経済研究所

2019年7月31日開催 公開研究会開催報告 (現代資本主義分析研究会)

2019年07月31日

2019年7月31日(水) 公開研究会を開催しました。

【テーマ】 新中国70年における経済発展の理論と実践

【報告者】 陳 楽一(湖南大学教授)

【日   時】 2019年7月31日(水)15:00~18:00

【場   所】 中央大学多摩キャンパス 2号館4階 研究所会議室2

【要 旨】

 報告の前半では、1949年の中華人民共和国建国以来70年を、計画経済時代、1978年以降の改革開放第1期、21世紀に入って以降の改革開放第2期に分け、マクロ経済統計データを用いて、景気変動の性格とその変容から、中国経済発展の経緯について説明された。計画経済時代はGDPの変動が大きく、景気拡張期より収縮期の方が大きく停滞的であった。改革開放後には、物価変動とGDP動向が連動するようになり、景気拡張期間を中心に景気波動の周期が長くなり、顕著な経済発展がみられるようになった。経済発展を、制度要因・政策要因・供給要因・需要要因に分けて要因分析すると、国有企業の民営化・対外開放などの制度要因、貨幣供給や財政支出などマクロ経済政策の実施、労働力および資本ストックの供給量が大きな影響を及ぼしたことが明らかになった。

 報告の後半では、上記の経済発展の経緯と並行して展開した、中国の経済学研究の経緯について説明された。計画経済時代はソ連型モデルが経済発展の重要な要素とされたが、孫治方や願准は計画経済と価値法則に関連する研究を発表し、後の社会主義計画経済の理論的先駆を成した。1978年に改革開放政策へと転換した後、1980年代にはトービンやコルナイなど世界的経済学者を招聘した討論会議などが実施され、改革開放政策や社会主義市場経済など、中国の経済発展のあり方にかかわる理論的研究成果が飛躍的に発展した。このように、中国の経済学の発展は、中国共産党の会議、とくに三中全会と大きくかかわっていること、さらに中国経済の発展は経済学の発展にもつながっていた。また、中国経済学会の現状と課題についての報告もあった。

 質疑では、中国の経済発展における産業構造転換のスムースさ、その際の中国政府・共産党の産業構造政策の先見性、現代中国経済学会におけるマルクス経済学の位置、現代中国における毛沢東理論の評価、などについて活発な議論が行われた。