研究推進支援本部

URA報告:第9回JINSHA情報共有会「責任ある研究評価を考える」に参加

2021年02月15日

人文・社会科学系研究推進フォーラムは、人文社会系の研究にかかわる研究者やURA・事務系職員等が、よりよい研究推進のあり方をともに議論し、ともに行動することを目指して2014年に発足されました。研究支援室は幹事校として、2019年よりフォーラムに参加しています。2021年現在、幹事校は大阪大学、筑波大学、琉球大学、京都大学、早稲田大学、横浜国立大学、本学、広島大学です。

 

第9回目は京都大学が幹事となり、2021年2月5日に「責任ある研究評価(Responsible Research Assessment/RRA)」をテーマに情報共有会を開催しました。RRAは被引用論文数などの定量的評価指標に偏りがちな研究評価の見直しを求める国際的動向をふまえて、「多様で包摂的な研究文化のもとで、複数の異なる特性を有する質の高い研究を促し、把握し、報奨するような評価のアプローチ(※1)」を指します。これまでに研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)がジャーナル・インパクト・ファクター(JIF)の限界を指摘したり、英語以外の言語の優れた地域的研究の保護や定性的評価と定量的評価を併せて検討するなどの10の原則をもりこんだライデン声明などの動きなどが研究評価の見直しの動きとして見られてきました。

 

当日の講師陣からは国際的な動向の話題提供がありました。そこでは、JIFに代表される狭い評価基準がハイリスクで創造的な研究から研究者を遠ざけ、彼らの志気や研究の多様性を下げていること、そして(ノーベル賞の対象になるような)真に重要な学術成果は長期的な研究から生まれることが多く、短期的で市場価値を重視する評価の対象から漏れるリスクがあることなどが言及されました。また、コメンテーターの後藤由季子氏(東京大学大学院医薬学系研究科・教授)からは、生命科学の分野ではインパクトファクターの高いジャーナルに載ることが業績の評価につながる、そしてそのようなジャーナルが多量の精緻なデータを要求するという環境から、要求される実験のやり直し・論文の書き直しを何度も行うことで研究者が疲弊し、それが研究不正という結果につながる問題が指摘されました。全体的なまとめとして、被引用論文数を研究評価指標として活用しつつ、定性的な研究評価も同時に示すことが必要であり、ジャーナル出版社・アカデミア・大学や研究機関を評価する組織が包括的に責任のある研究評価を検討していくことが必要であるということが言われました。

 

※1 訳文と追加コメントは、林隆之氏「研究評価の現状とオープンアクセス/オープンサイエンス」「科学技術・学術審議会情報委員会ジャーナル問題検討部会(第9回)」報告資料、令和2年12月22日