社会科学研究所活動報告(2015年度研究チーム)

2015年度研究チーム

「3.11以降の『惑星社会』」

本研究チームは,「ヨーロッパ研究ネットワーク」の活動を基盤に,"惑星社会の諸問題を引き受け/応答する(responding for/to the multiple problems in the planetary society)"ことを目的として発足した.「3.11後」ではなく「3.11以降」という言葉の背景には,《日本社会とそこに生きる私たちの「状況・条件」は,「震災,津波,原発事故」で変わってしまったのではなく,"多重/多層/多面の問題群(the multiple problems)"は,「3.11以前」にも「客観的現実のなかにすでにとっくに存在」し,「3.11」はその問題が顕在化する契機となったに過ぎない》という見方が在る.「社会的行為のためのグローバルなフィールドとその物理的な限界」という二重性を持つ"惑星社会"で生起する"多重/多層/多面の問題"の意味を把握するために,ヨーロッパ,地中海,大西洋,日本,アメリカなどの各地でのフィールドワークからの知見を持ち寄り"惑星社会"という現在を生きる人間の"生存の在り方(Ways of being)"と社会の構成のされ方を見直すことを企画した.

【研究活動】

1. 研究会:2015年5月9日~10日,7月23日,8月5日~7日,2016年3月30日

報告者:新原道信,野宮大志郎,天田城介,鈴木鉄忠,阪口毅,友澤悠季

テーマ:惑星社会の諸問題を引き受け/応答する"惑星社会のフィールドワーク"

要約 :幹事の基調報告と他のメンバーによる報告・議論を行い,「"境界領域"のフィールドワークから"惑星社会の諸問題"へ」というテーマの深化につとめた.

2. 講演会:2015年7月23日

テーマ:炎上するフィールド・コロンビアにおける解放と抵抗

講師 :ルイス・エスパルザ(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教員)

要約 :"惑星社会の諸問題を引き受け/応答する(responding for/to the multiple problems in the planetary society)"という観点から,講演と議論を行った.

【研究調査】

1. 調査期間:2015年8月9日~11日,8月17日~19日

調査地域:京都府京丹後市,宮城県松島地区

出張者 :新原道信

要約  :「3.11以降」の日本の地域社会で生起しつつある"惑星社会の諸問題"の実態調査を行った.

2. 調査期間:2016年3月7日~3月11日

調査地域:沖縄県那覇市

出張者 :新原道信,中村寛

要約  :「3.11以降」の日本の地域社会で生起しつつある"惑星社会の諸問題"の実態調査を行った.

【その他】

 3年間の研究成果を『うごきの場に居合わせる―公営団地におけるリフレクシヴな調査研究―』(中央大学出版部)として,2016年3月に刊行した.

「グローバル・エコロジー」

「グローバル・エコロジー」チームは,2015年度は,研究会の開催による研究活動と,チームメンバーによる合宿研究会を実施した.合宿研究会では,報告書作成に向けて,チームメンバー全員から執筆のテーマと内容に関して報告してもらった.またゲストスピーカーを招いて,ミャンマーとインドネシアの現地での環境問題に関する調査について報告して頂いた.この研究チームは,地球環境問題全般について,世界各地での取り組みを研究・調査することを目的にしているので,本年度の研究活動においては,ヨーロッパとアジアの環境問題についての認識を深めることができた.

【研究活動】

1. 公開研究会

日時 :2015年7月30日(木) 15:00~17:00

場所 :多摩校舎2号館4階研究所会議室3

報告者:市川伸子(欧州復興開発銀行・環境アドヴァイザー)

テーマ:グローバリズムの下,国際機関からみたヨーロッパの環境政策

要約 :市川氏は,欧州復興開発銀行で長年活動していた経験から,融資と環境問題との関連で,とりわけ中東欧諸国への融資と環境問題について事例を挙げて説明して頂いた.

2. 研究会(合宿研究会)

日時 :2016年3月29日(火)~ 3月31日(木)

場所 :湘南国際村センター

報告者:星野智,上原史子,臼井久和,内田孟男,鈴木洋一,滝田賢治
波多江秀枝(EoEジャパン)

テーマ:各メンバーの報告書のテーマについて

ゲストスピーカーによる報告:①ミャンマー・ティラワ経済特別区開発事業
②インドネシア・バタン石炭火力発電所

要約 :気候変動のガバナンス(星野),グローバル・エコロジーの実情をヨーロッパから考える(上原),地球の環境破壊と軍事活動(臼井),気候変動と地球環境ファシリティー(内田),再生可能エネルギー導入をめぐる誘因と課題(鈴木),再生可能エネルギーの多様化(滝田),ミャンマーのティラワ開発事業と環境への影響およびインドネシアのバタン火力発電所と環境への影響(波多江)

「政治的空間における有権者」

研究チーム「政治的空間における有権者」では,有権者の選挙行動,政治意識に関する理論研究,実証研究を多角的なアプローチから行うことを目的としている.2015年度は,各研究員がそれぞれの研究テーマに即して,理論的,実証的研究を遂行した.

【研究活動】

公開研究会 2015年10月30日(金) 13:30~15:00

場所 :多摩校舎2号館4階研究所会議室2

報告者:塩沢健一(島根大学准教授)

テーマ:「大阪都構想」を巡る住民投票(24行政区レベルのデータ等から見た大阪市の住民投票)

要約 :2015年5月に実施された「大阪都構想」をめぐる住民投票について,大阪市内24行政区レベルの集計データを主として用い,基礎的な分析を試みた.都構想や橋本に対する支持は,高齢化率の高低によって,行政区ごとの傾向が規定される面がある一方で,都構想への反対投票および2011年市長選時の平松への投票については,高齢化率との相関は見られない.年代別投票率の比較も踏まえて考慮すると,住民投票の反対票は主として,若年層を中心とした投票率の上昇分によって積み上げられたと推論しうる.少なくとも,ダブル選挙との比較においては,住民投票で巷間言われた「シルバー民主主義」論は,限定的にしか妥当しない.

「情報社会その成長の記録」

情報(IT)および情報産業の進展において,現在のITを支えるオープンソース・ソフトウェア(OSS)関連技術は1980年代後半から2000年代にかけて大きく発展した.2000年代以降は各種の記録がまだ残されているが,大きく発展した80~90年代の記録があまり残されていない点が問題となっている.
 そこで,本プロジェクトは,当時各方面において活躍していたキーマンを訪問し,インタビュー調査を行うことで当時の状況の記録を作成し,発展の状況を明文化することを目的とする.昨年度作成した訪問対象リストをさらに発展させ,10名を超える対象者を訪問,当時の状況に対する事情聴取を実施した.また,現在活動しているOSS関連コミュニティとも連携し,当時を振り返り歴史を確認するための活動を業界横断的に拡げる作業にも着手した.

【研究活動】

研究会:2015年11月27日(金)

報告者:佐渡秀治(OSDN株式会社 代表取締役社長)

テーマ:オープンソースの日本への導入―ビジネスの視点から―

概要 :1990年代から2000年代初期にかけて,OSSを活用したビジネスを日本に根付かせるための業界の動向とポイントについて,OSDN社の取り組みを振り返りつつ,報告した.

報告者:鈴木大輔(有限会社ヴァインカーブ 代表取締役社長)

テーマ:オープンソースの日本への導入―コミュニティの視点から―

概要 : 同年代のOSS関連業界動向について,産業界側のアプローチと連携しつつ対応した状況も含め,当時のコミュニティ活動がどのように行われていたかについて,主として報告者が中心となり進めていたVine Linux関連の活動をふまえ,報告した.

【調査研究】

調査期間:2015年10月23日(金)~10月24日(土)

調査地域:北海道札幌市

出張者 :飯尾淳,風穴江,八田真行

要約  :大手SI企業で1990年代にOSS関連業務,とくにソフトウェアの国際化に従事していた当時の担当者を訪問,インタビュー調査を実施した.

「『信頼感』の国際比較研究(2)」

2015年度は主として,1980年代後半に民主化を遂げ,その後グローバリゼーションの下で経済社会の変動を経てきた中欧のスロヴァキアと東亜の台湾を対象として,「社会的信頼」の諸相を地域社会変動との関わりで検討を進めた.この文脈でスロヴァキアと台湾の研究協力者による公開講演会を実施した.また「信頼感」の高レベルの国としてノルウェー(World Values Surveyにより高レベルにランク付け)を選び,既に調査済みの8カ国と合わせて9カ国について体系的比較研究を遂行するため,同国の調査機関(IPSOS)に委託してオムニバス方式による全国調査を実施した.

【研究活動】

1. 公開講演会: 2015年12月7日(月)

講師 :張家銘(台湾 東呉大学教授)
ラヂスラフ・キシェリャーク(スロヴァキア プレショウ文化会館長)

テーマ:グローバル化と地域振興:中央と台湾の経験

要約 :台湾小都市における産業変動と地域振興,スロヴァキアの地方社会における民俗文化の伝承とその変容に関する報告と討議.

2. 公開講演会:2016年3月18日(金)

講師 :リュボミール・ファルチャン(スロヴァキア科学アカデミー付属社会学研究所主任研究員)
スデニェク・シチャストニー(同 元主任研究員)
佐々木正道(元文学部教授・社研客員研究員)
吉野諒三(統計推理研究所調査科学研究センター長・社研客員研究員)

テーマ:グローバル化の中のスロヴァキア地方都市社会と人々の社会的信頼

要約 :国際共同調査研究の結果を基にしたスロヴァキアの地方小都市の政治・経済・社会変動と住民生活における社会的信頼の諸相の分析と総括.また,信頼感を含む一般的社会調査の現状と展望について.

【調査研究】

 これまで我々が行った調査研究では,「信頼感」が低レベルの国は,ロシアとトルコの2カ国,中レベルの国は日本,米国,ドイツ,チェコ,台湾の5カ国,そして,高レベルの国はフィンランドの1カ国であることが明らかとなっている.本研究では,高レベル国について比較の精度を高めるため,新たにノルウェー(World Values Surveyにより高レベルにランク付け)を加え,20歳以上の成人を対象に,統計的標本理論に依拠した全国規模の面接による意識調査をノルウェーの調査機関(IPSOS)に委託してオムニバス方式により実施した.その調査データと既に調査済みの8カ国の調査データを合わせ,「価値観」と「信頼感」の関連,特に対人関係・道徳観・法に対する考え方・宗教の領域について類似点と相違点を体系的に比較分析した.

【その他】

 社研研究叢書第33号『グローバル化と地域社会の変容:スロヴァキア地方都市定点追跡調査Ⅱ』(石川晃弘・佐々木正道・L.ファルチャン編著,中央大学出版部)を刊行.

「フォーラム『科学論』」

2015年度については,諸般の事情により研究活動は実施しなかった.