応用化学科・専攻

理工学部応用化学科 森 寛敏 教授・黒木 菜保子 助教らによる論文が Springer Nature 発行のScientific Reports 誌に掲載

2022年11月18日

生体分子 TMAO は、親水的な NO 基に加え、本来疎水的な CH3 基でも水をトラップする

 中央大学理工学部応用化学科 助教 黒木 菜保子・教授 森 寛敏らの研究グループは、溶液/凝集系中ではたらく分子間相互作用を、その起源に立ち返り精密に再現する第一原理分子シミュレーション法(有効フラグメントポテンシャル-分子動力学法;EFP-MD)を開発し、CO2 吸収液・超臨界流体など、種々の機能性溶液の設計に取り組んでいます。今回、同グループは、EFP-MD 法を「生体を構成するタンパク質を守る浸透圧調整物質として知られる trimethylamine N-oxide(TMAO)」と、「TMAO と類似構造を持ちながらタンパク質を変性させる tert-butyl alcohol」の水溶液に適用することで、通常水を嫌う「疎水基」として知られる -CH3 基が、TMAO 中では、生体中の水をトラップする働きを持つことを示しました。TMAO は生体に必須な生化学物質であると同時に、動脈硬化など様々な疾病に関わることが知られています。TMAO の親水性とその起源を解明した本研究成果は、溶液化学の基礎的知見に加え、人工シャペロンの開発などの次世代医療に繋がる重要な寄与をするものとして期待されます。

<本研究のポイント>

  • 生体溶液中の電子状態ゆらぎをナノ秒オーダーの第一原理分子シミュレーションで追跡した初めての研究
  • TMAO は、生体に必須な生化学物質であると同時に、動脈硬化など様々な疾病に関わる
  • 浸透圧制御物質である TMAO と、類似構造を持つがその機能を持たない TBA では、水溶液中の水素結合ネットワークに及ぼす影響が全く異なる
  • 本研究成果は、人工シャペロンの開発などの次世代医療に繋がる重要な寄与をするものとして期待される

<タイトル>

Electronic fluctuation difference between trimethylamine N-oxide and tert-butyl alcohol in water

<著  者>

黒木 菜保子(中央大学)・内野 幸奈(お茶の水女子大学)・船倉 多聞(中央大学)・森 寛敏(中央大学)

<発表雑誌>

Nature Publishing Group 社 Scientific Reports 12, 19417 (2022).

https://doi.org/10.1038/s41598-022-24049-0

 

理論化学研究室(森 寛敏 教授グループ)

日本経済新聞で紹介されました。