研究

八王子市図書館との共同研究公開成果報告会を開催しました。

2019年07月30日

 2019年7月6日(土)、八王子市中央図書館にて、中央大学と八王子市図書館との共同研究公開成果報告会を開催しました。

 この共同研究は、2017年4月に本学と八王子市が締結した包括連携協定に基づき、2017年度より本学文学部・小山憲司教授を代表とする研究チームと八王子市図書館部が、「八王子市における図書館整備および図書館関連教育の向上をはかることを目的とし、「読書感想文および図書館利用実態に関する研究」と題して実施しています。

 今回の公開成果報告会では共同研究2年目となる2018年度の研究報告として、4名がそれぞれの研究成果を報告しました。

       青木 優大さん

八王子市図書館を対象とした図書館評価のためのデータ分析・第2報

【報告者】青木 優大(中央大学文学研究科博士前期課程2年)

 

八王子市の各図書館における貸出数等のデータをもとに、年齢別の貸出状況や八王子市のエリア別の貸し出し状況等について分析した結果を報告しました。貸出数は人口変化に大きく影響を受けていることも示唆し、今後さらに利用者の具体的な実態を明らかにしていきたいとの方向性も示されました。

       飯尾 淳 教授

図書館利用データの利用者層・地域別分析

【報告者】飯尾 淳(中央大学国際情報学部教授)

 

八王子市図書館の登録・利用・貸出に関するデータと八王子市の地域・年齢別人口データを掛け合わせて分析し、八王子市のエリア別利用状況や世代別利用状況について分析した結果を報告しました。各図書館に近い地域の来館者密度が高く、離れるほど低くなっていくという実態や、世代別の登録・利用率では子ども層の数値が高いという傾向を明らかにしました。また、今後シニア層の図書館活用をどのように支援すべきか、という課題も提示しました。

       長谷川 幸代 講師

図書館アンケート調査から見る利用状況と課題

【報告者】長谷川 幸代(中央大学文学部兼任講師)

 

図書館の利用者アンケート調査結果を分析し、図書館の利用実態や課題について報告しました。たとえば、図書館の資料充実度に対する不満は単純に蔵書・資料数の問題だけでなく、求める資料にたどり着けない状況も関連していることを指摘しました。また、今後利用者アンケートの表面的な結果だけでなく、利用者の潜在的なニーズをどのように把握するか、という課題を提起しました。

       小山 憲司 教授

読書感想文コンクール対象作品とその特徴―平成28年度および29年度中学校の部の比較を通じて―

【報告者】小山 憲司(中央大学文学部教授)

 

八王子市読書感想文コンクールの応募作品を分析し、読書感想文の対象としてどのような書籍が選ばれているのかという傾向を明らかにしました。その中で映像化された作品や学校での情報提供、出版形態として文庫本であること等が本の選定に大きく影響している点を明らかにしました。また、各年代に合わせた作品の提示や子どもたちの成長を促すような作品の選び方を提案することの必要性を指摘しました。

報告会の最後には、八王子市図書館部の佐藤宏部長より講評があり、共同研究によって明らかになるデータや分析を今後も蓄積していくことで、今後の図書館政策に対して何らかの可能性を示唆できる取組みであり、また大学と行政との連携事業としてモデルケースにもなれるように今後も進めていきたいとの所信が述べられ、盛会のうちに終了しました。