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物理学科・専攻

2023年度 第1回 中央大学物理学科談話会 「寺田寅彦の科学の現代的意味」

日程
2023年6月21日(水) 15:10~16:50
場所
後楽園キャンパス 5号館1階5134教室 (定員 120 名)

概 要: 寺田寅彦(1878-1935)は一般には随筆家として有名であり、文豪夏目漱石の弟子としてその周辺を彩っ
た一人であることもよく知られている。実際、漱石の『吾輩は猫である』に登場する水島寒月や『三四郎』の野々
宮宗八理学士は寅彦がモデルだと考えられている。しかし、彼の本職は東京大学理学部物理学科の教授であり、理
化学研究所や東大地震研究所などの所員も兼務していた。本職のほうでも寅彦は非常にユニークで、誰もが常日頃
見ていながらも科学的には見過ごしてしまうようなごく日常的な現象に鋭い分析の目を注いで、数々の科学的な
成果を挙げた研究者であった。その一方で、寅彦は美しくて端正な、わかりやすい日本語の随筆を数多く書き上
げてきたのである。彼の随筆のテーマは自然、社会、文学、科学、日常生活の諸断面など、多岐にわたる。金米
糖の特徴的な角(つの)やキリンの斑(まだら)模様、線香花火の美しくもはかない輝きはどのようにしてでき
るのだろうか。空に浮かぶ雲や遠くの山並み、川筋や海岸線、桜や松などの木々やカスミソウなどの草花の枝分
かれなど、自然界に見られる物の形は一見してあまりにも雑多なようだが、それらには何か規則性はないのだろ
うか。寺田寅彦はこれらの素朴な疑問を 100 年近くも前に抱き、観察と考察、実験を重ねて数々の研究を行った。
彼の研究そのものは科学の主流から大きく外れていたために、当時は必ずしも広く注目されたとは言えない。し
かし、それらについて記した寅彦の随筆はとても興味深くて示唆に富み、現在に至るまで多くの人々の心をとら
えて離さず、広く読まれ続けている。寅彦の科学のほうは、金米糖の角(つの)のでき方一つをとっても現代物理
学の重要な考え方に深く関わっており、前世紀末から今世紀にかけて世界中で盛んに研究されている複雑系科学
として花開いたということができる。ここでは寅彦の科学の本質を現代的な視点で見直し、その後の発展をたど
ることによって、彼の科学の現代的な意味を探ってみたいと思う。
目次(予定)
1.「キリンの斑」論争と寺田寅彦
2.自然界に隠れている形と数の不思議な関係:フィボナッチ数列
3.一様な状態の不安定化:金平糖の角の出現、電車やエレベータの混雑など
4.金米糖の角の出現から枝分かれパターンへ、そしてフラクタル
5.首の長い砂時計の砂の流れ:偶然と必然のはざまとカオス
6.鉛直ガラス管中の砂の流れから土石流、火砕流を考える
7.まとめ:寅彦は複雑系科学の父!

問い合わせ先: 中大・理工・物理 香取眞理、脇田順一

日程
2023年6月21日(水) 15:10~16:50
場所
後楽園キャンパス 5号館1階5134教室 (定員 120 名)
講演者

松下 貢 氏(中央大学理工学部 名誉教授)