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2019年11月18日

2019年11月18日開催 公開研究会開催報告 (「中国政治経済研究部会」、共催「現代政策研究会」)

2019年11月18日(月)研究所会議室2で、公開研究会を開催しました。

時    間   :  13:30~17:30

内 容   :  祁 勇(山東師範大学公共管理学院・准教授)

      Targeted Poverty Alleviation: The China Story and Its Global Significance

      趙 徳興(山東師範大学公共管理学院・講師)

      The Reorganization of Social Governance Unit under the Condition of Big Data:

       An Observation from China

      王 娜(山東師範大学公共管理学院・講師)

      The Impact of Housing Prices on City Economic Development: Based on Panel

      Data  Analysis of 285 Prefecture-level Cities in China

      西村 友作(対外経済貿易大学国際経済研究院・教授)

     「キャッシュレス国家:中国の現状と課題」

 

使用言語:   中国語(部分通訳あり)

 

【要 旨】

 

講演会の前半では、中国政治経済研究部会および現代政策研究会の主要メンバーと山東師範大学公共管理学院(山東省済南市)の主要メンバーの間で年2回のペースで過去数年にわたって日本または中国で実施してきた国際共同研究会(テーマ「デジタル経済における公共ガバナンス」)を開催した。今回は、山東師範大学の主要メンバーが本研究所で研究発表する機会を設けた。

1報告の祁 勇氏(山東師範大学公共管理学院・准教授)「Targeted Poverty Alleviation: The China Story and Its Global Significance」では、中国における農村貧困対策の歴史と最近の目標について包括的な整理が行われた。中国では、改革開放以降の経済発展とともに農村貧困人口が激減した。その過程で中国政府は、貧困基準を何度か上方改定し、徐々に国際水準に近いものとなり、2020年には農村貧困人口の解消を目指している。中国における貧困削減は、国連のSDGs(持続可能開発目標)における貧困削減目標に大きく貢献した。祁氏の報告は、こうした中国農村貧困対策の歴史と過程を丁寧に跡付け、途中でどのような問題が発生し、どのような対策が講じられてきたかを論じたものである。

2報告の趙 徳興氏( 山東師範大学公共管理学院・講師)「The Reorganization of Social Governance Unit under the Condition of Big Data: An Observation from China」では、5G、ビッグデータやIoTによってデジタル経済が進展する中で社会的ガバナンスをどのように確保するかという野心的なテーマを取り上げた。趙氏は、ネット・コミュニティでは「権力の欠如」という問題が発生し、それを解決する仕組みとして社会的ガバナンス構造や社会的ガバナンス・ユニットが必要であり、そのためには党の指導、政府の役割、多様な参加などが重要であるとする。

3報告の王 娜氏(山東師範大学公共管理学院・講師)「The Impact of Housing Prices on City Economic Development: Based on Panel Data Analysis of 285 Prefecture-level Cities in China」では、住宅価格の上昇が経済成長に及ぼす影響についての分析が紹介された。従来の分析では、全国ベースのデータに基づき、住宅価格と経済成長の関係を論じてきたが、王氏は285の県(都市)レベルのパネル・データに基づき、住宅価格の上昇が都市の経済成長を促進し、住宅価格格差の拡大が都市の経済格差を拡大させるなどの分析結果を得た。

以上の3件の報告後には、最近の貧困対策の内容と意義、社会的ガバナンスにおける市場と政府の役割、経済発展が住宅価格上昇をもたらす可能性などについて質疑応答が行われた。

講演会の後半では、中国経済やデジタル経済の動向に詳しい対外経済貿易大学(北京市)国際経済研究院・教授の西村友作氏による講演会を開催した。西村教授の報告テーマは、「キャッシュレス経済圏の ビジネスモデル」であり、キャッシュレス化をめぐる中国経済の最新動向から、そこに見られる経済行動を分析し、そのプラス・マイナス面を抽出し、将来の方向性を探ろうとしたものである。

西村教授は、中国経済の最近の動向を「中国新経済」と表現し、それはスマホに搭載された決済アプリをプラットフォームとして活用することで巨大なエコ・システム(生態系)が広がる世界であると特徴づける。決済アプリは、買う・食べる・移動する・遊ぶなど、生活の隅々にまで広がり、スマホ決済の利用者数や決済金額は急増している。

西村教授は、スマホ決済や急増した背景として、クレジットカードなどの金融インフラが脆弱であったこと、アリババやテンセントなどの企業努力と競争があったこと、現金利用の使い勝手が悪かったことを挙げる。それを踏まえて日本でキャッシュレス化が発展するかどうかのカギとなるのは地方と中小零細企業であるとして、中国で普及したコード決済が普及のけん引力となりうることを指摘した。

さらに西村教授は、シャッシュレス化の具体的展開として、アリババ・グループにおける信用のスコア化、オンライン理財商品の「余額宝」、オンラインクレジット決済の「花唄」のビジネスモデルを説明し、その構造的特徴を明らかにした。それに関連して、間違った認識が蔓延していることに警告し、将来的な可能性に言及した。最後に、こうした先進的、野心的なサービスが国民にどう受け止められているかを取り上げ、一定の社会的支持があることを明らかにした。

質疑応答では、デジタル通貨発行の可能性、詐欺等の犯罪が生じる可能性やその対策、普及上の様々な問題点について質問が行われ、西村教授はそのひとつひとつの丁寧に回答された。参加者は、西村教授の講演を聞くことで中国経済の最新動向を知り、その発展の要因や今後の可能性について考える良い機会を得ることができた。