Eventイベント

人文科学研究所

人文科学研究所主催公開研究会開催のお知らせ(「幻想的存在の東西」チーム)

日程
2023年5月20日(土)13:00~14:30
場所
オンライン会議システム(Webex)
日程
2023年5月20日(土)13:00~14:30
場所
オンライン会議システム(Webex)
内容

報告者 : 篠田 知和基 氏(名古屋大学文学部元教授)

 

テーマ : 世界失墜神話をめぐって

 

要 旨 : ギリシア神話によると、ウラノスはその子クロノスによって、性器を切り取られて天の果てに追いやられた。そのクロノスはゼウスによって地の果てにおとされた。メソポタミアではアヌがエンリルによって位を追われ、エンリルはマルドゥクによって取って代わられた。アステカでも天空神は交代し、ケツアルコアトルは、位をおわれて、いずくともなく消え去った。日本でもアメノミナカヌシは姿を隠し、アマテラスが高天原の天空に輝いた。そしてトヨアシハラミズホの国を治めるにはニニギノミコトが天孫降臨という美名のもとに地に落とされた。かぐや姫も天空で罪をおかして地上へおとされた。もちろんルシファーをはじめとする堕天使が落ちてくる。ギリシア神話では鍛冶神ヘーパイストスが母親にうとまれて、地上におとされた。

天使が落ちてくる話では、アナトール・フランスに「天使の反逆」があるが、人間の転落についてはカミュに「転落」がある。あるときセーヌ川をわたっていると橋げたから川面を見つめている女がいて、しばらくして誰かが水におちる音がした。「転落」の主人公はそのときなにもしなかった。なにかするべきだった。それなのになにもしなかった罪障感に男はさいなまれる。今度は彼が転落する番だった。落ちてゆく人間の話はゾラも「居酒屋」で描いた。屋根職人のクーポーは屋根からおちていらい仕事も休みがちになり、酒におぼれる生活に陥った。得意の絶頂から奈落の底へおちたジャーナリストの話は、バルザックが「幻滅」に描いた。それら落ちた神と人間の転落の物語を語るとともに、神の沈黙にも触れた。神としての務めをはたさず、人が残虐に殺されてゆくのをなにもせずに手をこまねいて見ていた神は、神として失墜していたのではないだろうか。

アウシュヴィッツで、広島で、神はどこにいたのだろう。その神の失墜の予兆は落とされた神ヘーパイストスの神話のなかにすでに語られていたのではなかったろうか。

 

【参加方法】

ご希望の方は、5月19日(金)までに

件名:5/20(土)公開研究会参加申し込み

内容:・氏 名

   ・ご所属、ご身分

   ・メールアドレス を記載し、

渡邉研究員<wkoji☆tamacc.chuo-u.ac.jp>までご連絡ください。
※☆を@に変更してから送信してください。

【注意事項】
・参加には アプリのダウンロードが必要になります。
・レクチャー中の録音・録画はお控えください。

参加費

無料

企画実施名義

主催:人文研チーム「幻想的存在の東西