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物理学科・専攻
2024年度 第2回 中央大学物理学科談話会 「非可積分な量子回路におけるフロケエンジニアリングと安定な基底状態」
- 日程
- 2024年9月6日(金) 15:10~16:50
- 場所
- 後楽園キャンパス 3号館3階3300教室
概 要:
近年、物質に周期的な外場を加えることで新たな機能を創出する「フロケエンジニアリング」という概念が注目を集めている。これは、量子コンピュータの実現に向けた量子制御技術の発展と、新奇な量子状態の探索という基礎科学の両面から重要なトピックである。一方で、このようなフロケ状態は熱力学的極限では常に非平衡の無秩序な状態に収束し、長時間安定に存在できないと広く信じられてきた。
本講演では、大規模数値計算により見出された、この通説に反する現象を紹介する。非可積分な量子スピン鎖モデルにおいて、フロケハミルトニアンの基底状態が例外的に加熱に対して頑健であり、ある臨界周波数以上で無限時間経過後も安定に存在し得ることが強く示唆された。この鮮やかなエネルギー局在・非局在転移は、他の励起状態には見られない基底状態特有の現象である。
この例外的な安定性は、基底状態からの共鳴励起が少数の準粒子からなり、それらが駆動から効率的にエネルギーを吸収できないことに起因すると考えられる。本研究は、フロケ系の加熱と安定性に関する基本的な問題に新たな視点を与え、相互作用する量子多体系において長寿命のフロケ相を実現する道を拓くものである。さらに、フロケ駆動はデジタル量子シミュレーションにおける時間発展演算子のトロッター分解に対応付けられるため、本研究はトロッター分解の安定性に関する重要な示唆も与える。
本講演では、背景となる概念の丁寧な説明を心がけ、非専門家にも理解しやすい内容になるよう努める。フロケエンジニアリングを起点として、量子物性科学や量子情報科学にどのような展開があり得るのか、聴衆の皆様と一緒に考えていきたい。
問い合わせ先:米満賢治(中央大学理工学部物理学科)
e-mail: yonemitsu.kenji(at)gmail.com
- 日程
- 2024年9月6日(金) 15:10~16:50
- 場所
- 後楽園キャンパス 3号館3階3300教室
- 講演者
講演者: 池田 達彦 氏 (理化学研究所 量子コンピュータ研究センター)