理工学部

【受賞】理工学部人間総合理工学科4年 林念念さんが、日本ADHD学会優秀発表賞を受賞しました

2023年03月06日

人間総合理工学科4年生の林念念さん(応用認知脳科学研究室所属)が、2023年3月4-5日に開催された日本ADHD学会第14回総会(東京都小平市、国立精神・神経医療センター)において、優秀発表賞受賞を受賞しました。
 

この賞は、日本ADHD学会で口頭発表された全研究内容の中から、所属や職階を問わずに選ばれるもので、学部4年生での受賞は快挙です(ちなみに、昨年度は檀教授が受賞しています)。発表は「ADHD児におけるメチルフェニデート服用終了後の脳活動についての探索的」という演題で、卒業論文を発展させたものです。本研究は、自治医科大学、国際医療福祉大学との共同研究です。概要は以下になります。

注意欠如多動症 (Attention Deficit Hyperactivity Disorder: ADHD) は、多動性、衝動性、不注意を主徴とする疾患である。ADHD児の治療には行動療法や薬物療法などがある。薬物療法の中で、メチルフェニデート徐放薬(MPH)が治療薬の一つとして使用されている。現在、MPHの服用を中止するタイミングは、日常生活で困っている症状や行動の頻度の減少とADHD Rating Scaleの評価を基に担当医師が判断している。しかし、子どもの症状や行動が改善した要因は、脳の発達が十分ではないが治療によるものか、成長に伴い脳が成熟したのか、客観的な指標がないため、詳細は明らかではない。そのため、本研究は、現在MPHの服用を中止したADHD児において、過去にMPHを服用した直後と現在の脳活動の傾向を探索的に調べた。

本研究では、13名のADHD児が過去にMPHを服用した直後と現在MPHを中止した後で計測した二つのデータセットを用いて解析を行った。反応抑制機能を評価できるGo/No-go課題を用い、脳血流動態は機能的近赤外分光分析法 (functional Near-Infrared Spectroscopy: fNIRS) で測定した。
 
結果として、過去と比べて右半球の前頭極、腹外側前頭前野に加え、特に背外側前頭前野での賦活が見られた。これらの領域はADHD児と健常児において、Go/No-go課題を行った際の脳活動を比較した先行研究での健常児群と一致していた。つまり、健常児と同じような脳活動をしていたと言える。そのため、成長に伴って脳が成熟したことにより子供の行動が改善されたと考えられる。今後本研究をさらに発展させ、服薬の中止時期を判断する際の客観的指標の確立を志向していく。


共同演者:田中日花里(中央大学)、大島沙織(中央大学)、倉根超(自治医科大学)、檀一平太(中央大学)、門田行史(自治医科大学、国立医療福祉大学)