経済研究所
2019年11月25日開催 公開研究会開催報告 (「中国政治経済研究部会」、共催「現代政策研究会」)
2019年11月25日
2019年11月25日(月)研究所会議室2で、公開研究会を開催しました。
時 間 : 10:00~12:30
内 容 : 趙 学軍 氏 (中国社会科学院経済研究所研究員、中国現代経済史研究室主任)
「新中国の経済発展モデルの変遷」
隋 福民 氏 (中国社会科学院経済研究所研究員、中国現代経済史研究室副主任)
「中国の農業現代化に関する考察」
于 文浩 氏(中国社会科学院経済研究所副研究員)
「中国のイノベーションシステムに関する考察」
使用言語: 中国語(部分通訳あり)
【要 旨】
3人の報告者は、中国社会科学院経済研究所において中国現代経済史の研究に従事する研究者であり、報告内容は、新中国70年を経済運営、農業・農村振興、科学技術・イノベーションの観点から振り返るものであった。各報告内容は、近刊の書籍として発表される予定である。
第1報告の「新中国の経済発展モデルの変遷」において、趙 学軍氏は、1949年の新中国誕生から2019年までの70年間にわたる中国の経済発展過程を3期に分けて歴史的かつ理論的な整理を行った。第1期は、経済の基礎を建設した1949~1978年の期間であり、社会主義制度、工業体系を中心とする国民経済体系、政府主導の計画体制を特徴とする。第2期は、経済水準の向上を目指した1978~2012年の期間であり、社会主義市場経済、人的資本蓄積、グローバル経済への参加、政府主導の市場体制を特徴とする。第3期は、高速成長から高質成長への転換を進めている2012~2019年の期間であり、様々な不均衡に対応・対処すべく、供給構造改革、現代的経済体系建設、リスク・貧困・環境汚染の削減推進、全面的開放が進行している。高質成長下でも、市場体制のもとで政府が主導的役割を果たすことが求められている、と趙氏は結論する。
第2報告の「中国の農業現代化に関する考察」において、隋 福民氏は、新中国70年に及ぶ中国の農業発展と農村振興戦略について整理した。まず超長期にわたる農業の発展過程を概観し、経済における農業の比重や役割について、主要学説と関連付けながら整理した。隋氏によると、農業発展過程は4段階に分かれる。すなわち、農業が経済の中心を占める第1段階、農業が非農業部門の発展を支える第2段階、付加価値と就業に占める農業のシェアの差が縮小し、就業に占めるシェアが5割まで縮小し続ける第3段階、就業に占める農業のシェアが15%以下となり、農業生産率と非農業労働率が一致し、平均GDP水準が高くなる第4段階である。2004年までの中国は、第1段階と第2段階にあり、2004年から第3段階にはいっている。第4段階に入るのは2035年頃であり、この頃には高収入国家となり、就業シェアが15%程度となる。報告の最後で、隋氏は、農業の労働生産性を高めるには、一般に言われる規模拡大ではなく、農業経営の多様化・近代化を進めることが重要であると結論した。
第3報告の「中国のイノベーションシステムに関する考察」において、于 文浩氏は、改革開放以来の40年に及ぶ中国の科学技術政策を4期に分けて整理した。第1期は1978~1984年の期間であり、この期間の政策は、政府計画型で、海外の成長(成功)技術を導入・模倣することを特徴とした。第2期は1985~1994年の期間であり、この期間の政策は、政府主導型でイノベーションを重視し、いわゆる市場と技術を交換し、模倣することを特徴とした。第3期は1995~2005年の期間であり、この期間の政策は、市場誘導型自主的イノベーションを推進する過渡期としての特徴を持った。第4期は2006~現在までの期間であり、この期間の政策は、市場誘導型自主イノベーションの展開過程であり、統合イノベーション、二次イノベーション、共同イノベーション、原始的イノベーションの4つが並行して進展している。報告の最後に、于氏は過去のイノベーション政策を振り返り、重要な要因として、対外開放の影響や科学技術体制改革などを挙げ、今後は、研究開発経費に占める基礎研究費の比率を高め、企業の科学技術導入経費の割合を高めるべきであると締めくくった。
3氏の報告内容は、中国の現代経済史を簡潔かつ的確に整理したものであり、参加者は、3氏の報告から、中国経済の発展過程の概略を明確に把握することができた。
研究会の様子
趙 学軍 氏
于 分浩 氏
隋 福民 氏