ロースクール法務研究科長挨拶

小木曽 綾 教授・法務研究科長

『人は城、人は石垣、人は堀』。

信玄公が言ったかどうかの真偽はともかく、「中央大学法科大学院の特徴は?」と聞かれれば、私は迷わず、「全国に広がる法曹ネットワークがあること」と答えます。

中央大学の創始者が学んだイギリス法は、先人の知恵を受け継ぎながら、それを基礎として、新しく直面する問題を正義と衡平に照らして解決するという伝統をもっており、その法思想は、徒弟制度で後世に伝えられてゆきます。条文や法概念を書物から知識として得ることはできるでしょうが、ある法を必要とする人々の営みや社会のありようと、解釈・適用されて発展してゆく法の相互作用は、独り座学してもなかなか腑に落ちて分かるという体験をすることは難しいでしょう。しかも、現代社会は常に動いています。実務家と研究者が共に教鞭をとり、基礎から発展的な領域までの多様な科目を教授し、全国に広がる法曹ネットワークの支援を受けたエクスターンシップなどを展開する法科大学院で、友人と共に研鑽しつつ学ぶ意義はそこにあります。

中央大学は、いわゆる法曹三者の他に、企業のトップや法務部にもたくさんの人材を送り出しており、そうした人々を授業のゲストスピーカーや研究会の報告者として招いています。このような学びの場を通じて得られる先達の知恵、人と人の触れ合いは、法曹として、人としての大きな糧となるでしょう。本学に集う人々の活動については、中央大学のホームページにあるChuoOnlineというバナーからご覧いただきたいと思います。

中央大学法学部は2023年度をめどに八王子市から文京区に移転する予定で、これと同時に本法科大学院も新キャンパスに移転して、法学部との一貫的な教育を強化します。

法科大学院が負うべき社会的責任は、在学生教育にとどまらず、法曹となった人々のキャリア形成支援にもあると考えます。本法科大学院では、本学の創始者が学び、「中央」の名の由来ともいわれるイギリスのミドルテンプルとの交流も視野に、新たな海外研修プログラム開設のほか、いわゆるリカレント教育等にも力を入れています。都心での法学系の一体的な展開が成ることで、法解釈や法政策に関する研究・学問的な貢献もさらに充実することでしょう。

シンギュラリティが言われる時代ですが、科学技術が発達し、人やモノやサービスが国境を越えて行きかい、社会が複雑になればなるほど、人の心に寄り添いつつ、種々の利益を調整したり、紛争を解決したりする法律家の需要は高まりこそすれ、衰えることはありません。英米で政治のリーダーの多くが法律家出身であるのは、理由のないことではないでしょう。リーガルサービスとそれを担う法曹は、流行り廃れに関わらず、いつの世にも必要とされる社会資本です。

法も伝統も紡いでゆくもの。次の世代の法曹を志す皆さんと、キャンパスでお会いできるのを心待ちにしています。