情報工学科・専攻
理工学部教授 今堀慎治のエッシャー風タイリングに関する論文がACM Transactions on Graphicsに掲載
2022年01月07日
理工学部(情報工学科)教授 今堀慎治の論文(徳島大学 永田裕一氏と共著)
Escherization with Large Deformations Based on As-Rigid-As-Possible Shape Modeling |
今堀慎治教授
が、 ACM Transactions on Graphics 41(2) (2022) に掲載されました。ACM Transactions on Graphicsは、世界最大のコンピュータサイエンス学会であるACM(計算機協会)の分科会が発行する、コンピュータグラフィックス分野の査読付き科学ジャーナルです。
今回、アルゴリズム工学を用いて、美しいエッシャー風タイリングを実現した研究について、著者である今堀慎治教授にインタビューを実施しました。
今堀慎治教授インタビュー「アートと工学の融合 エッシャー風タイリング」
Q1「最初にエッシャー風タイリングについて教えてください。」
今堀教授
「エッシャーは20世紀に活躍したオランダの芸術家です。紙には描けても立体としては作れそうにないだまし絵や、動植物などの複雑な形状のタイルを用いたタイリングを素材として、不思議で独創的な芸術作品を多く残しました。私が研究でとりあげている“エッシャー風タイリング”は、アルゴリズム工学を用いて、モチーフとなる1つの絵から隙間も重なりもないタイリングを生成する技術です。どのようなものであるかは、今回の成果図であるFig.14をご覧ください。」
Q2「イカの絵などみると一見簡単そうにみえるけれど、実際に組合せるのは至難の業ですね。色々なパターンがあり、手作業ではどんなに頑張ってもできそうにありません。どのような技術を用いてエッシャー風タイリングを可能にしたのですか?」
今堀教授
「組合せ最適化問題に対するアルゴリズム設計の知見を活かして、エッシャー風タイリングを生成するアルゴリズムを開発しました。芸術的なタイリングを手作業で創造する代わりに、モチーフとなる図形Sを与えたら、その絵にできるだけ近いタイルTを求めるプログラムを作りました。アルゴリズムの詳細をここで説明することはしませんが、線形代数学などの数学の授業で学ぶ行列の固有値・固有ベクトルの計算などにより、入力図形Sにもっとも近いタイルTを求めることができます。」
Q3「今堀教授は6年前2015年時点で既にエッシャー風タイリングの研究で成果を出されていました。その時の成果も可愛らしいものですが、今回の成果はより複雑な形状に対応しているように思えます。その進化はどこにあるのですか?」
今堀教授
「今回の研究成果は主に2つのアイディアによって生み出すことができました。一つ目は図形の近さに関するもので、2つの図形の近さをどのように測るかによって、アルゴリズムの出力が変わってきます。今回の研究によってエッシャー風タイリングにとって適切な距離の測り方を見出しました。ただ、その方法は最新のコンピュータを使ったとしても、計算に数時間から百時間程度かかるという問題点があります。この課題に対しては、数学とアルゴリズムの力を使うことで、10分以内に複雑なタイルの計算を行うことに成功しました。」
Q4「すごい技術ですね。今回の研究成果であるアルゴリズムを使えば、例えば、干支の変化、2021年丑年と2022年寅年を組み合わせたエッシャー風タイリングの模様を作ることもできそうですね!」
今堀教授
「このタイリングは、エッシャーの作品を模倣して準備した鳥と魚のモチーフに対して、我々のアルゴリズムが見つけたものです。この図だけを見ると成功しているように見えますが、モチーフとなる図形の組合せによっては、入力図形の形状が大きく崩れてしまうことがあります。残念ながら私にはアートの才能がないのですが、アルゴリズムを理解し、アートにも精通した学生や研究者と共同で取り組むことで、そのような新しいタイリング作品を生み出したいと思います。」
以上、今堀教授の研究成果についてインタビューを実施しました。これらの内容は動画でも視聴することができます。