社会科学研究所

公開研究会「フランスの女性思想 -ボーヴォワール、クリステヴァ、イリガライを中心に-」開催報告(社会科学研究所)

2016年10月12日

講師 棚沢直子氏

2016年9月24日(土)、多摩キャンパス第一共同研究室にて、下記の公開研究会を開催しました。

 

【テーマ】 フランスの女性思想 - ボーヴォワール、クリステヴァ、イリガライを中心に -

【講 師】 棚沢 直子 (東洋大学名誉教授、フランス研究者)

【日 時】 2016年9月24日(土)15:00~18:30

【場 所】 中央大学多摩キャンパス第一共同研究室(21061)

【主 催】 社会科学研究所 研究チーム「暴力・国家・ジェンダー」/共 催:経済研究所「思想史研究会」

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 1970年代のフランス・ウーマン・リブ運動MLFの誕生からその二大分裂まで、にはじまり、フランスの女性思想家の中心的存在であるボーヴォワール(『第二の性』)、クリステヴァ(『恐怖の権力<アブジェクション試論>』)、イリガライ(『検鏡』)のそれぞれの思想の特質が紹介され、さらに、ボーヴォワールの後継者にしてマルクス主義者のデルフィ、そしてシクスー、コフマン、コラン、ペロー、性社会関係社会学の創立者たちと続く。こうした女性思想家それぞれの思想が語られるとともに、それらの布置constellationがダイナミックに、かつ丹念に解説され圧巻であった。

 これらの女性思想と男性思想家たち(たとえば、構造主義四天王やポスト構造主義のデリダ)との関係、あるいは、フランスの女性思想がアメリカ経由で日本に紹介されたことによる問題、弊害の指摘、西欧の普遍主義を批判する視点の重要性、最後に日本からの発信の可能性(世代関係論、世話労働論等)への言及で報告は締めくくられた。

 このように、フランス滞在を繰り返し、長期にわたって研究活動をされてきた第一人者の講演は、フランス研究者、女性思想研究者にとっても、専門を異にする者にとっても、学ぶことの多い、豊かで有益な報告であった。

 当日は、あいにくの雨にもかかわらず、中大関係者を上回る外部の参加者、遠方(京都、川越など)からの参加者もあり、報告(60分→90分)も質疑応答も予定の時間を延長して行われ、盛会であった。(主催チーム 記)