人文科学研究所
2024年度
外国人研究者受入一覧と講演会等の記録
※氏名をクリックすると講演会等の記録がご覧になれます。
2024年度 | ||||||
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フリガナ・漢字氏名 | 所属 | 国名 | 受入区分 | 受入期間 | 講演日 | 講演タイトル |
Tanja Kupisch | Professor, University of Konstanz Department of Linguistics | ドイツ | 2群 | 2024年5月11日(土)~ 2024年5月19日(日) | 2024年5月15日(水) | When multilingualism is more than three languages:A 3+ study of grammatical gender |
胡 鴻 | 北京大学歴史学系 教授 | 中国 | 2群 | 2024年7月2日(火)~2024年7月22日(月) | 2024年7月17日(水) | 麻布之土与北朝財政 |
Tanja Kupisch 氏の講演会
開催日:2024年5月15日(水)
場所:多摩キャンパス3号館3354号室
講師:Tanja Kupisch 氏 (Professor ,University of Konstanz Department of Linguistics)
テーマ: When multilingualism is more than three languages:A 3+ study of grammatical gender
企画:研究会チーム「言語知識の獲得と使用」
多言語習得研究として近年第3言語の研究が盛んであるが、3言語を超える多言語習得に関する研究はまだ少ない。そこで、第4言語習得における名詞句の文法性をテーマに、言語間の影響に関する講演が行われた。まず、研究の背景として、日本とドイツの多言語環境が紹介された。日本に存在するアイヌ語・八重山語・沖縄語・宮古語などに言及された後、日独における外国籍の在住者の割合、第3・第4言語(L3・L4)の定義などの導入がなされ、L3の文法知識についてL1・L2からの転移に基づく仮説として「Typological Primacy Model (TPM, Rothman, 2010)」 や「Parasitic Model (PM, Hall & Ecke, 2003)」が紹介された。Kupisch 氏らによる2つの実験研究では、L1ドイツ語・L2英語・L3イタリア語またはフランス語を習得した言語話者が、L4としてフランコ・プロヴァンサル(Franco-Provencal) 語を学ぶ際、すでに獲得している言語の語彙知識(語の形、統語的フレーム、概念)がどのようにL4の語彙知識に影響するのか、調査されている。たとえば、ドイツ語の猫、太陽は女性形 die Katze・die Sonneであるが、フランス語では男性形 le chat・le soreilであり、名詞のもつ性の素性は冠詞に表される。今回の実験では、与えられた絵(名詞)が女性名詞か男性名詞であるかを判断させる実験手法により、L4習得に与える言語間の影響が調べられた。その結果、単一の言語の影響ではなく、語彙間における形式(語尾)や意味の近似性など多様な特徴を話者が考慮していることがわかり、複数の言語の影響が見られたこと、従ってPMモデルの予測に合致することが考察された。学部生や専門外の聴衆も多かったが、新しく、かつ複雑なL4研究について、わかりやすく講義していただき、活発な質疑応答もあり、非常に刺激を受ける講演会であった。
胡 鴻 氏の講演会
開催日:2024年7月17日(水)
場 所:多摩キャンパス2号館4階研究所会議室1
講 師:胡 鴻 氏(北京大学歴史学系 教授)
テーマ: 麻布之土与北朝財政
企 画:共同研究チーム「世界史における「政治的なもの」」
北魏の租調制における桑土と麻土の区別は、唐代まで継承される。この区別は自然条件に添ったものであると考えられてきたが、その制度の変遷を仔細に検討すると、自然条件の影響は実は限定的で、むしろ北朝の国家財政に深く関わる区別であったことが判明する。制度の運用は、必ずしも制定時の原則に従うのではなく、その時々の歴史的条件によって転変するのである。