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生命科学への適性

生命科学科では、定員の半数以上の卒業生が、社会人として巣立ち、残りが、他学科・他大学を含む大学院へと進学することを想定しています。大学卒での就職先としては、生物系企業とは限らず幅広い分野に進出できるよう支援を行います。このような想定のもと、生命科学科の履修課目は、狭い分野を集中的に学ぶのではなく、複合的な分野を学び広い教養知識を得ることを目的に編成されています。生き物が好きだから生命科学科に入学したいと考える人も多いと思いますが、より広い視野で地球環境を考えたい人、生命を物理化学的に捉えたい人、バイオの知的財産とは何かを勉強したい人、自分が将来何をしたいか解らないがとりあえず生命科学でも勉強したい人など、さまざまな人たちに、生命科学科の授業を受けてもらい、自分の将来を考えてもらいたいと思います。

大学院に進学を希望している人たちのほとんどは、研究者を目指していると思います。では、皆さんは、研究者をどのようにイメージしているのでしょうか?白衣を着て顕微鏡を覗いたり試験管を振ったりする人、論文を一生懸命読んで知識を蓄えその先の新しい知識を見出そうとする人、一瞬のひらめきで未解決の問題を解く人、などさまざまかと思います。しかし、現実には、研究者にも階層があり、いつも楽しく好きな仕事ができるという夢のような環境にいる研究者は全体のほんの一部なのです。また、研究者を目指す人たちは、自分は将来、ガンのメカニズムを解明したり、エイズウィルスの特効薬を見つけたいという夢を持っている人も多いかと思います。しかし、しかし,その夢が実現するかというと,そう簡単ではないのです。第一に、現在のサイエンスは複雑化し、一人の努力というよりは、集団の努力で新たな発見が得られる場合がほとんどです。すなわち、大発見は、多くの小発見の積み重ねから生まれ、研究者の日常は、小発見をする努力に費やされます。第二に、現在話題になっているテーマは、壮年期を迎えた世界の研究室での競争の中にあり、現在入学してくる学生たちが研究者として自立するころには、サイエンスの興味が他に移ってしまっている可能性が大きいのです。

一方において、天然資源をほとんど持たない日本が21世紀に生き残っていくためには、研究開発の努力が更に必要です。理科離れが問題になっている今日、理系研究者の確保と養成は急務です。生命科学科では、まず、幅広く生命科学を学んでもらい、それを基礎に自分が研究者として適しているかを考えてもらいたいと思います。頭の回転が速く物事をすばやく理解できる人が研究者に最適とは必ずしも言えません。生命科学科の教員は、全員、国際的な研究者です。このような教員たちとのふれあいの中で自分の進路を決めていって欲しいと思います。研究者になると決心した人たちは、先ず卒業研究でその適正を再確認してください。また、研究分野を選択したら、その分野でトップにある研究室に入ることを目指してください。生命科学科の教員は大きなネットワークを持っており、場合によっては、他大学の研究室への進学を薦める場合もあります。大学院に進学した人たちの多くが、修士課程終了後、企業に就職することを想定しています。ですから、大学院では、社会人になった時に役立つ柔軟性に富んだ考え方を身につけるような指導が行われます。生命科学科出身の研究者が日本のバイオ産業で活躍する日を今から夢見ています。