日本比較法研究所
2026年度 講演会・スタッフセミナー 概要
テーマ:生成AI時代における法曹専門職の再構築:法教育と実務利用の国際比較研究
ポーランドの生成AIの法曹による利用実態について、アダム・ミツキェヴィチ大学法学部の教授のマレク・アダム・スモーク氏と同大学心理学・認知科学部教授のテレサ・ティルスカ・スモーク氏は、ほかの数名の研究者とポーランドにおいて、裁判官、弁護士、検察官に対する、大掛かりにアンケート調査をおこなっており、今回は、そのアンケート調査の概要の紹介と分析、そして、法哲学者であるアダム氏からの、原理的な考察が行われた。両方の報告は、それぞれパートには分かれていたが、全体として、一体となすものとして実施された。両者の報告の後、質疑応答がなされた。実施されたアンケートは、日本の法曹の場面でも当てはまる内容であり、大変興味深かったし、アダム氏は、AIに関連する基本的な知識から開始し、問題点が、AIそのものではなく、AIの適切な利用によるものであることを、具体的な条文を示しながら、説明をして、参加者も日本の現状を紹介したり、質問したりして、法社会学、法曹実務の参加者もあり、非常に有意義な意見交換がなされた。
テーマ:正当化的緊急避難と集合的法益
2026年4月7日(火)16時から、中央大学駿河台キャンパスにおいて、「正当化的緊急避難と集合的法益」とのテーマで講演会が実施され、周辺的なものとして議論されてきた正当化的緊急避難につき、集合的法益との関係について、グレコ教授の見解が示されたのち、ドイツ法と日本法との間の解釈の異同も含めた活発な議論が行われた。
テーマ:犯罪の嫌疑とAI
2026年4月9日(木)16時から、中央大学駿河台キャンパスにおいて、「犯罪の嫌疑とAI」とのテーマで講演会が実施され、グレコ教授の見解が示されたのち、AIを用いた犯罪捜査、刑事訴追のあり方、ひいては国家と個人との関係にまで及ぶ広範かつ活発な議論が行われた。
テーマ:遠隔販売の場合の有料の返品:消費者の強行法的な費用負担義務について
EUでは1997年に「遠隔販売指令」が制定された結果として、遠隔販売(通信販売)において消費者にクーリング・オフの権利(Widerrufsrecht)が認められた。ドイツでは、今日、遠隔販売で購入された商品の平均約4分の1が返品されている。衣類の場合、返品率は最大75%にも達するとされている。また、通常、販売者が返品などの費用を負担する。講演者は、経済および環境上の理由でEU指令の改正によってこの状況を変えて、消費者の強行法的な費用負担義務の導入を提唱した。その具体的な理由として主に以下のものが取り上げられた。第一に、現在のクーリング・オフに関する規制は、元々の規制趣旨と誤ったインセンティブを与えている。第二に、商品返品は大きなCO₂量を排出して、経済資源の節約、廃棄物の発生量の削減および過剰生産の抑制、EU法の環境保護の政策趣旨に反する。第三に、返品費用などは販売業者が返品費用などを負担する可能性があれば、それが市場参入の障壁となり、企業の市場支配的な地位を助長することになる。詳細な法令効果の分析により、現行の法的状況は不適切であるので、この状況は消費者の強行法的な費用負担義務の導入で変更すべきだという結論をした。また、この法的義務を貫徹するためには、既に存在する不正競争法および独占禁止法の手段を使うことができる。
テーマ:子どもの権利:法的・倫理的課題
子どもの権利について、具体的には、子供が犯罪の被害者になった場合(親による虐待も含むが、これに限らない)および子供の親による連れさりとハーグ条約について、公法、法哲学的な視点から、ポーランドの現状紹介と問題点の指摘がなされた。日本と異なり、弁護士が加害者のみならず被害者にもつくということや、ハーグ条約についての日本と条約非加盟国との間の連れさりの問題点などについて、家族法研究者や中国法研究者との間に有益な意見交換がおこなわれた。
テーマ:ポーランドの法律専門職:2種類の法曹の意義
ポーランドにおいては、共産主義国であったという経緯から、国の企業を代表して、内部で雇用されるリーガルアドヴァイザー(弁護士)という職と法廷弁護士であるアボカが歴史的に並立する二元的な法制度であり、この特殊性の説明と、近年、両者が機能的に近づいていることを踏まえて、統合するかどうかについて、議論がなされた。ポーランド法専門の日本人研究者や弁護士が出席するなど、出席人数は必ずしも多くはなかったが、濃密な意見交換がなされた。
テーマ:日本国憲法におけるローマ法の要素
The presentation explored the elements of Romanness in the modern Constitution of Japan. It explored and identifies features in the Constitution of Japan which trace their roots in the constitution of the Roman Republic. Historically, it is the case that the Constitution of Japan was imposed by the American military administration on the Japanese people, it having been formally ratified by the Japanese Diet as an amendment to the previous Meiji Constitution. Nonetheless, the Japanese people have embraced and respected this constitution. They have adopted it and adapted it to the culture and the legal ethos of Japan. As an instrument, however, which has had foreign roots to a significant extent, the Constitution of Japan came with a number of constitutional characteristics that resembled constitutional characteristics of Western countries. Indeed, aside from such European ideas as parliamentarianism and the office of the Prime Minister, one could, to this day, identify in the same constitution ideas which trace their roots in republican Rome, namely checks and balances, a House of Councillors (somewhat reminiscent of the Roman Senate and the American Senate), veto powers, fixed terms, elections and so on. Even before the Constitution of Japan 1946/1947, Japanese legal scholars were aware of the importance of Roman law in the creation of a modern legal system: for instance, Ono Azusa, while influenced by British models of government, studied and explored Roman law as the foundation of Western legal systems and an excellent basis for the modernisation of a legal system. The paper concluded with the importance of Roman constitutional law for the Constitution of Japan and, by extension, for the constitutions of the world's modern republics.

