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学科ビジョン

高付加価値で最先端技術を要する機械の開発には、様々な意味で高い精密さが要求される。ナノ・マイクロといった微細な対象を扱う文字通り精密な機械の開発には、分子レベルでの自然現象の解明、加工に伴う分子の挙動、振動解析、熱制御等が必要となる。一方、サイズの大きな機械に対して高い精度を実現することも、マイクロ技術と同様に高度な精密機械に関する知識、技術を要する。

将来の高付加価値機械の中には、家庭用ロボットに見られるように人間社会で利用されるものがある。このような機械には、信頼性、ロバスト性、人間にとっての快適性が求められ、これらを実現するためのひとにやさしい技術に対しても精密機械工学はその中心的な役割を果たす。 精密さは機械に留まらず、人間そのものの中にも見ることができる。人間は50兆から100兆個の細胞からなり、これらが各器官を構成し、更にこれらが個々の役割を果たすことで生命活動を行っている。人間に限らず生物は機械の真似できない微細で芸術的な構造を有しており、これらを直接扱う医療支援システムや、これらを規範とした機器の開発には最先端の精密技術が求められる。また、人間の感覚の探求には、快適性、技量といった抽象的概念を解き明かす鍵が含まれている。そして、人間の感覚の持つ繊細さの解明、再現の中心となる技術はもちろん精密機械工学である。

以上の例に見られるように、最先端の精密機械を研究対象とするには、ミクロな挙動を解明するための科学、それを計測する技術、ナノ・マイクロ精度を実現するための製造技術、制御技術といった個々の要素技術を精密化するだけでなく、それらを横断的に統合するためのシステム化技術が重要となる。この横断的な思想こそ精密機械工学の特徴のひとつである。そのために、中央大学精密機械工学科は研究室制をとっており、他大学学科と比較し幅広い研究分野の教員が揃っており、精密機械の研究には大変適した環境となっている。

多くの大学で精密の名称を持つ学科が名称変更を行っており、今では精密機械工学科の名称を持つ学科は数少ないことを鑑みると、このような研究分野、陣容は差別化には大いに意味のあることである。そこで、「精密さの追求を通じ、システム全体を把握することのできるグローバルな視野を養う」ことを将来に向けた精密機械工学科の方針として標榜する。これまでに示したように、精密さの追求には、先端の要素技術と共に、全てを見渡すことのできる広い視点が必要となる。変化の激しい現代においては、特定の対象のみに特化した知識だけでなく、変化に適応した視点の切り替えと対応が何よりも重要となる。

誰しもが望む将来像は、高校生、在学生、企業、社会、そして教員の全てにとって、魅力のある、満足のいく学科となることである。これを実現して初めて、優秀な高校生の獲得、研究活動の活発化、優秀なエンジニアの輩出、社会での高い評価の獲得ができる。そしてこれには、教育、あるいは研究のみに重点を置いた学科運営ではなく、教育・研究とバランスの取れた運営のシステムを作り上げることが必要である。

上記ビジョンを方針とし、これに基づき、新鮮で魅力的な学科イメージの創生、実力のつくやりがいのある教育プログラムの実現、最先端の研究活動、その成果を社会に向けてわかりやすく発信する努力をしていくことを、この将来像に一歩でも近づくための方策とする。そして、これらの活動は、精密工学専攻の充実への第一歩とも位置づけることができる。