経済研究所

2020年2月22日(土)公開講演会 開催報告 (主催:経済研究所、共催:大学院経済学研究科、経済学部、国際経営学部)

2020年02月22日

2020年2月22日(土) 公開講演会を開催しました。

【日   時】   2020年2月22日(土)13:20~16:50

【場   所】  多摩キャンパス2号館4階 研究所会議室4

【内 容】

 

1、「工業団地の立地決定に関する考察」(国際経営学部 石川利治教授)

2、「観光都市の発展と交通」(愛知大学経営学部 神頭広好教授)

 

【要 旨】

 

2020222日(土)午後、2号館4階の研究所会議室4において、経済研究所、大学院経済学研究科、経済学部、国際経営学部の4つの組織が共同で公開講演会を開催しました。この講演会は、長年、中央大学で研究、教育の両面にわたり多くの功績をあげ、貢献してくださった石川利治先生に対して感謝の意を伝える機会として企画・実施されました。

 

 講演会のプログラムは2部構成になっていて、第1部(13:2014:50)では、石川先生のリクエストでお招きした愛知大学経営学部教授の神頭広好先生から「観光都市の発展と交通」というテーマで講演いただきました。冒頭、石川先生から、神頭先生のことを「同じ分野を専門とする2人が、大学院博士課程の修了前後、地域経済関連の学会で出会い、以降、研究において切磋琢磨してきた相手」とご紹介いただきました。

 

神頭先生は、観光都市発展に関連した定量的モデルの構築とそれに必要なデータ、諸指標、諸仮定、諸条件等の説明を行ない、モデルの推計から、政令指定都市を対象に、観光サービスの特化が進んでいる都市、相対的にそうでない都市を明らかにしてくれました。続いて、リニア中央新幹線の開通効果を予想するために、東京から沿線都市/大都市への観光・その他の目的の訪問者数の増減、沿線都市/大都市から東京への観光・その他の目的の訪問者数の増減について、ハフの確率モデルを用いて推計した結果を報告してくれました。

さらに、オーバーツーリズムのモデル化とその推計結果についても説明があり、オーバーツーリズムが発生している都市や最適なサービスを提供することのできている都市を示してくれました。講演が終了した後、複数の参加者からモデルの作り方、結果やインプリケーションの解釈の仕方等に関連した質問やコメントが出され、神頭先生は丁寧に回答されていました。

 

1部終了後、30分間コーヒーブレークの時間を設け、講演者をはじめ、20人前後の参加者が別室でお茶を飲みながら談笑しました。その後の第2部(15:2016:50)では、石川利治先生ご本人が「工業団地の立地決定に関する考察」というテーマで、最新の研究成果を披露してくださいました。

 

 石川先生からは、経済学から見た工業団地の魅力や役割について触れていただいた後、グローバル化経済における工業団地の立地分析について詳しく説明していただきました。工業団地は、複数の工場から形成されるので、工場の立地分析をまず行ない、それをベースにして工業団地の立地分析を行なうという枠組みを構築しています。それにもとづいて、Gradient Dynamics手法を用い、工場の立地点を探り、その解の存在する空間的範囲を立地有望地域と定め、この地域内でしかるべき移転価格を課して立地点を絞れば、企業は最大利潤を獲得可能であるとの説明がありました。複数の工場にとっての立地有望地域が重なる地域の中に工業団地は形成されやすいというアイディアのもとで、法人税率低下や運賃率低下の工業団地の立地選択に対する影響の分析が行われました。工業団地は集積経済を提供することができるので、その集積経済が十分に大きければ、立地有望地域の重複地域以外の地点でも工業団地の立地の可能性があることも示してくれました。

さらに、都市間および地域間のネットワークから外部経済が生じ、工場がこれら利益を享受できるということを前提として、これらのネットワーク経済が工業団地の生産活動にどのように作用するのかについての試験的な分析も紹介されました。最後に、結論として、1)工業団地の立地決定には一定の許容地域があり、その中ではさまざまな経営主体が立地決定に介入する機会をもつことが可能である、2)地域経済の観点から、中央政府/地方自治体も地域開発政策を通して工業団地の立地決定に介入する機会をもつことが可能である、3)ネットワーク経済は、集積経済を通して、地域における生産活動の構成にさまざまな影響を与えている可能性がある、という3点で講演をまとめてもらいました。フロアーから出されたいくつかの質問に対して、丁寧で、詳しい回答がなされました。

 

Q&Aセッションが終了した後、経済学部の後藤孝夫先生から経済学論纂の古稀記念号(石川先生退職記念論文集)が、4つの組織を代表して、経済研究所職員から石川先生に花束が贈呈されました。それらに対して、石川先生からのメッセージをいただき、公開講演会の最後は、大学院経済学研究科委員長の阿部正浩先生から石川先生に宛てての感謝の言葉が伝えられ、閉会となりました。