口は減り続けていますが、いまだ重大事故が減る気配は見られません。滑走用具の開発やインバウンド誘致が進むなか”安全を脅かしかねない” 新たな問題も浮上してきており、こうした課題の解決に向けた提言をすることを目的とします。
また、スキークラブチームの運営とアスリート育成に関する海外の先進的な事例を調査し、国内クラブチームの改善に向けた提言をすることを目的とします。

2023年度研究計画概要

【研究課題】スノースポーツの安全管理・安全教育に関する研究
【目的】スノースポーツ事故の分析をおこない、事故防止に向けた安全教材の開発に取り組む
【研究計画】スノースポーツ事故を扱う法律事務所の協力を得て、所蔵資料の整理・分類を行いながら電子ファイル化する。それらデータベースをもとに、事故の態様やトレンドについて検証し、安全なスノースポーツ実践のための教材づくりに役立てる。
【研究課題】米国スキー&スノーボード協会におけるアルペントレーニングシステムの運用実態とLTADに関する研究
【目的】長期的アスリート育成には計画的なプランに則った指導が重要といえるが、協会によって策定されているプランが現場のコーチにどのように伝達され、運用されているかを指導者育成の観点から明らかにするとともに、そのプランの有効性が指導現場でどのように評価されているのかを調査することで、育成プランそのものの浸透度合い、有効性を明らかにする。
【研究計画】米国スキー&スノーボード協会選手育成担当者へのATSに関するインタビュー調査と現地クラブチーム指導者に対する現場でのシステムの運用状況に関するインタビュー調査
【研究課題】スノースポーツの生理学的評価に関する研究
【目的】スノースポーツ事故の機序についてサーカディアンリズムの観点から説明する。
【研究計画】サーカディアンリズムの変数として、体温変動を測定したい。現在使用できそうな機器として、鼓膜温度測定器があるが、どの程度の精度や信頼性があるかはわからないので、予備実験として連続的な体温測定方法を模索したい。

過年度研究活動報告

2022年度

■国外調査

目的:資料収集
調査日程:2023年3月
研究課題:米国スキー&スノーボード協会におけるアルペントレーニングシステムの運用実態とLTADに関する研究
調査内容:米国スキー&スノーボード協会選手育成担当者へのATSに関するインタビュー調査と現地クラブチーム指導者に対する現場でのシステムの運用状況に関するインタビュー調査
調査地:米国ユタ州パークシティ
調査者:高村直成
上記計画は、新型コロナウイルス感染症の影響により見送りとなった。

■国内調査

目的:資料収集
調査日程:2022年12月~2023年3月
研究課題:スキー場の安全対策に関する資料収集
スノースポーツ安全教育(小学校への出前授業)の視察
スノースポーツ参加者の疲労に関する調査(安全管理の視点から)
調査内容:資料およびデータ収集、視察
調査地:北海道ルスツスキー場、新潟県南魚沼市立浦佐小学校、山梨県サンメドウズ清里スキー場
調査者:布目靖則,村井剛,永嶋秀敏

2021年度

■国外調査(資料収集)

調査日程:2021年8月
テーマ:ニュージーランドにおけるスキークラブチームの運営と LTAD に関する研究
調査目的:スキークラブ運営組織へのインタビュー調査
ニュージーランドスキー協会における育成活動プログラムについて調査
調査地:ニュージーランド南島
調査者:高村直成
※上記計画は、新型コロナウイルス感染症の影響により見送りとなった。

■国内調査(資料収集)

調査日程:2022年1月~3月
テーマ:スノースポーツ参加者の疲労に関する調査(安全管理の視点から)
調査目的:マイカー来場者(スキーヤー・スノーボーダー)の自覚疲労および平衡感覚に関するデータ収集
調査地:山梨県サンメドウズスキー場、シャトレーゼスキー場
調査者:布目靖則・永嶋秀敏

■研究成果(学会発表)

学会日本スキー学会秋季大会/日本スキー学会
日時:2021年9月11日
テーマ:「スノーボーダーの埋雪事故に関する考察
-20/21シーズンに発生した死亡事例から-」(布目靖則・渡邉仁)
「メンタルトレーニング領域における長期的アスリート育成
-U.S. Ski & Snowboard のトレーニングプランについて-」(高村直成ほか1名)
開催方法:オンライン開催(口頭発表)
学会刊行物:講演論文集あり

■研究成果(論文)

論文発表: 特集「安心・安全のスポーツ科学」のなかに掲載
掲載号: :体育の科学2月号(杏林書院) 専門誌(スポーツ科学・体育学分野)
テーマ:「スノースポーツ(スキー・スノーボード)の安全管理」(布目靖則)

2020年度

〇スノースポーツ事故裁判資料のデータベース化と事故防止に関する研究(継続)
坂東克彦法律事務所より寄贈を受けた関連資料の電子ファイル化作業を行った。また、スキー場の安全管理に関するデータ収集および解析を行った。
研究成果の一部を書籍(スキー研究-100年の軌跡と展望-;日本スキー学会編,道和書院)にまとめた。

〇ニュージーランドにおけるスキークラブチームの運営と LTAD に関する研究(見送り)
ニュージーランド南島を中心として、①スキークラブ運営組織へのインタビュー調査、②ニュージーランドスキー協会における育成活動プログラムについて調査、を実施する予定で あったが、新型コロナウイス感染症の影響にともなって、2020 年は計画を見送った。

2019年度

〇スノースポーツ事故裁判資料のデータベース化と事故防止に関する研究(継続)
坂東法律事務所より関連資料の寄贈を受け、電子ファイル化作業を行った。また、スキー場にて、安全管理の方法や実態に関する資料収集を行った。
独自に作成した「スノースポーツ重大事故データベース」を活用し、スノースポーツ重大事故に関する分析を進め、スノースポーツの安全管理と安全学習に資する基礎資料を得た。

出張日程 内容 出張者 出張先
1/22~24 スキー事故発生現場の視察および情報収集(長野 布目・武田 長野
7/7~8 スノースポーツ最新裁判に関する資料収集および研究者協議(新潟) 布目 新潟
9/7 日本スキー学会秋季大会参加および資料収集(愛知) 布目 愛知
11/25 スノースポーツ最新裁判に関する資料収集および研究者協議(新潟) 布目 新潟
12/6~9 スキー場の安全対策に関する資料収集(北海道) 布目・永嶋・村井 北海道

〇ニュージーランドにおけるスキークラブチームの運営とLTADに関する研究
ニュージーランドにおけるスキークラブチームの運営と長期的アスリート育成の実態を調査し、国内におけるクラブチームの選手育成について期待される効果と方策を検討した。
とくに南島を中心としてスキークラブ運営組織へのインタビュー調査と、ニュージーランドスキー協会における育成活動プログラムについて調査を実施した。