経済研究所

【経済研】『ディスカッションペーパー』No.430 (篠原正博研究員『ニュージーランドのGST −2000年代以降の議論の動向と課題−』)を発行しました

2026年9月7日に発行された『ディスカッションペーパー』No.430を学術リポジトリで全文公開いたしました。

論文名:ニュージーランドのGST−2000年代以降の議論の動向と課題−

執筆者:篠原 正博研究員(中央大学経済学部)

キーワード:ニュージーランド、税制改革、GST

要 旨:

 筆者は、篠原(2021a;2021bにおいて、GST導入の背景および導入時における制度設計の議論を明らかにした。そこでは1980年代の議論が中心であったが、本稿では以上を踏まえて、2000年代以降におけるGSTの議論に焦点を当て論点を整理したい。その際、もっぱら2000年代に入ってから公表された4種類の報告書(McLeod(2001a;2001b)Victoria University of Wellington Tax Working Group2010a;2010b)、Tax Working Group (2018b;2019)Inland Revenue(2026))に注目する。これらの報告書では、広く国民の意見を聴取したうえで、GSTの課題がまとめられ、それに対する見直し案が提示されている。また、税務当局の立場からGSTの制度細部に関する課題提起がなされ、パブリックコメントに付されている。

政府報告書での議論およびその後の税制改正の動向を概観すると、税制改革におけるBBLRの基本理念の下で、GSTについては単一税率および課税ベース拡大の方針が堅持されている。経済のデジタル化に伴う制度変更もこの方針に沿ったものであり、基本的制度設計の大枠は導入時点のものから大きく変化していないと言える。導入以降、意見公募を目的とする報告書が内国歳入庁により度々公表されており、そこに寄せられた意見を制度改正に反映する努力が行われている。長期的視点からは、人口の高齢化等の要因に伴う歳出の増加に対して、税制がどのように対応するかが重要な論点である。GSTの増税を行う場合、逆進性への対応が不可避の課題となろう。

ニュージーランドはイギリス連邦に属しているが、GSTの制度はイギリスをお手本とすることなく、むしろ反面教師として設計された。同国が採用した「広い課税ベースかつ単一税率」の優位性は、イギリスの付加価値税制を検討したマーリーズ・レビューでも指摘されている。

ニュージーランドGSTは諸外国の付加価値税の制度形成に大きな影響を与えてきており、また将来的にも与えるであろうことが予想される。したがって、今後もその動向を注視する必要があろう。

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