社会科学研究所活動報告(2012年度研究チーム)

2012年度研究チーム

グローバル化と社会科学

「グローバル化と社会科学」チームは、2012年3月26-27日の報告会以後は、延長期間のためチーム予算配分がないことから研究会等の実質的な活動は行なわず、各メンバーとも執筆準備を行ってきた。2013年の秋ごろを目途に原稿を提出してもらい、2013年度に叢書を刊行したいと考えている。

「満州」移民と地域社会の研究

長野県立歴史館において行われた特別展示会「長野県の満州移民―三つの大日向をたどる―」に出展された満州移民関係資料の調査を行うとともに、学芸員塚田博之氏の講演「なぜ多くの県民が満州へ移民したのか」では、満州入植地と長野県各村との関係を、具体的に地図と移民名簿等によって詳細な報告を受けた。
 東京平和祈念館で行われた加藤聖文氏の講演会「満蒙開拓青年義勇軍―『皇国少年』の光と影―」に参加、講演会後、加藤氏を囲んで満州移民に関する討論を行い、加藤氏の説明により企画展「満蒙開拓青少年義勇軍の軌跡―満州に渡った少年たち―」を見学した。
 さらに舞鶴引揚記念館を訪れ、シベリア抑留者引揚、満州開拓団引揚に関する資料調査、長嶺睦氏及び山田昌氏による研究報告会を行うとともに、今年度の研究活動及び今後の展望について話し合う合宿を行った。

調査研究

(1)調査期間:2012年7月10日(火)~7月12日(木)

調査地域:長野県立歴史館
出張者:  武山眞行、菅原彬州、佐藤元英
要約: 同館の総合情報課所持の長野県内満州移民者名簿を調査した。長野県の各地方自治体の具体的施策の決定過程、移民送出の実態が、各村の「参議会」史料の調査である程度明らかにすることができた。

(2)調査期間:2013年1月27日(日)

調査地域:平和祈念展示資料館(総務省・新宿)
参加者:  吉見義明、武山眞行、菅原彬州、土田哲夫、佐藤元英
要約: 1938年以降、全国から集められた満15~18歳の少年たちが、茨城県にある内原訓練所で農業実習と軍事教練を受け、満州へ送り込まれた。そうした満蒙開拓青少年義勇軍に関する資料調査と、加藤聖文氏の講演及び資料解説を聞き討論会を行った。

(3)調査期間:2013年2月2日(土)~2月4日(月)

調査地域:舞鶴市立引揚記念館
出張者:  吉見義明、武山眞行、菅原彬州、土田哲夫、佐藤元英
要約: シベリアにおける抑留体験及び満州開拓団の引揚を綴った日記・手記・手紙・関係書類を調査した。瀬野修「白樺日誌抄」、坂井仁一郎「抑留者安否確認活動関係資料」は特に重要な資料であり、未発表のものである。

(4)調査期間:2013年2月15日(金)~2月17日(日)

調査地域:舞鶴市立引揚記念館
出張者:  佐藤元英
要約: 松下幸男「捕虜日記」(満州開拓義勇軍入隊後シベリアに抑留された、昭和20年2月3日から23年11月24日、舞鶴に帰還するまでの自筆日記である。)、羽根田光男「シベリア抑留記」、大木英一「衆議院議員諸賢に訴ふ」(40万人の署名を集めて、衆議院へ訴えた要望書である。)、帰還促進連盟による「嘆願書」(昭和21年9月11日付吉田茂首相宛・マッカーサー元帥宛・テレヴィヤンコ駐日大使宛、3件の嘆願書である。)などの資料調査と収集。

東京の社会変動

今年度は研究チームの活動成果を集約して、叢書を刊行する予定だったが、原稿が期日までに集まらず、叢書の刊行は次年度に行うことになった。したがって研究員は今年度は原稿の完成に全力を挙げることになった。

調査研究

調査期間:2012年 9月10日(月)~2012年9月16日(日)
調査地域:スロヴァキア共和国、首府ブラチスラヴァ、センクヴィッツ農協
要約:調査参加者は幹事の川崎だけであったが、ブラチスラヴァではスロヴァキアに通貨ユーロが導入された後の国民生活の変化に関するデータの収集を行い、センクヴィッツでは、社会主義の農場経営と現状のシステムがどのように変化したかを中心に聴き取り調査を行った。

選挙と政治

本研究チームでは、選挙と政治に関する実証的な研究を目指した。具体的対象としては、政治参加とくに投票行動(住民投票を含む)、政治意識、これらに関する世論調査、などのトピックを扱っている。
 本年度は、10月25日に公開研究会を開き、塩沢健一、宮野勝、の2点の発表をもとに、意見交換がなされた。また、2月に世論調査会社を通じ、政治意識についてWeb調査を試みており、分析は来年度となる。なお、3月末に予定していた公開研究会は、来年度の4月初めに繰り越しとなった。

研究活動

(1)研究会:2012年10月25日(木)

報告者1:塩沢 健一
テーマ :「東京都小金井市における出直し市長選挙の分析
―「ごみ問題」をめぐる消極的選択?―」
要約 :小金井市では、可燃ごみ処理のあり方をめぐる混乱から2011年に2度の市長選挙が行われた。市民の関心は総じて高く、居住20年未満の新住民は消極的な選択なりにも政策で候補者を選ぶ傾向があった。
報告者2:宮野 勝
テーマ :「歳入・歳出の認知と財政削減への賛否―試論―」
要約 :大学生調査に基づく試論で、集合体レベルの歳入・歳出の認知の平均値は実際の決算値に近いという解釈も可能であるが、個人レベルのばらつきは大きく、財政削減については総論賛成・各論反対であった。

調査研究

調査期間:2013 年 2月 9日(土)~ 2月13日(水)
調査地域:Web調査(全国)
要約:政治意識についてのWeb調査で、回収数は約800である。分析は来年度となる。

「信頼感」の国際比較研究

本研究チームは、社会関係の根幹をなす「信頼」は文化と生活を異にするそれぞれの社会において異なった意味合いを持って機能しているという前提に立ち、それぞれの社会で人びとに共有されている「信頼感」をとりあげて、それの社会学的・社会心理学的国際比較をすすめてきた。データとしてはすでに佐々木が標準化された質問票によって収集した7カ国(日本、米国、ロシア、ドイツ、台湾、チェコ、トルコ)での調査結果にフィンランドの結果が加えられ、8カ国のデータがそろった。このデータのほかに内外の関連調査の諸結果も含めて、目下研究チームメンバーによって分析作業が進められている。その成果は2013年度に佐々木・石川の編集により刊行される予定である。
 その過程で外国、とくにロシアからの研究者を招いて、当該テーマにかんする講演会と研究・情報交流をおこなっている。当方からの発信としては、佐々木が信頼研究の方法論と「信頼感」調査の分析結果をロシア・サンクトペテルブルク大学で講演した。また、2013年3月にはロシアからの参加者14名の参加のもとに日露社会学者合同研究会「社会的信頼:その日本的・ロシア的コンテキスト」を開催して研究交流を行い、日本人参加者の分も含めてその報告原稿は2013年中に単行本の形でモスクワと東京(中大)で刊行される。なおこの研究交流の続きは今秋モスクワで行われる予定である。

(1)公開講演会

日時:2012年6月13日(水)15:30~17:00
講師:ジャック・ゴールドストーン氏(米国・ジョージメイソン大学教授)
テーマ:「多極的世界に向けて-都市部の人々に対するグローバル化の新たなパラダイム」
要約 :日本が直面する人口減少と都市部の老年人口の増加に伴う諸問題について財政面、社会保障制度面から論じ、若者がグローバル化社会において積極的に活躍できる環境を作り出すための新たなパラダイムの構築の必要性について論じた。

(2)海外講演

日時 :2012年8月17日(金)
場所 :ロシア・サンクトペテルブルク大学
報告者 :佐々木正道
報告内容:「信頼に関する国際比較研究の理論・方法・分析結果」

(3)海外調査研究

調査期間:2012年10月13日(土)~23日(火)
調査地域:モスクワ(モスクワ国立大学、ロシア国立人文大学、ロシア科学アカデミー社会学政治学研究所、人口社会経済研究所、国立経済研究大学院)
出張者  :石川晃弘
出張目的:ロシアにおける社会的信頼研究のデータ収集と意見交流

(4)日露合同ワークショップ

期間:2013年3月26日(火)~28日(木)
場所:中央大学研究所会議室4
テーマ:「信頼―日本的およびロシア的コンテキスト」
参加者:ロシア側14人、日本側11人

主な研究報告: 「8カ国における一般的信頼傾向の態度・行動指標」
「ロシアと日本における信頼の発展と機能:その諸問題と諸矛盾」
「日本人の信頼感とロシア人の信頼感:その異同」
「ロシアにおける経済意識・経済行動指標としての信頼」
「日本における信頼と社会資本」
「社会的信頼と社会的不信の弁証法」
「信頼研究の心理学的アスペクト」など
主な報告者: Dryakhlov,Nikolay Ivanovich(ドリャフロフ,ニコライ・イヴァノヴィッチ)
ロモノソフ・モスクワ国立大学心理学部教授
Toshchenko,Zhan Terentevich(トシチェンコ,ジャン・テレンチェヴィッチ)
ロシア国立人文大学社会学部長・教授
Skripkina,Tatiana Petrovna(スクリプキナ,タチアナ・ペトロフヴナ)
ロシア教育アカデミー大学心理学部長・教授
Kupreychenko,Alla Borisovna(クプレイチェンコ,アルラ・ボリソヴナ)
国立経済研究大学院教授
Kogay,Evgeniya Anatolijevna(コーガイ,エヴゲニヤ・アナトリイェブナ)
クルスク国立大学社会政治学科教授
Molodykh,Ekaterina Nikolaevna(モロディフ,エカテリーナ・ニコラエブナ)
モスクワ人文大学社会・民族心理学科准教授
Akhmedzyanova, Rusilya(アフメジアノヴァ,ルシリア)チュメン国立大学準教授
Anisimov, Roman(アニシモフ,ロマン)ロシア国立人文大学准教授
Antonenko, Irina(アントネンコ,イリナ)モスクワ国立デザイン技術大学准教授
Grishin, Vladimir(グリシン,ウラジミール)
ロシア世論調査センター・ウラル支部所長
Mersiyanova, Irina(メルシャノヴァ,イリナ)国立経済研究大学 調査研究員
Svyatskevich, Irina(スヴャツケヴィッチ,イリナ)
ロシア世論調査センター・ウラル支部主任研究員
Tarasova, Anna(タラソヴァ,アンナ)チュメン国立大学准教授
Tsapko, Miroslava(ツァプコ,ミロスラヴァ)ロシア国立人文大学助教授
佐々木正道、石川晃弘、吉野亮三、安野智子、矢野善郎、小熊信,首藤明和、森 秀樹

モバイル社会と若者

本研究は、若者の携帯電話利用の実態を、そのパーソナル・ネットワークに焦点をあてながら分析することで、成熟期に向かうモバイル・メディア社会の将来像を具体的に構想することを目的としている。二年目の今年は、昨年おこなった首都圏を中心とした若者のモバイル・メディア利用調査を分析しつつ、別途おこなった全国調査の結果もふまえながら、地域による違いをとらえることを中心とした。その中で、比較対象として海外に住む若者を調査する必要性が浮かび上がり、最終年度である来年度に調査をおこなうべく、その準備として、資料収集・調査候補地の選定などに入った。

研究活動

(1)チーム研究会:2012年5月12日(土)

場所:  法政大学市ヶ谷キャンパス
報告者:羽渕一代(弘前大学准教授・客員研究員)
土橋臣吾(法政大学准教授・客員研究員)
テーマ:「若者のモバイル・メディア利用状況:全国調査の分析1」
要約: まず、土橋氏が2012年1月に都内の高校生を対象におこなったインタビュー調査に基づき、都市部の高校生のモバイル・メディア利用の特徴を紹介し、次に、羽渕氏が弘前の若者(高校生・大学生)のモバイル・メディア利用と人間関係の特徴について報告した。両者の報告を受け、昨年度実施した都内の大学生調査、および全国調査を分析する枠組みについて議論をおこなった。

(2)チーム研究会:2012年8月22日(水)

場所: 法政大学市ヶ谷キャンパス
報告者:岩田考(桃山学院大学准教授・客員研究員)
松田美佐(中央大学教授・研究員)
テーマ:「若者のモバイル・メディア利用状況:全国調査の分析2」
要約: 11月に開催される日本社会学会で報告概要を、岩田・松田両氏が報告し、それを踏まえて議論をおこなった。その中で、来年度の研究会では海外での若者を対象とした調査をおこなう方向で検討に入ることとなった。

平和学の再構築

今年度は初年度ということもあり、ゲストスピーカーに広く平和学に関連した話題提供をお願いした。
 日本での平和学は、戦争、核兵器のない平和を考えるところから始まり、その後、世界の貧困の撲滅など、より広い射程で考えるようになった。しかし、広い平和であっても、社会や個人一人一人に密接にかかわる平和学であったかどうかは疑問が残るところであり、また、2011年の3.11以来、改めて今こそ、我々の日常生活の安全性ということと密接に関係づけて論じなければならないことは明らかである。そこで研究会においては、平和概念の再考察ということで臼井氏を招いた他、従来の国家間型の紛争である竹島・独島の問題考察のため玄氏を韓国からお呼びし、EUという地域統合の枠組みでの平和の考え方や市民の意識の問題をとりあげるため中村氏に報告をお願いするなど、平和学の多面的な側面をメンバーで確認した。

研究活動

(1)研究会: 2012年5 月19 日(土)

報告者: 和田洋典氏(青山学院大学准教授・本学兼任講師)
テーマ: 対外収支不均衡をめぐる政策協調の展望―現実主義制度論の視覚から
要約:  ブレトン・ウッズ体制の成立から、制度の進展に見られる協調の時代、ポスト・ブレトン・ウッズの時代にあって、アメリカの構造的パワーについて報告がなされた。また、今日の中国の台頭がもたらす国際的金融政策への影響についても論じられた。

(2)研究会:2012年7月6日(金)

報告者:臼井久和(客員研究員・獨協大学・フェリス女学院大学名誉教授)
テーマ:平和学の展開と課題
要約:平和学の歴史的背景、方法論、概念について今日までの変遷を辿るとともに、ますますグローバル化する今日における平和学の課題について論じた。なお、この研究会終了後、各メンバーのチーム内での研究テーマについて簡単な紹介を行った。

(3)研究会:2012年12月7日(金)

報告者:玄大松氏(韓国国民大学日本学研究所研究所長)
テーマ:独島・竹島問題の起源と争点
要約: 竹島をめぐる日韓両国の領有権主張の歴史的根拠を詳細に示すとともに、グローバル化時代のナショナリズムが問題を複雑にし、また司法的解決も困難にしていると指摘した。その上で、問題解決に向けての報告者の提案が示された。

(4)研究会:2013年1月18日(金)

報告者:中村雅治氏(上智大学名誉教授)
テーマ :ヨーロッパ統合の中の市民権
―フランスのケースを中心にして
要約:EUにおける市民権概念の歴史的展開と現状について検討がなされた。また、特にフランスを事例として、EUの存在をどのようにみているのかなどについての議論も紹介された。

ヨーロッパ研究ネットワーク

ヨーロッパと日本の大学及び研究所の研究者が学術・研究交流を通じて自由に研究プロジェクトを組織することができるよう、1996年4月からスタートした「ヨーロッパ研究ネットワーク(International Network of European Studies: INES)」は、1999年度にはその基盤つくりとして、イタリアのナポリ大学社会学部をはじめとする諸研究機関と研究交流協定を締結し、2001年度からさまざまな研究交流を開始した(協定を結んだ大学のうち、全学協定を締結した大学とは、研究所独自の研究交流協定は自動的に解消され、ナポリ大学との協定は、2008年度をもって終了している)。発足以来長い時間がたち研究所内での位置づけも変化してきているため、今後のあり方についての検討がなされ、実質的な活動の運営方法は他の研究チームと同様に研究期間を定めたプロジェクト方式で行うこととなり、2013年から新規チーム「『3.11』以降の惑星社会」を設立することとなった(「ヨーロッパ研究ネットワーク」の名称は、国内外との研究機関と継続的な研究交流を行う際に引き続き使用することが、研究員会で認められている)。

研究活動
サッサリ大学・地域研究所/島嶼社会比較研究所で、「3.11以降」の日本社会とイタリア社会の状況と持続的発展のための諸条件に関するシンポジウムを共同企画し、新規チームにむけての協業の方向性を確認した。

調査研究
調査期間: 2012年 7月31日(火)~8月22日(水)
調査地域:イタリア共和国
出張者 :新原道信
要約:聴取調査、資料収集とともに、"Il disastro nucleare di FUKUSHIMA. Scelte energetiche, societa cvile, qualita della vita", nel Quarto seminario FOISTの報告等を行った。

フォーラム「科学論」

2012年度については、講演会等の実施は見送りとした。