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数学科

1.数学科における教育上の目的

数学における主要な分野である代数学、幾何学、解析学、統計数学、計算数学等の基礎を習得して数理科学の世界を探求する中で、自力で問題を定式化し、新たな知見を創り出す学識と応用力を養い、現代科学技術を支える数理的素養と応用力を習得した人材を育成することを本学科における教育上の目的とする。

2.数学科における卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)

  1. (1)数学科において養成する人材像
    数学における主要な分野である代数学・幾何学・解析学・統計学・計算機数学の基礎概念と計算機技術を習得して数理の世界を探求する中で、自力で問題を定式化しながら新たな知見を創始・構築する学識と、諸科学・産業技術の基盤を支える数理的素養と応用力を有する人材を養成する。
  2. (2)数学科を卒業するために身に付けるべき資質・能力
    理工学部を卒業するために身に付けるべき一般的資質や能力に加え、数理的知識と計算機技術を専門科目として習得し、さらにそれを問題解決のために応用して社会に貢献する能力を獲得すること。具体的には以下に述べる事柄である。

    (A) 論理に裏付けられた論証力。学部では先人が積み重ねて来た数学の基礎事項を学ぶことが中心になるが、数学の定理や公式の正しさは論理に基づいた論証によって保証される。展開されている論証を理解するだけにとどまらず、自分の言葉で論述が展開できる能力が何よりも重要である。論証力・論理的思考力は社会の様々な場面で必要とされる。

    (B) 整合性を感知できる感性。数学の結果は一度正しいと整合的に証明されれば、その正しさは揺るがない。例えば、プトレマイオスの天動説がコペルニクスの地動説に取って代わられても、三平方の定理の地位は揺るがなかった。数学の理論を構築する上で整合性に対する感覚は非常に重要であるが、整合性の大切さは数学の理論に限ったことではない。整合性の欠如を感知できる感性があってこそ広い視野をもって社会に貢献できるはずである。

    (C) 基本を理解した上での応用力。自然科学・社会科学の様々な分野では、その多くが数理モデルを基盤としており、モデル化された対象を数学理論と計算機を用いて解析することが問題解決の鍵となる。このため、社会が直面する様々な問題の解明と予測・制御、そして新たな知識発見のためのモデリングの力やデータから有益な情報やパターンを効率的に抽出・処理するための解析手法の基礎理論、方法論を習得し、諸科学・産業界へ応用できる人材の育成を重視する。

    (D) 数学と計算機技術の融合による実践力。計算機のハードウェアとソフトウェアの両面に渡る高度な発展は、生活の利便性の向上をもたらすとともに、新たな学問分野を創始・創出している。また、計算機の利用環境の向上は、計算・統計・離散数学においてのみならず、代数・幾何・解析の分野でも問題解決のためのツールとしての役割を果たしている。数学科では、数学と計算機関係のカリキュラムを融合した教育を通して、数理的知識と計算機技術・アルゴリズムを身につけた数理技術者の育成に取り組む。

    (E) 自発的な学習能力。学びは学校に限定されたものではなく、社会でのすべての場面が学びの場である。課題に自主的に取組み、学際的知識や論理に裏付けられた論証力をもってその課題の解決を図り、さらにその成果をまとめて発表する。基本的かつ明確な公理のみから出発して厳格な論理を積み重ねる数学を学ぶことは自発的な学習能力を獲得するための最善の方法の一つである。実際、このことは古代ギリシアのアカデミヤや中世ヨーロッパの自由七学以来の伝統である。

    (F) 先人の仕事に対する敬意。数学に限らず、科学の成果や技術は先人の努力による。一度確立された数学の結果をただ覚えて受け売りで済ませずに論証を込めて学ぶのは、論理に裏付けられた論証力、整合性を感知できる感性、基本を理解した上での応用力、自発的な学習能力を培うための作業であるが、また先人の仕事に対する敬意を感じる機会を得るためでもある。無責任な評論や受け売りは数学であってはならない。

3.数学科における教育課程の編成及び実施に関する方針(カリキュラム・ポリシー)

本学科は、その教育上の目的に基づき高度な専門能力と創造性、豊かな教養を兼ね備えた人材を育成するため、卒業の認定に関する方針に従って、以下のようにカリキュラムを編成し、これを実施する。

①広い視野を伴った教養に裏打ちされた思考力を獲得させるために、英語と第二外国語からなる外国語教育科目と人文社会系科目と体育系科目を含む総合教育科目を配当している。

②情報リテラシーは現代社会では必須の知識であり、技術である。コンピュータおよびネットワークに関する、ハードウェア・ソフトウェアの変化に依存しない普遍的な知識・技術・実践力を習得させる科目を開講している。また、数学科の情報教育を実現するための計算機環境の維持管理に努め、将来計画に常に留意している。

③高校までの数学と大学での数学は、本来は連続しているはずである。しかしながら、高校までの数学教育が解法中心であるために、論証に基づいた大学での数学になかなか馴染めないのが多くの新入生の現状である。したがって、1年次では、2年次以降の教育を見据えながら、高等学校教育からの連続性に留意した教育を実施している。
具体的には、1年次の科目である「数学A」「数学B」では、高校数学で主要な部分を占めている微分積分学をさらに広く深く、「線形代数学1」「線形代数学2」では連立一次方程式やベクトルに出自をもつ線形代数学を、それぞれ週2回の講義と週1回の演習で丁寧に教育している。また、「基礎数学1」「基礎数学2」では本格的な数学の必須用語である集合や写像について講義している。
一方、コンピュータを扱う情報処理やプログラム言語に関する科目も開講し、情報機器を学習・研究の道具として使いこなせる基礎知識を習得し、ネットワーク利用における常識・マナーを身に付ける機会を提供している。さらに、選択科目ではあるが、高校数学で学ぶ場合の数と確率・確率分布などを現代数学の観点から見直す「離散数学1」「離散数学2」も配当している。

④高度化した社会において必要とされる、日進月歩の技術革新に的確に対応できる思考力を有する人材を育成するために、1年次の科目に引き続き、2年次と3年次には代数学・解析学・幾何学・統計学・計算機数学の専門科目を学習すべき順序に従って配置している。どの科目も「誰々がこう言っている」と受け売りで済ませられる内容ではなく、自分で理論を組み立て直すことを要求している。したがって、主要科目は週2回の講義として、学生が集中して勉学に臨めるように配慮している。

⑤基礎教育の徹底とともに、社会的ニーズを把握し、産業界における数理的業務の実際を学ばせ、学生のキャリアデザインに資するために、諸分野の先端科学の研究者、教育界、企業等で活躍している人材を講師として招き「数学特別講義 (情報と職業)」を設置している。

⑥4年次の「卒業研究」では、指導教員に少人数の学生を配属して、セミナーでの双方向のやりとりを通じて、数学の理解を深めるべく指導している。また、自分の志望に応じて進んで勉強できるように、4年次にも専門科目を配当し、大学院進学予定者には大学院の講義の先取り受講を認めている。

⑦当数学科では学科開設以来、中高の数学教員を持続して送り出して来た。「数学」教職科目を別に配して、教員志望の学生の要望に応えている。こんな教師になってほしいという願いの下に書かれた教科書を使用、介護体験などに際して事前面接を実施し、外部講師による教職講座なども開講している。

⑧高大連携の一環として、数学に興味を持ち、素養のある高校生を科目等履修生として受け入れている。