情報工学科・専攻

2019年度 祝 ご卒業・ご修了

2020年03月25日

3月24日火曜日、新型コロナウィルス感染症における社会情勢を踏まえ、2019年度(2020年3月)中央大学卒業式・大学院修士学位授与式は、規模を縮小し、代表者のみが卒業証書・学位記を本学より受け取る形式でおこないました。

情報工学科からは 形状情報処理研究室(森口研究室)の的池 朋香(まといけ ほのか)さん、情報工学専攻からは 情報通信工学研究室(趙研究室) の神藤 真沙志(しんとう まさし)さんが、その代表を務めました。

また、一堂に会した卒業式・学位授与式を実施することはできませんでしたが、卒業生・修了生代表として情報通信工学研究室(趙研究室)の保坂 啓介(ほさか けいすけ)さんに、卒業にあたっての決意を 書面および映像 で披露していただきました。

ご卒業・ご修了おめでとうございます。

教職員一同、心よりお祝い申し上げます。

式辞

 情報工学科卒業生89名、及び、情報工学専攻修了生20名のみなさん、本日は卒業・修了おめでとうございます。また、苦楽を共にされたご家族・保証人の方々には心よりお慶び申し上げます。周囲からさらに一歩前に踏み出す日を迎え、期待と不安が相半ばする想いかと拝察いたしますが、これからは人生の先輩として、引き続き助言などしていただければと存じます。

 さて、1992年の設立から4月で28年を迎える情報工学科にとって、本日は、情報工学科にとって25回目の、情報工学専攻にとって23回目の卒業生・修了生を送り出す日です。皆さんにとっては人生の大きな節目であると同時に、送り出す教職員にとっても忘れがたい日であるべきです。しかし、今年はいつもとは様相が異なることとなりました。情報工学科の卒業式が例年と異なるのは2011年の東日本大震災に続いて2度目となります。学友と集うこと、後輩から祝福を受けること、そして、友人・知人に直接別れを告げ再会を約することもできない形でこの日を迎えざるを得なかったことは、皆さんだけでなく送り出す側にとっても残念です。しかし、皆さんの健康を含む公共の福祉を第一に考えると、こうせざるを得ないことは理解していただけると思います。今日の胸中をどうか忘れず、将来の糧にしていただくよう希望します。

 日本の代表的なSF作家であった小松左京氏が小説「復活の日」にて、未知のウイルスにより人類を含む多くの種が5大陸のうち4大陸で死に絶え、南極大陸にて生き延びた人類のその後を記したのは1964年、最初の東京オリンピックが開催された年です。半世紀以上前に執筆された作者の想像力には驚きですが、皆さんの入学時にはもちろんわずか半年前であっても、このような事態が瞬く間に地球全体に影響することを予想できた人はほとんどいなかったでしょう。人が速く、かつ、容易に移動できる技術の進化と社会への普及により、十分な防疫体制を社会が整える前に地球全体に広げた、とも言えるこの状況は、ある意味で技術がもたらした弊害と言えます。一方、情報の蓄積、速やかな伝達・交換を基盤とする、治療方法と治療薬・ワクチンの懸命な開発や国境を瞬時に超える正しい情報の流通も、技術による機会促進と言えます。情報工学が含まれる工学は、本来、人や社会に良い意味で貢献するためのモノや仕組みを実現するための学問です。しかし、工学の発展がさまざまな恩恵をもたらす一方で、新たな脅威も生み出している現状は、まだ完全ではない、やらなければならないことが多いと言えるでしょう。人間、社会、環境を支える多くの技術や技術をもとに開発されるシステムにおいて、コンピュータが様々な形で使われていることは、今や常識となっています。皆さんは、そのコンピュータを使う人ではなく、コンピュータを作ったり、コンピュータの新しい社会貢献方法を考案したりする、モノ作り、コト作りの専門家になるべく学び、探求してきました。第四次産業革命ともソサエティー5.0とも称されるこの時代に流されたり、遅れたりせず、むしろ先導したり、他者や社会にとっての標となったり、してください。

 今から10年前の2010年に中央大学は創立125周年を迎え、記念式典を挙行しました。その中で上演された中央大学の歴史を振り返る寸劇の最後のシーンにて、「先達の苦労を思えば、現状について困難だと軽々しく言うことはできない」旨の台詞を私は覚えています。情報工学科設立以降だけでも、記念式典の半年後におきた東日本大震災をはじめ、世界各地での様々な災害や政治・経済等に起因する格差が多くの人々から平穏な生活を今もなお奪っており、気候変動は人類をはじめとする生態系全体への影響が懸念されています。そんな中で幸運にも高等教育を修めることができた皆さんには、自分だけでなく周囲を豊かにしたい・持続的に発展させたいと大きな夢と希望を強くもち、その実現に向けて知識と能力を発揮してほしいと願います。もちろん、その際には他者と時には協力し、時には競争することで、自らの存在意義を示す必要に迫られるでしょう。有形無形の社会の課題に対する解決策の考案や無から有を生み出す創造に必要な準備を大学・大学院で十分に行ったと、断言できる状況であってほしいと願います。そして、今日からは自律して継続的な学びに取り組むことで、これからの長い人生の糧としてください。。中央大学の建学の精神は「實地應用ノ素ヲ養フ」、ユニバーシティメッセージは「行動する知性」、そして情報工学科の教育方針は「ハイクォリティ情報処理」です。これらの言葉の意味するところを改めて考え、広く深い知識とそれを活用する行動特性(コンピテンシー)を基盤として、適時的確な行動を期待します。

 皆さんの進む道は必ずしも平坦ではなく、光明も見えない時もあると思います。しかし、乗り越えられない壁はない、明けない夜はない、と信念をもって進み、続く人への導(しるべ)となられますよう、心より期待し、情報工学科・情報工学専攻教職員を代表して式辞といたします。卒業・修了を心より祝し、皆さんの前途に実り多きことを願います。

2020年3月24日

情報工学科・情報工学専攻主任 牧野 光則

答辞

 本日は一堂に会しての卒業式が中止となった代わりとして、このような場を設けていただき誠にありがとうございます。また、主任の牧野先生から温かい訓辞と激励のお言葉を賜り、身の引き締まる思いでいるとともに、感謝の気持ちでいっぱいでございます。

 振り返ると、大学生活は瞬く間に過ぎていきました。しかし、それは中央大学での日々が充実し、かけがえのない日々であったことの裏付けであると思います。先生方や技術員の方々、家族の支えを受けながら、友人や先輩、後輩たちと共に過ごした大学での日々は、紛うことなき私の財産です。

 しかし、この場に立つまでの道のりは決して平易な道ではありませんでした。特別やりたいことや、なりたいものが見つかっていない、入学当時そんな私にとって、大学生活はそれを見つける期間でもありました。新しく出会った大学での友人は皆、個性的で、様々なことに挑戦して、私にはとても格好よく見えました。そんな友人たちに私も置いていかれないようにプログラミングやサークル、アルバイトといったことに取り組んでいきました。

 そうした取り組みをする中で、今自分が取り組んでいることに自信がなくなってしまうときが多々ありました。「このままでいいのだろうか」「今やっていることを辞め、何か新しいことを始めたほうが良いのではないか」そんな不安や焦りで、自分がどうしたいのか分からなくなってしまったときが少なからずありました。物事がうまくいかず、人間関係の悩みが重なり、自分の今やっていることや、そんな自分自身が全く信じられなくなる、一番苦しかったのはそんなときでした。

 そんなとき、私を救ってくれたのは周りの仲間たちの優しさでした。自分が信じられないとき、「迷惑になってしまったらどうしよう」「他人に話すことの程でもないんじゃないか」そんな不安や恐れを置いて、苦しいときは「苦しい」と正直に言って、勇気を出して仲間を頼ってみること、そして、そんな自分を温かく受け入れてくれる仲間の優しさが私を救ってくれました。

 今こうして私がこの場に立っているのは、そうした仲間の支えがあってのものです。自分が辛いとき、仲間の優しさに触れて「仲間のために頑張りたい」そう思えたことが、自分にはとにかく嬉しく、心を晴れさせてくれました。同時に、個人を超えたところで物事を続ける理由をもつことが、物事を長く続ける上で大切だと私に気づかせてくれました。自分が辛いとき、仲間がそうしてくれたように、私も「優しい人になりたい」と心から思えたこと、なりたい自分を見つけられたことが、私の大学生活での一番の成長です。

 卒業後、私たちは社会人あるいは大学院生となり立場が変わります。受け取る側の立場から与える側の立場へとなっていきます。これから先、幾度となく「自分に何ができ、どうしたいのか?」そんな問いと向き合うことになると思います。そんなとき、本学で学んだ情報工学や、本学で培ってきた考え抜く力を駆使し自分なりの答えを見つけていかなければなりません。うまくいく日もあれば、うまくいかない日もあると思います。一つ、決して忘れていけないのは、もし自分が失敗しても、それが自分の人間としての価値を傷つけるものではないということです。誰もがかけがえのない存在です。そう思うことで挑戦することを恐れず、この不安定な社会でも、一人一人がそれぞれ異なる着実な一歩を踏み出すことができると信じています。

 新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、一堂に会しての卒業式が行えないのは 残念でなりません。しかし私たちは本学で学び、仲間と共に歩んだ4年間、あるいは6年間を胸に先へ進まなければなりません。まだまだ未熟な私たちではありますが、本日こうして卒業の日を迎えることができました。私たちの大学生活は、ここまでご指導頂いた先生方、大学生活を様々な面でご支援頂いた技術員の方々、苦楽を共にした友人や先輩、後輩たち、そしてここまで育ててくれた家族、たくさんの方々の支えがあってのものでした。たくさんの方々のおかげで、仲間に恵まれ、幸せな大学生活を送ることが叶いました。本当にありがとうございました。

 名残はつきませんが、皆様のますますのご活躍とご多幸をお祈りするとともに、中央大学の発展を祈念いたしまして、答辞とさせていただきます。

2020年3月24日

情報工学科卒業生・情報工学専攻修了生代表 保坂 啓介

【2019年度(2020年3月)答辞】情報工学科卒業生・専攻修了生代表 保坂 啓介さん