ロースクール

授業ハイライト

会社法

会社法では、実際の紛争を意識しながら商法・会社法の基礎的な知識を習得することを目指しています。その際、重要になるのは、各論点における条文・学説・判例等に関する知識をばらばらに覚え込むのではなく全体を体系的に理解することと、具体的な事実を規範に正確に当てはめる能力を磨くことです。例えば、株主総会において合併決議が行われた際、取締役が株主の質問に十分回答したかが問題になったとします。その際には、仮に取締役の説明義務違反があった場合、それがどのような道筋によって合併の効力に影響するかを説明できなければなりません。権限分配、総会決議の取消し、代表取締役の専断的行為の効力、決議取消の訴えと合併無効の訴えの関係などを体系的に理解していなければ、その答えは導かれません。また、株主の具体的な質問に対して取締役が説明義務を果たしたか否かは、取締役の説明義務の存在を知っているだけでは判定できません。「平均的株主が合理的な判断をするのに客観的に必要な範囲まで説明したか」という認定基準に事実を的確に当てはめる力が必要です。この講義では、受講生全員がこうした能力を身に付けられるようにすることを目標としています。

公法総合Ⅱ

公法の中でも主として憲法分野の主要判例を読み込むのが「公法総合Ⅱ」です。工藤・安念の2人のオムニバス授業になります。『判例トレーニング憲法』(信山社)という教科書の、少なくとも3分の2くらいを、問題演習を織り込みながら15回の授業で読み解いていく作業をします。
 判例を読むことは、二つの意味があります。まずは、知識の吸収です。日本は成文法の国といわれますが、実務家にとって判例は、法令と並んで最も重要な法源です。判例の知識なしにローヤーの仕事が務まることはあり得ません。次に、判例は法文書を作成するうえでの一つのお手本だということも重要です。とくに、最高裁の判決は、日本で最も優秀なローヤーが練りに練って書き上げた文章であり、事実関係と法令・判例という複雑に絡み合う与件を慎重に料理してでき上がった成果物です。判例を丁寧に読むことによって、法令・判例の解釈・適用、事実関係の摘示、論理の組み立てといった法文書を作成するうえでの必須のスキルを獲得することができます。
 授業は、質疑応答を交えて進行しますから、予習・復習の負担は軽いものではありませんが、判決文をよく読みノートを作るという愚直な勉強が、実力の涵養につながると思います。

刑事法総合Ⅲ

法科大学院において履修する刑事法の科目には、刑法と刑事訴訟法を中心として実にさまざまな科目があります。「刑事法総合Ⅲ」は、最上級学年の学生たちが刑事法学修の「総仕上げ」のために履修する重要な授業です。
履修者には、事前に長文の事例問題が課題として与えられます。いずれも、相当にレベルの高い法的論点を含み、司法試験の問題よりも複雑な難問ばかりです。学生諸君は、あらかじめそのケースに取り組み、設問に対する自分なりの答えをレポートとしてまとめて担当教員に提出することを求められます。授業の場では、教員と学生との間で展開される問答を通じて、課題に含まれる争点についての理解を深め、隠されていた重要問題に気づき、検討が十分でなかった点についてこれを自覚することになるのです。
法律家になるためには、①法的事項に関する一定の知識、②事実関係を分析する能力、③論点を発見・抽出できる能力、④未知の問題にも既存の学識を用いて対応する応用力、⑤迅速に仕事を片付ける事務処理能力を備えることが必要です。「刑事法総合Ⅲ」は、これら5つの能力をバランスよく身に付けることを可能とするための授業でありたいと思っています。