都市環境学科・都市人間環境学専攻
都市環境学科の有川研究室の学生を含む6名が、38th International Conference on Coastal Engineering (ICCE) で研究発表を行いました
2024年09月18日
有川研究室の学生を含む6名が、38th International Conference on Coastal Engineering (ICCE)(開催地:ローマ、開催期間:2024/9/8-9/14) で研究発表を行いました。ICCEは海岸工学分野で世界最大規模の国際学会であり、世界各国の研究者が集い最先端の研究内容について発表・議論を行います。以下に、発表概要を示します。
学会HP:https://icce2024.com/
有川研HP:https://www.coast-chuo.com/
発表者:D2 白井知輝
発表タイトル:「CONSIDERATION OF A NON-HYDROSTATIC ATMOSPHERE-OCEAN COUPLED MODEL FOR SIMULATING TROPICAL CYCLONES(邦訳:熱帯低気圧シミュレーションのための非静力学大気海洋結合モデルの検討)」(オーラル発表)
著者:白井知輝・有川太郎
本研究では、台風計算において重要な海洋応答を、海岸工学分野で開発された津波高潮シミュレータSTOCを海洋モデルとして利用することで再現し、さらにSTOCを大気モデルWRFと連成することで、非静水圧効果も考慮可能な大気海洋結合モデルのプロトタイプを新たに構築しました。結果として、静水圧スケールでの数値実験では、既往研究と類似した傾向が得られました。今後の課題として、より高い解像度でのシミュレーションを行い、世界的にも珍しい海洋非静水圧効果の台風海洋相互作用への影響検討や、静水圧・非静水圧ソルバーのネスティング計算を安定化させ、効率的な計算を行えるようにモデルを改良することが挙げられます。
発表者:D2 榎本容太
発表タイトル:「DEVELOPMENT OF A COUPLED FDM-MPM SYSTEM FOR FLUID AND SOIL INTERACTIONS(邦訳:MPMを用いた流体と地盤の相互作用の数値解析手法の開発)」(ポスター発表)
著者:榎本容太・有川太郎
地すべり津波などの流体と地盤が複合して発災する複合災害はメカニズム的に未解明な部分が多く、数値解析による検討が行われてきました。現状の数値解析手法にはまだ課題も多く、私はその中でも地盤の大変形・崩壊と透水を同時に解析することに主眼を置き、新しい流体-地盤連成解析モデルの開発を行いました。開発したモデルを1次元圧密問題と透水問題に適用した結果、それぞれの解析において、既往の解析結果と同程度の再現性を有することを示しました。今後もモデルの拡張を行い、最終的には海底地すべりとそれに伴う津波の発生への適用を考えています。
発表者:D1 德田達彦
発表タイトル:「APPLICABILITY OF HYBRID 2D AND 3D CALCULATION FOR TSUNAMI CAUSED BY SUBMARINE VOLCANIC ERUPTION
(邦訳:海底火山噴火による津波への2次元と3次元のハイブリッド計算の適用性)」(オーラル発表)
著者:德田達彦・有川太郎
2022年、トンガの火山噴火により、世界中で1メートルを超える津波が観測され、トンガの島々では10メートルを超える津波が発生しました。世界中で発生した津波は、噴火時に発生したラム波と呼ばれる圧力波と、大気重力波によって伝播された海洋波によるプルードマン共鳴によって増幅されたと分析されています。そこで、トンガ周辺の噴火による津波発生の感度解析を行いました。津波の計算には、先行研究と同様に噴火による水変位源を用いて津波計算を行いました。 また、噴火の3次元計算も行いました。三次元計算により運動量が考慮され、津波高さの再現性が向上しました。
発表者:M2 内藤礼菜
発表タイトル:「DEVELOPMENT OF A REALISTIC VR DEVICE USING PHOTOGRAMMETRY AND CLARIFICATION OF EVACUATION BEHAVIOR (邦訳:フォトグラメトリを用いたリアリティのあるVRデバイスと避難行動の解明)」(オーラル発表)
著者:内藤礼菜・白井知輝・有川太郎
避難行動解明のためにリアリティのあるVR空間を用いて津波体験の検討を行う内容を発表しました。都市の3Dモデルを作成するために、フォトグラメトリを用いた都市の3Dモデルを作成する撮影方法を提案しました。VR津波体験のデモを行い、アンケート調査を行い、実際の避難行動の役に立つかという問いに、1人がいいえと解答しました。その理由として、自身の足で歩くことが必要であると考えられたため、トレッドミルを用いたVR体験を行うことが今後の課題として挙げられます。また、防潮堤の有無で避難行動の変化を検討しました。今後より多くの体験者のアンケートをとることで、避難行動のデータを収集していきたいと考えています。
発表者:M1 大原緋奈乃
発表タイトル:「WAVE ATTENUATION EFFECT BY MANGROVE USEING THREE-DIMENTIONAL NUMERICAL CALCULATIONS(邦訳:三次元数値計算を用いたマングローブによる波の減衰効果)」(オーラル発表)
著者:吉田芽生・大原 緋奈乃・榎本容太・有川太郎
マングローブの根の形状を詳細に再現するには、計算コストが膨大となるため、マングローブのモデル化手法の検討を行い、またその手法を用いて現地適用計算を行いました。結果として、適切な係数を設定することで、実験と傾向が一致し、マングローブによる波の減衰効果に対するモデルの再現性を示しました。今後、現地の地形データを用いた計算やマングローブ林の根幹や枝葉を考慮したモデルの検討が必要だと考えています。
発表者:有川太郎(M1:石渡雄大の代理にて有川教授発表)
タイトル:「SIMULATION EXPERIMENT OF TROPICAL CYCLONE MOCHA (2023) AND ASSOCIATED STORM SURGE USING DIFFERENT PHYSICS OPTIONS OF WRF (邦訳: 複数物理過程オプションを用いた熱帯低気圧Mocha及び高潮のシミュレーション実験)」(オーラル発表)
著者:石渡雄大・白井知輝・有川太郎
この研究では、2023年にベンガル湾で発生した熱帯低気圧Mocha及びそれに伴う高潮・浸水の予測実験を行いました。オープンソースで海岸工学分野でも広く用いられる気象モデルWRFのうち、熱帯低気圧予測に敏感な物理スキームをShirai et al. (2022)の成果に基づいて複数変更した計算を実施し、上陸の約70時間前から現実的な高潮浸水予測を行うことができ、上陸の約50時間前からは予測のばらつきが小さくなることがわかりました。今後、世界中の熱帯低気圧に検討対象を広げ、予測を活用した高潮浸水に対する避難支援も視野に入れながら、不確実性に対してロバストな予測が行える仕組みを構築していきたいと考えています。