ビジネススクール 優秀賞

CBSでは学生たちの学びに対する意欲を高め、かつ、学生たちの模範とするため、優れたプロジェクト研究のアウトプットを選び、優秀賞として表彰をしています。ご自身の業界や問題意識に近いアウトプットを見つけてみてください。

「多様性の高い職場で活躍する人材に関する研究〜「自己認識力」に着目して〜」(人的資源管理分野) 藤曲 亜樹子
(キーワード:自己認識力、ダイバーシティ経営、対話、変化対応特性、心理的安全な職場)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人右)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人右)

論文要旨

ダイバーシティ経営の取り組みは、メリットがある一方、個々人の考えが優先され、組織の求心力低下につながる可能性がある。ダイバーシティ経営で経営成果を実現するためには、相互の理解を深める「対話」が重要であり、そのベースとして「自己認識力」が重要なことが明らかにされている。そこで、「自己認識力」を高めるために、企業と個人として何に取り組むべきか、が本研究の問題意識である。
研究では、先行研究から、「自己認識」を高める行動を促進する個人の行動特性と職場環境に関して、仮説を設定し定量的調査にて検証した。 分析の結果、「個人の変化対応特性の具備や心理的安全な職場環境は、組織構成員の自己認識力を高める行動を促進する」ことが明らかになった。さらに、補足的分析として、「経営層や管理職層の多様な人材の配置は、組織構成員の自己認識力を高める」、「自己認識力が高い人が多い職場は、イノベーティブ度、パフォーマンス度を促進する」ことが明らかになった。
ダイバーシティ経営において、多様性が高い職場で活躍する人材に関する施策の一つとして、「自己認識力」を高めるための具体的な施策を示すことができたことは、本研究の貢献であると考える。

優秀論文としての推薦理由

藤曲氏は,勤務先企業で推進しているダイバーシティ経営を職場に定着させるための課題として,従業員の側の要因の関心を持ち,今回の研究テーマを設定している。その点で,問題関心が極めて明確であることが評価できる。
ダイバーシティ経営の取り組みは、新しい価値の創造につながる可能性など経営にメリットがある一方、職場で従業員間にコンフリクトを生じさ、職場での円滑なコミュニケーションを阻害するなどのデメリットが生じるとする先行研究を踏まえ,このデメリットを抑制する要因として,従業員個人の「自己認識力」に着目する。「自己認識力」を取り上げたのは,価値観の異なる多様な人材の間で、質の高い「対話」を実現するために不可欠なスキルであることによる。
調査研究では,「自己認識力」は開発できるスキルであるという先行研究に基づき,「自己認識力」を高めるために有効な施策に関して,企業(職場)と個人の視点から複数の仮説を設定し,個人を対象としたアンケート調査(有効回答312名)を実施し,調査データの多変量解析に基づいて仮説を検証し,それに基づいて企業と個人に対して「自己認識力」向上に貢献する施策を提示している。
実証された仮説と提示した施策の関係がやや曖昧であるが,今後この点は,精査することで改善できると考える。

先行研究のレビューや仮説立案,さらに調査分析の方法などが手堅く,優秀論文として評価できると考え,推薦する。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

ダイバーシティ経営に取り組んでいる企業の中には,その職場への浸透に苦労しているものが多い。その点で藤曲氏が設定した研究課題は,多くの企業のダイバーシティ推進担当者にとって有益な研究テーマである。さらに,先行研究のレビュー,仮説の構築,調査実査,分析の手堅さなど,CBSの後輩の研究に大いに参考になると考える。

ページトップに戻る
前ページに戻る

「APIがもたらす新しい企業アライアンスの形」(マーケティング分野)林 佑威
(キーワールド:API、アライアンス、フィンテック、ブランド・アライアンス、非競争領域)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人右)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人右)

論文要旨

API(Application Programing Interface)を活用した。新しい形の企業アライアンスが生まれている。この「新しさ」を明らかにするために、POSレジアプリのトップ企業や生体認証サービスを提供するフィンテック企業など、ユニークな「APIアライアンス」を行う先進企業の事例を分析し、現場のキーマンにインタビュー調査を行い、先行研究で論じられている従来型のアライアンスと比較を行った。
本稿では、「競合とのブランド・アライアンス」や「APIによる新たな収益機会」など、従来のアライアンスでは想定しにくいものを含む、ユニークなアライアンスを確認している。この分析を通じて、APIによるアライアンスは、従来のアライアンスの形態を多面的に織り交ぜながら、パートナーとの補完関係を実現し、様々な状況の変化にしなやかに対応出来ていることが、その新しさであることを確認した。
APIによるアライアンスでは、「低減化された取引コスト」により、アライアンスのモジュール化そしてカジュアル化が実現され、従来以上にマーケティングの視点を加えたアライアンス戦略が求められることなどを提言する。

優秀論文としての推薦理由

本研究の結論では、従来の「重い」企業提携に代わってAPIはより「カジュアルな」企業提携を可能にし、水平的・補完型のアライアンスをより簡便なものにする可能性を指摘している。本論は、アライアンスという経営課題を新しい事象と捉え、その実体を解き明かしている点で大きな貢献がある。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

現場のIT企業人ならではの視点を活かして、APIという新しい仕組みが伝統的な企業アライアンスをどう変えたかという新鮮な課題を提起している点が模範的である。

ページトップに戻る
前ページに戻る

「医薬品の普及形式の変化について-医薬品情報のデジタル化やMRの受入拒否が影響を与えているか-」(マーケティング分野) 田代 博士

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

現在、製薬企業の新規製品の普及戦略はMRという営業部員による、訪問周知活動を主としている。これは伝統的な普及学の理論にのっとり、医療従事者同士の人から人への伝播を期待し、イノベーターたる大学病院の教授クラスや、大病院の部長クラスに人的ないしは経済的な資本を集中化するものである。
 医療情報のデジタル化や医師間ネットワークの変化など環境が大きく変化する中で、この医薬品普及にも変化があるのかどうかを検討した。
 まず第一に、2017年発売の医薬品採用の実データを用いてBASSモデルに導入し、普及理論に載るか検証したが、模倣係数のほうが高い傾向があり、反症例を見出すに至った。
 次に、医薬品情報のデジタル化が本格化した2007年をメルクマールにし、その以前と以降に医薬品の施設での採用の意志決定をしていた医療関係者3名づつにグルーピングし半構造的なインタビューを行い、GTAの手法でまとめた。
 その結果、2007年以降のグループではMRを中心としたアナログチャネルはほとんど機能していないことが示唆された。
 本検証の貢献としては、冒頭の、医薬品普及形式の変化の中で資本集中化戦略が効果的でないこと示し、戦略の構造的な見直しを導くことにある。

優秀論文としての推薦理由

医薬品メーカーの新薬の普及と病院の新薬採用のプロセスを明らかにした論文である。著者は2007年前後から新薬の普及および採用プロセスが変化しているとの仮説に立ち、その普及および採用プロセスの変化について実証した。まず、Bassモデルによって、新薬の普及曲線を分析し、従来はイノベーターの値よりイミテーターの値が大きかったが、2007年以降の新薬については、少ない新薬の数ではあるが逆の現象であること実証した。次に、医療従事者にデプスインタビューを実施しグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)によって分析した。その結果、ICTの普及により、2007年以降に明らかに医療従事者の採用が医薬品メーカーの医薬情報担当者(MR)の情報ではなくて、インターネットからの情報を重視して、採用するようになったことを明らかにした。MRとしての役割を再構築する必要性があることを結論としている。
 仮説の生成のための論文が十分にレビューされていること、新薬のケースは少ないが、普及モデルによって定量的な実証をしていること、さらに、医療従事者のヒアリング・データをGTAをつかい適切に分析した。そして、アカデミックな視点と実務の視点から、適切な結論がえられている。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

まず、アカデミックな論文ではレビューが重要であるが、この論文はテーマにそった文献のレビューが多くなされ、これまでの医薬品の普及に関する知見を整理しまとめている。そのうえで、適切な仮説を設定し、データによって実証している点は他の学生に参考になると思わわれる。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「ダイバーシティ採用、その先に」~日本企業が行うべきグローバルダイバーシティ採用後に効果を発揮する施策は何だろうか~」(人的資源管理分野) 山口 恭子

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

外国籍社員を採用することで職場に新たな価値や発想をもたらし、組織活性化や新たな価値創造(本研究では「ダイバーシティの効果」という。)を目指す企業であっても、外国籍社員にも日本人社員と同様の人的資源管理を適用していることが多い。それがダイバーシティ効果の実現を阻害していないかが本研究の問題意識である。
 Shore et al.(2012)などを踏まえ、ダイバーシティの効果の実現には、社員の「自律的なキャリア意識」を尊重しつつ、「組織への帰属意識」を形成することが必要との前提に立ち、そのために有効な制度や施策は日本人と外国籍では異なるとの仮説を設定、日本人社員・外国籍社員の双方を対象に質問紙調査を実施した。
 分析の結果、外国籍には適切な労働時間や両立支援環境など「ワークライフバランス」に関連する施策、多様性のある社員の採用や平等な仕事機会の提供など「差別・区別がない環境」に関連する施策に帰属意識を高める効果がみられた。これは日本人にはない特徴であった。
 ダイバーシティ効果を実現するには、企業は、単一属性を想定したこれまでのマネジメントから脱却し、新たなメンバーである外国籍社員の視点から、施策やマネジメントを再考する必要があることを示す貢献ができたと考える。

優秀論文としての推薦理由

本論文は、ビジネスのグローバル化に比して低調な日本企業の(高度)外国人人材の活用に対する筆者の強い危機感を背景に、外国人人材の活躍により職場のダイバーシティ効果の実現を図るという観点から、現在の企業の人的資源管理施策の評価と、実現を促進する施策の探索とを行ったものである。
 海外で研究が蓄積され、日本でも注目される職場のダイバーシティとインクルージョンの概念を踏まえて分析モデルを構築し、日本人と外国籍それぞれに関して先行研究に沿った仮説を構築、検証のために日本語と英語によって質問票を作成して調査と分析を行った。丁寧に行われた一連のプロセスは学術論文の要件を充分に満たしており、評価できる。特に日本人と対比できる数の外国籍のサンプルの収集にこだわって調査を進め、統計分析によって両者の異同を指摘した点に、本研究の独自性と貢献とが認められる。
 また、日本人についての仮説が支持されず、日本人のキャリアに関する意識特性が変化して外国籍へ近接していることが明らかにされるなど実務面への貢献も大きい。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

自身の実務経験を通じて醸成されてきた問題意識を、学術的フレームワークを用いて構造的・客観的に捉えた点、構築した仮説に対応する丁寧な質問票の作成とデータ収集とを行った点、計量分析により、実務へのインプリケーションを含む一定の結論を得た点が、今後の参考となる。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「総報酬があたえるエンゲージメントへの影響~外的報酬が高まるとエンゲージメントは向上し 企業価値は向上するのか~」(人的資源管理分野) 割石 正紀

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

本研究の目的は,企業で働く従業員のエンゲージメント向上に貢献する要因を明らかにすることにある。研究では、分析対象企業のエンゲージメント調査のデータを基に,給与額(給料,賞与),昇格や人事評価等の各種社内データ,エンゲージメント調査への従業員の自由記述等の定性データを組み合わせて、4つの作業仮説を立て分析を行った。
 データ分析によると,総報酬の中でも外的報酬である年収が,エンゲージメントの高低に影響を与えていた。また,外的報酬の中でエンゲージメントに一番影響のある要因は年収であるが,一定水準の年収を超えると,年収の影響度が弱まり,人事評価の影響度が高まることが確認できた。人事評価では,評価制度の不理解や人事評価への納得感が低いと,エンゲージメントは低くなるが,評価制度を理解し正しく認知することでエンゲージメントは向上することが明らかとなった。
 さらに,内的報酬の中では、社員の相談行動や上司からのサポート等の環境整備を行う事が組織における心理的安全性の担保に繋がることも明らかになった。
 本研究は,日本企業が直面している人事マネジメント上の課題の解決の一助となり,企業の競争力を高め,持続的成長に繋がることに貢献できると考える。

優秀論文としての推薦理由

本論文は、海外を含めて人的資源管理分野で最近、注目を集めているエンゲージメントの概念を取り上げ、研究対象企業のエンゲージメント調査と他の人事データをリンクさせた統合データセットを作成し、それに基づいて社員のエンゲージメントを規定する要因を明らかにするものである。
 筆者の問題意識は明確で、研究対象企業のエンゲージメント調査を再分析し、エンゲージメントを規定する要因を明らかにし、社員のエンゲージメントを高めることにつながる施策を提示することで、実践的な研究である。同時に本論文は、エンゲージメントに関する先行研究だけでなく、行動科学のモチベーションに関する研究を丁寧にレビューしている点が評価できる。また、データ分析では、エンゲージメント調査に、賃金データやストレスチェツクの多様なデータなどを組み合わせ、エンゲージメントの規定要因を多元的に明らかにするなど、データ分析での工夫も高く評価できる。なお、分析方法には改善の余地もあるが,この点は今後に期待したい。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

上記のように本論文は,研究対象企業の人事管理の課題を解決するという実践的なテーマを取り上げ、それに関して多様な社内データを丁寧に分析し、対応策を提示していることは、ビジネススクールの研究論文として他の参考となる。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「医療現場にて重要視される医療機器の選択要因についての一考察」(戦略分野)  清水 幸宏

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

 本研究の目的は、広く使用されている医療機器において、 その認知に関わる要因、選択要因、そして医療機器を使用する手技の取得のために重要な項目を明らかにすること、医師と医療機器企業が重要と考えている項目の比較検証を行うこと、また、同じ医療の領域である医薬品企業との現場で求められていることの違いを検証し、医療機器企業の戦略を探索してくことである。
 医療機器・医療マーケティング・購買行動に関する先行研究レビューから仮設を設定し、医療機器を使用する医師および医療機器企業へのヒアリング・アンケート調査を実施、結果をt検定による検証を実施し、仮設は支持された。
 本研究の貢献は、企業の戦略への参考として、医療機器を認知、選択するうえでの重要項目の把握ができる点であり、また企業が考える重要項目と医師の考える重要項目との違いが明らかになることで、適格な戦略を立てることができる点である。
 手技に関しては、医師、企業とも重要項目が一致していること、この手技への関わりが医薬品と大きく異なる点であり、医療機器企業として手技へのサポートが重要と考えられた点である。

優秀論文としての推薦理由

清水論文は重要であるが従来あまり重要視されてこなかった医師の医療機器選択に対しての研究である。アンケート調査の例数は少ないもののインパクトのある結果である。最もインパクトがある点は下記である。
 「この手技への関わりといった点が、医薬品にはない医療機器の特徴といえる。医薬情報提供の効率を上げるために、インターネットやAIの使用がより増えることが予測される医薬品企業とは異なり、医療機器企業は、インターネット等での情報提供だけでなく、今後より低侵襲で複雑、そして高度な手技が広がっていくにしたがい手技の取得、上達の必要性はますます高まっていき、ハンズオントレーニング、シミュレーションが重要となり、現場、学会、トレーニングセンターでのサポートを強化していくという方向に進んでいくものと考えられる。医療機器を使用する手技へのサポートをこれまで以上に進めていくことが重要であると言える。」(論文要旨より) Nの数が少ないのでさらなる検証がいるが、この論考は医療機器のマーケティングに影響を与えると思われる。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

新しい分野を切り開きまた自社の今後のマーケティングや営業戦略に大いに役立つ研究

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「百貨店個人営業顧客のコミットメントに関する研究」(マーケティング分野) 鈴木 一正

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

本研究の目的は、百貨店の個人営業顧客にとってカード特典拡充や専用ラウンジ整備といった制度環境的な施策がコミットメントを高め、業績向上に有効に機能しているのか否かを実証的に明らかにすることにある。
 デプス・インタビューの結果、関係継続や他者推奨には、「担当者との良好な関係」が重要な役割を果たしていることが明らかになった。この結果を踏まえ、リレーションシップ・マーケティングの概念モデルとして久保田進彦(2006)が示した「多次元コミットメントモデル」を基本とし、損得勘定に関わる変数を「制度環境的コミットメント」と「担当者による経済的コミットメント」に分割し、共感や一体感に関わる「感情的コミットメント」とともに中心的媒介変数として関係継続や他者推奨意向を結果要素とする共分散構造分析を実施した。アンケート対象は首都圏の個人営業顧客309名である。
 その結果、「制度環境的コミットメント」が結果要素に与える影響は相対的に小さく、人的サービス施策が重要であることが明らかになった。人件費圧縮を図り、人手を掛けないサービスに傾斜しようとする業界への警鐘とも言える。

優秀論文としての推薦理由

百貨店の外商が、百貨店の顧客のコミットメントにどのように影響するかについて実証分析を行った。著者は「計算的コミットメント」を「制度環境的コミットメント」と「担当者による経済的コミットメント」に分割し、それぞれが「関係継続意向」や「推奨意向」にどの程度影響するかについて実証した。その結果、担当者による経済的コミットメントがより、影響することを明らかにしている。実証分析のための適用モデルを決定し、さらに、仮説生成のためのデプスインタビューを行いGTAで分析した。さらに、仮説検証のためのアンケート調査を行い定量的な実証分析を行った。分析プロセスは適切であり、また、統計的な手法も適切であった。アカデミックな視点で従来のコミットメントモデルを修正できたこと、また、外商の値引きなどによって計算的コミットメントが顧客のロイヤルティを高めることが明らかになったことは百貨店のビジネスに一定の影響を与える点で評価に値する。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

この論文で見習う点は、論文レビューとデプスインタビューによって仮説を生成したこと、その仮説を大規模なデータで収集し分析したこと、さらに、分析に使用した分析モデルが適切であったことである。このことによって意義のある実務的な結論が導きだされている。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「医療機器業界においてなぜ軽微な差別化が成功するのか? 議題設定効果の導入による差別化政策の検討」(マーケティング分野) 友重 大輔

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

本研究の目的は、整形外科インプラントの医療機器業界において軽微な差別化がされた製品が、販売数量を伸ばすメカニズムを、「議題設定効果」というマス・コミュニケーション効果の理論枠組みによって説明することである。
 本研究で注目したのは、軽微な差別化がされた整形外科インプラント製品のほうが、革新的な製品よりも手術リスクは少ないため、学会発表を容易に行えることである。そして、学会というメディアにおける露出の増加は、軽微に差別化された新製品の特徴を「争点」とするため、結果として多くの医師の当該インプラント製品の選択を促すだろうと考えた。この一連のプロセスが、業界最大手メーカーの販売データを用いた分析によって検証され、支持された。
 本研究の貢献は2点ある。第1に、チャレンジャーのマーケティング戦略に対する示唆である。医療機器業界のチャレンジャーは、議題設定効果を意識したマーケティング戦略を採用することにより、新製品の販売を短期間で拡大できる可能性がある。第2に、リーダーの防御戦略についてである。チャレンジャーの新製品の導入戦略が有効に働くメカニズムが分かることで、的確な対抗戦略を行うことができる。

優秀論文としての推薦理由

本研究は、整形外科インプラント業界における「軽微な差別化がされた製品」(典型的には、インプラントの表面素材のみ変更)が、なぜ革新的製品よりも販売数量を伸ばすのかを、「議題設定効果」というマス・コミュニケーション効果の理論枠組みを導入し説明したものである。革新的な差別化より些細な差別化が販売数量を伸ばすという直感に反する現象を、適切な方法で説明し、業界企業のマーケティングへの示唆を提示したことは評価に値する。
 筆者が注目したのは、メディア媒体としての「学会発表」の役割である。学会での発表機会を多く望む医師(手術へ高関与の医師)は、軽微な差別化な製品のほうが、手術リスクは少なく、容易に学会発表を行うことができる。そのため、軽微な新製品が、高関与の医師の学会発表を増やし(:メディア露出の増加)、それが、整形外科業界の「争点」を作り出す。結果として、その争点が、多くの医師の当該インプラント製品の選択を促すのである。
 この知見を用いると、業界のチャレンジャー企業は、争点化を用いたリーダーへ対抗を適切に図ることができる。一方、リーダー企業は、軽微な差別化へ防衛策を採ることができる。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

この研究が後輩の模範となるのは、本論文が論文(B)として①典型的な研究デザインと②研究の貢献を含むためである。① 議題設定効果という既知の理論の対象を、「異なるコンテクスト」と「データ」で拡張し、理論の有用性を示していること(広義の研究の再現性)は論文として価値がある。②分析結果から、筆者が勤務する企業に限らず、業界企業への有用な実務的示唆を導出したこと(広範囲な実務的貢献)も価値が高い。この2つの観点を含んだ研究は、今後、論文(B)に取り組む学生が目標とすべき模範となるこことは間違いない。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「プライベート・ブランド階層の中のサブブランドがストアロイヤルティに与える影響について」(マーケティング分野) 羽石 奈緒

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

本研究の目的は、小売業界において差別化に向けプライベート・ブランドの取組みを強化する中、プライベート・ブランド階層の中のどうようなサブブランドがストアロイヤルティの向上につながるかについて明らかにすることである。
 本研究で注目したのは、スタンダードPBより品質を重視したプレミアムPBと、サブブランドとして社会環境や消費者意識の変化に対応したサステナブルPBである。ホームスキャンデータを活用し購買履歴データを用いたウォレットシェア分析から、「プレミアムPB購買者はストアロイヤルティが高い」については棄却され、「サステナブルPB購買者はストアロイヤルティが高い」については支持された。
 本研究の貢献は、プライベート・ブランド商品間のカニバリゼーションを制御しながら、独自のブランドイメージを創出し、PBプログラム全体を強化するプライベート・ポートフォリオ戦略を構築するためには、サステナブルPBの必要性が示唆されたことにある。この点は小売業にとって重要な課題である「PBロイヤルティの向上及びストアロイヤルティの向上」に対して、小売業のPBによる差別化戦略の意思決定に一定の示唆を与えた。

優秀論文としての推薦理由

プライベート・ブランドの階層はどうあるべきかについて実証分析を行った。具体的には、セブンプレミアムとトップバリュをとりあげ、各ブランドのサブブランド別に、購買者の違いやストアロイヤルティに与える影響についてホームスキャンデータを用いて分析した。セブンプレミアムについてはセブンプレミアムゴールド、トップバリュについては、トップバリュとグリーンアイとの購買者のデモグラフィック特性の違いおよび食パンを取り上げ時系列に各サブブランド別に売上数量の相関をみた。その結果、購買者属性に違いがみられ、また、売上数量の相関もみられず、カニバリゼーションは起きていなかった。また、トップバリュのサブブランド別のウォレットシェアとイオンの世帯別購買金額を分析した結果、トップバリュおよびグリーンアイのウォレットシェアが世帯別購買金額に影響しており、通常のPBであるトップバリュだけでなくグリーンアイもストアロイヤルティに影響していることが明らかになり、PBのサブブランドの展開の方法の示唆をえることができた。
 ホームスキャンデータを駆使して世帯の購買行動履歴を分析したこと、仮説設定が実務に直結している点が優れている。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

この論文は、研究において仮説設定がいかに重要であるかを教えてくれている。「通常のPBではなくて、サステナブルなPBがこれからの小売業の商品戦略について重要である」という仮説設定が論文の内容を面白くしている。学生にとっては仮説設定のユニーク性が論文の面白さを決めるという点で参考になると思われる。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

「中途入社者の「組織再社会化」促進研究― 個人と企業、「雇用の流動化」時代を見据えて ―」(人的資源管理分野) 庄司 明弘

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

学位授与会場での研究科長との記念撮影(本人左)

論文要旨

本研究の目的は、中途入社者が転職先企業へ早期に適応する要因を明らかにすることである。
 具体的には、離職から転職にいたる一連の過程のうち、中途入社者が新たに参入した組織(転職先企業)に適応する組織社会化のプロセスに着目した。新規学卒者の組織社会化に対し、「すでに、別の組織で仕事を行った経験のある中途入社者をいかに社会化するか」を扱う組織再社会化の特徴の一つは、これまで培ってきた業務のやり方や経験を「学習棄却(unlearn)する必要があるという点にある。
 本研究の貢献は、定量調査(質問紙によるアンケート調査)と定性調査(インタビュー調査)の結果から、学習棄却をしてよい知識・スキル・経験と、してはならないそれとがあることを示した点にある。職務遂行上のコアとなる知識・スキル・経験は、新しい職場での職務課題の達成と、周囲の評価の獲得にむすびつき、(早期の)組織適応を容易にする一方で、「ルーティン」「風土」「組織の文化」などの知識・経験・信念は、むしろ学習棄却することで、新しい組織への適応を容易にする。
 今後一層中途採用・中途入社が拡大するとの予測に立てば、この貢献の重要性は、ますます高まるものと考える。

優秀論文としての推薦理由

長期安定雇用が揺らぎ、個人が自らの責任でキャリアを構築していく時代にあって、筆者の問題関心は、組織の境界を超えながらキャリアを築くことの意味を、長期的趨勢の中に位置づけることと、そのようなキャリア構築を図る個人が、自らの能力を発揮し続けていくために見失うべきでない要素を明らかにすることにある。
 研究は、①先行研究レビューによって雇用を巡る企業と個人の関係性の変遷を理解して分析の視座を得ること、②一定の要件を満たす転職経験者をケースとして取り上げての量的・質的調査の実施、③転職後の組織への適応(組織再社会化)を円滑に進める要因の分析、から構成される。筆者の学術的関心の高さと幅広さ、定量・定性調査の併用(ミックス・メソッド)による手堅い分析、その視座の確かさが示されている。
 課題研究(事例分析)の要件を十分に満たすのみならず、学術的な新たな知見の獲得や、企業および個人に向けた実務面での提言を実施するなど、多くの意義をもたらした研究であることから、優秀論文として推薦する。

CBSの成果として後輩の模範となる部分

転職により、自律的にキャリア形成を行うことを選んだ分析対象者に対し、組織再社会化という概念を基準として、転職先への適応度とその要因を客観的に分析・記述した点が、今後の参考となる。

ページトップに戻る
 前ページに戻る

戦略経営研究科 鈴木敏文賞

 戦略経営研究科の設立にご尽力いただいた鈴木敏文氏の篤志を尊重し、本研究科修了生の中のうち成績最優秀者を表彰する鈴木敏文賞を設定し、院生の学修に対する志気の高揚をはかることを目的として、総代として選出された方に鈴木敏文賞を授与しております。

戦略経営研究科 南甲倶楽部賞

 戦略経営研究科の運営に対し多大な支援体制をとる南甲倶楽部の篤志に基づき、南甲倶楽部賞を設定し、本研究科修了生の中から成績優秀者を表彰することにより、院生の学修に対する志気の高揚をはかり、本研究科の更なる発展を促すことを目的として、成績優秀者として選出された方に南甲倶楽部賞を授与しております。

  総代、鈴木敏文賞
4月入学生、9月入学生:各1名選出
南甲倶楽部賞
4月入学生  3名選出
9月入学生  1名選出
2020年9月修了生 中島 悠太 藤曲 亜樹子
2020年3月修了生 大森 道生 藤平 雅之
山口 恭子
鈴木 一正